記事のポイント
LGはスマートTVのホーム画面を広告収益の起点とする戦略を進め、視聴行動の最初の接点を自社で握ろうとしている。
webOSをテレビ以外のモニターや車載・ホテルディスプレイにも展開し、広告媒体としてのプラットフォーム拡大を図っている。
プラットフォームを横断する視聴データを活用し、質の高いレコメンドを提供することで視聴時間全体の拡大と広告価値の最大化を狙っている。


LGにとって、広告の未来は派手なアドテクや話題性の高い提携ではなく、より地味で見落とされがちな存在である、テレビのメニュー画面にかかっている。

韓国の大手エレクトロニクス企業であるLGは、広告事業において、自社製のスマートテレビを視聴者のストリーミング利用の出発点とする戦略を着実に進めている。

テレビのホーム画面を、NetflixやHulu、YouTubeなどのデフォルトのアクセス手段、いわば単なる中継点としてではなく、視聴者がコンテンツを探す最初の場所にすることができれば、LGの広告事業を担うLGアドソリューションズ(LG Ad Solutions)は、コネクテッドTV(CTV)を経由する広告費からより多くの収益を得られるようになる。

「具体的な数値は公表していないが、今年は当社の広告事業にとって過去最高の収益を記録する年になるだろう」と、LGアドソリューションズでインターナショナル部門担当バイスプレジデントを務めるエド・ウェイル氏は語る。

「我々は引き続き、全世界で約2億台のテレビを保有するLGのハードウェア基盤を軸に展開していく方針だ」。

webOSを軸とした広告戦略の拡張



規模の大きさが重要であることに変わりはないが、実際に広告収益を左右するのはソフトウェアだ。LGのオペレーティングシステム「webOS(ウェブOS)」は10年以上にわたり同社のテレビに搭載されており、同社のメディア戦略の中核を担っている。

ユーザーがテレビの電源を入れた瞬間に目にする画面がwebOSであり、何を見るか、何をストリーミングするか、何を再生するかを決める場となっている。

この接点を最大限に活用するため、LGアドソリューションズの幹部は次の2点に注力している。

第1に、ホーム画面上の注目を広告収益に結びつけること。第2に、このインターフェースをリビングルーム以外の環境にも展開することである。

webOSはテレビ以外のデバイスにも対応しており、すでに車載モニターやホテルのディスプレイなどにも搭載されはじめている。

「現在、積極的に進めているのは、webOSを新たな環境へ展開することだ。特に今後は、従来webOSに対応していなかったモニターにも、このオペレーティングシステムが搭載されるようになる」と、ウェイル氏は述べている。

LGアドソリューションズにとって、搭載されるデバイスが増えることは、それだけLGのホーム画面を広告媒体として活用する機会が増えることを意味する。

「従来のテレビでは、CMの冒頭に表示される広告にプレミアムが付くのが一般的だが、ホーム画面はその現代版だと私は考えている」と、ウェイル氏は語る。

ただし、この構想を完全に実現するためには、視聴者がアプリに直接アクセスするのではなく、ホーム画面に滞在し、そこからコンテンツを探す行動が定着する必要がある。

理想は、LGの画面が視聴体験の出発点となり、人々がまずLGのホーム画面でコンテンツを探し、そのうえでアプリを立ち上げるという流れだ。

視聴データとレコメンド技術による優位性



「実際には、視聴行動は多様な環境に分散している」と、ウェイル氏は述べる。

「我々はスクリーンの所有者として、ユーザーの視聴傾向を把握し、どの環境でも最適なコンテンツを提案できる立場にある」。

これは、視聴環境の違いに左右されない包括的なレコメンデーションエンジンを提供できることを意味する。

LGはオペレーティングシステムを自社で保有しているため、アプリ、AVOD(広告付きビデオ・オン・デマンド)、強力な競合であるFAST(無料広告付きストリーミングテレビ)、さらにはDisney+やNetflixといった有料プラットフォームを通じて、デバイス上で視聴されたコンテンツを横断的に把握できる。

このようなプラットフォームをまたぐインサイトが、LGアドソリューションズに独自の優位性をもたらしている。視聴者が今見ているコンテンツを把握できるだけでなく、次に何を見たいかを提案できる能力があるのだ。

「ホーム画面での滞在時間がサードパーティの視聴時間を奪い、彼らのビジネスに悪影響を及ぼすことはない」と、ウェイル氏は説明する。「むしろ、我々のレコメンデーションの質が全体の視聴時間を押し上げる効果をもたらしている」。

これらの取り組みは、LGアドソリューションズが経営上の転換期を迎えているなかで進められている。

デラウェア州の裁判所は3月、同社の前身であるアルフォンソ(Alphonso)の共同創業者らを取締役会に復帰させ、3年にわたる経営権争いに終止符を打った。

この判決により、彼らの経営権が回復しただけでなく、当初の買収契約に含まれていたIPO関連の条項も復活した。そのため、LGアドソリューションズが株式公開をめざす可能性も出てきている。

それまでのあいだは、LGアドソリューションズが地道に進めるホーム画面戦略の成果に注目が集まるだろう。この戦略は理にかなっているが、広告市場全体としては、予算の見直しが進む不安定な経済環境が続いている。広告業界にとっては、慎重な判断が求められる状況だ。

[原文:In the CTV race, LG Ad Solutions starts at the home screen

Seb Joseph(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:藏西隆介)