ピーマンの「苦み」にも栄養があった!?苦みを抑えるなら横切り、栄養を求めるなら“縦切り”がベスト

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子供が苦手とする野菜の一つがピーマンだ。特に食べたときの「苦さ」を嫌がることが多い。

しかし、この苦さのもととなる、ピーマンの実には「ピラジン」という栄養素が多く含まれているという。

東京慈恵会医科大学附属病院の栄養部が監修した『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます!』(世界文化社)から一部抜粋・再編集して紹介する。

縦切りで流出を防ぐ

ピーマンはビタミンCやβ-カロテン、ビタミンEを含む栄養価の高い野菜。

そしてピーマン独自の栄養素といえば香り成分のピラジン。このピラジンがポリフェノールのクエルシトリンと結びつくことで独特の苦みに変身するのです。

ピーマンの繊維は縦に並んでおり、この繊維を断つように切ると成分が流出して苦みを抑えられます。

しかしピラジンは血液をサラサラにし、脳梗塞や心筋梗塞の予防に役立つと考えられる成分。失くしてしまうのはもったいない。

そのため横切りよりも縦切りに切ることがコツです。

ピーマンは横切りにすると繊維を断ち切るため、やわらかくなり苦みも抑えられますが、ピラジンが減ってしまいます。

繊維に沿って縦切りにすれば、ピラジンの流出を抑えられて、食感もシャキシャキになります。

●ワタごとロスなしの切り方!
1)ピーマンの上部をヘタごと切り落とす。ヘタだけを取り除き、その周辺はほかの部位と一緒に調理する。
2)ピーマンの実に包丁を入れ、ワタごと切り込みを入れる。
3)切れ目から手でピーマンを開き、平らな状態にする。
4)端から種とワタごと縦切りにする。

ピーマン部位ごとの栄養価

●皮(外果皮)のビタミンCはレモンの約1.5倍
ピーマンの皮は、光合成によって発生するビタミン類が多く含まれており、ビタミンCはレモンの1.5倍以上も含まれている。ピーマンのビタミンCはビタミンPという成分に守られているため、加熱しても壊れにくいのです。

●種子・胎座のピラジンは果皮の10倍
「種とワタが苦みのもと」と思われがちですが、実は苦みのもとは実の部分。食べても問題ないどころか、これらの箇所にはピラジンが果皮の10倍量含まれています。実や皮と一緒に調理しましょう。

●実に含まれる苦み成分はポリフェノール
ピラジンと結びつき苦みを発生させるクエルシトリンですが、これは野菜を守るポリフェノールの一種。血圧を下げる効果や抗炎症作用が期待できる成分なのです。クエルシトリンは脂溶性のため、油と合わせた調理をするとお得。

 

 

栄養を損なわない保存法&食べ方

ピーマンは常温保存が可能な野菜ですが、冷蔵保存する場合には「お湯漬け」がおすすめ。

50℃のお湯(沸騰したお湯に同量の水を足す)に1〜3分浸してから水分をよく拭いてラップなどに包んでから冷蔵庫へ。ビタミンの減少を抑えることができます。

また、ピーマンの栄養吸収のコツは焼くことです。

ピーマンの血液サラサラ成分・ピラジンは、実は焼いた肉などの香ばしさに含まれる香りと同じ。よく煮込んだシチューなどのコク成分でもあるため、あえてピラジンを添加してコクを出すこともあるそうです。

ピラジンは加熱に強いだけでなく、ある程度の高温で加熱することで増えるとする研究結果も報告されているため、焼く、炒めるなどの調理に向いています。

ピラジンは種とワタにこそ豊富なので、調理する際にはそのまま使うのが原