肉バカ・小池克臣が推す「予約困難予備軍」の焼肉店はここだ! 異色の経歴を持つ店主が追求する焼肉の新店へ
巷には「予約困難」な焼肉店がたくさん存在している。口コミやメディアへの掲載など、予約困難となる要因はさまざまだ。本連載では肉バカ・小池克臣さんに早めに押さえておくべき「予約困難予備軍」の焼肉店を焼き方のポイントとともに教えてもらう。
小池克臣が推す「予約困難予備軍」の焼肉店
巷には「予約困難」な焼肉店がたくさん存在している。口コミやメディアへの掲載など、予約困難となる要因はさまざまだ。本連載では肉バカ・小池克臣さんに早めに押さえておくべき「予約困難予備軍」の焼肉店を焼き方のポイントとともに教えてもらう。
教えてくれる人
小池克臣
横浜の魚屋の長男として生まれるも、家業を継がずに、外で、家で、肉を焼く日々を送る。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、ほぼ毎晩、牛三昧。その様子をInstagramやYouTubeで発信中。著書に『肉バカ。No Meat, No Life.を実践する男が語る和牛の至福』(集英社刊)。公式ブログ「No Meat, No Life.」。
住宅街に密かにオープンしたばかり! 通いたくなる話題の焼肉店へ潜入
小池さんが今回紹介する店は、10月11日、目黒本町にオープンした、焼肉「だいごろう」。駅から少し離れた住宅街にあり、町中華のような渋さからすでに秘境っぽい雰囲気。店先にラフな感じに火鉢が並んでいるので、なんとなく焼肉店とわかる外観もユニーク。カジュアルに通える価格帯でお得な盛り合わせスタイルを中心に和牛焼肉と牛豚ホルモン、生ラムを展開する、七輪炭焼きの煙もくもく系焼肉だ。
居抜き物件をキレイにクリーニングし、リノベーションした店は、味のあるアクリルの窓つき扉やざっくりとスプレーした厨房の扉、放置したままのTV液晶モニターなど、レトロな風情がある。一段下がったエントランスを入ると、中には赤いカウンターがあり、完全に町中華のような店内。カウンター席、テーブル3卓のほか、奥には6〜8人の個室を完備する。予約は一部電話でのみ受けるスタイルを貫く予定だ。
小池さん
以前、和牛の品評会で知り合った、神戸牛フレンチレストランを経営されていた店主・服部さんの新店ということで期待値が高く、今回伺いました。詳しく聞けば、内臓系は「しばうらホルモン」から、正肉は「吉澤千種」から仕入れていて、間違いのないクオリティ。長い間、和牛を扱ってきた服部さんが、心機一転挑戦するこだわりの焼肉だからこそ、新鮮で楽しみでしかないです。
地域に密着した通える焼肉店を目指す、店主の挑戦とは?
店主・服部さんの飲食店経験の原点が焼肉店。その後、中目黒のステーキ店などを経て、神戸牛を扱うフレンチビストロ、松見坂「Boeuf SEITA」を営み、人気を博していたのだがビルが立ち退きになり、今回、焼肉店を立ち上げようと心機一転この地に辿りついてオープンの運びとなった。かつてフレンチの師匠による「和牛を一番おいしく食べる方法は、焼肉だ!」との格言もあり、原点回帰の焼肉を追求したくなったそう。長年、牛肉と向き合ってきたシェフによる、新たなる感性がプラスされた唯一無二の焼肉店が誕生した。
店名は、常連さんにつけられたあだ名の“だいごろう”から。普段しょっちゅう食べられる手軽さと価格でお酒も楽しめるよう、焼肉は盛り合わせスタイルを提案。フレンチの要であるソース(焼肉のタレ)へのこだわりも魅力だ。
小池さん
中目黒のステーキ店時代からのお付き合いがある服部さん。おいしい和牛への目利きやこだわりはもちろん知っていたので、今回オープンすると聞きつけ、本当に楽しみで! まずこのワクワクするような看板もない外観に、お!と驚きました。盛り合わせスタイルで和牛、ホルモン、生ラムまで幅広い焼肉が楽しめるので、ご近所の人から感度の高い人たちまで流行りそうですよね。
小池さんおすすめの「オーダー必須」のメニューとは?
まず食べたいホルモン盛りは、S、R、Lの3サイズからセレクト。新鮮さと高品質で定評のある「しばうらホルモン」から仕入れた、牛豚半分くらいの割合でミックスされたバリエーション豊富なホルモン焼肉が楽しめる。この日は、牛がシビレ、ハツ、シマチョウ、豚がガツ、ほほ(カシラ)のラインアップ。常時フレッシュな素材を、6〜10種類ほどストックしているので、毎回異なるミックスホルモンが味わえるのもいい。もみダレは、サラッとしたタイプのみそダレを使用。仙台みそのほか数種類のみそ、コチジャンなどをブレンドし、食べ疲れない、焼いた時に焦げない、などを考慮して作られたオリジナルレシピだ。
フレンチシェフならではの秘伝のつけダレが、焼肉の味わいの幅を広げる一助に。焼肉、ホルモン、ジンギスカン、どれにも合うように開発され、フレンチのソースの概念で煮込んで作られるタレは、作ってから2、3日寝かせ、肉の臭みを消しつつ旨みを最大限に引き上げる。
小池さん
食べるラー油的なイメージで作られた、飲めるタレってなかなかない。おいしいお肉を引き上げるタレの存在って重要ですが、これが本当に旨くて感動。ホルモンもフレッシュなものを使っているから鮮度もよく臭みもない! 炭でじっくりと焼くから、ぼわっと炎が上がることもないし、焦げずにしっかりと火を通すことができて、誰にでも焼きやすいと思います。
和牛盛りは、3種の部位をミックスしたお得感のある盛り合わせ。この日は、イチボ、ランプ、ブリスケが登場。中間サイズのRで、各2切れくらいのボリュームだ。ステーキ店を営んでいた時代からの付き合いが長い「吉澤千種」からの仕入れで、東北一の生産者との呼び声高き、岩手県の佐々木さんのものと、小池さんもうなる、ルートも確かだ。
小池さん
僕の師匠とも言える「吉澤千種」の吉澤さんからのルートと聞いて、間違いないな、と確信しうれしくなりました。しっかり味が濃く旨みが増す、長く飼育した処女牛を使っているので、おいしさが違います。イチボの虎柄も美しい! 脂の甘みをじっくり味わいたいですね。
流通が安定している冷凍は使わず、鮮度のよい生ラムにこだわって厳選した、仔羊のランプと肩ロースの盛り合わせ。薄い肉は焼くと硬くなって縮まることから、ある程度の厚みがあるスライスしたラムを提供する。ラムに合わせて調合された秘伝のハーブスパイスと塩コショウで下味をつけたものを焼き、牛と共通のつけダレを絡めて食すスタイルだ。
小池さん
僕は牛ばかり食べているので、ラムは焼肉店にある時にたまに食べるくらい。牛と違って独特なクセがおいしいから、牛焼肉の間に羊を挟んでまた牛に戻る、みたいな食べ方が僕の理想。表面はパリッと、中はふわっと焼くことができるのは炭火ならではです。久々に食べましたが、臭みがなくて本当においしいですね。タレとの相性も抜群。
焼肉の最後の〆は、和牛テールを煮込んだ贅沢な出汁で作ったシャリシャリフローズン状のセミフレッドスープの冷麺がおすすめ。出汁を取ったテールからほぐしたほろほろの肉、白髪ねぎ、キュウリ、キムチと一緒に、喉ごしのいい麺を味わって。最後まで飲み干したくなる、どこか上品な味わいだ。
小池さん
和牛テールの骨って一番出汁が出る部位。そこを丁寧に一からきちんとスープを作っているから、おいしくないわけがない! さすがフレンチシェフの経験が活きていますね。
今回は、値段も手頃で通いやすく、個性がしっかりしている一軒。「オープンするにあたって内装や外装よりも、和牛、内臓など仕入れにしっかりとお金を使っているのが素晴らしい」と小池さんが太鼓判を押す。「今はひっそりとしている街だけど、このエリアや通りが、おいしい店であふれていけばもっと面白くなる。そんな発展の中心になれたらいいですね」と店主・服部さんは語る。まだオープンしたばかりだが、今後に可能性を秘めた焼肉に注目したい。
※価格はすべて税込
<店舗情報>
◆だいごろう
住所 : 東京都目黒区目黒本町1-1-21 センチュリー学芸大 1F
TEL : 03-5734-1166
文:濱口眞夕子(SEASTARS Inc.)、食べログマガジン編集部 撮影:八木竜馬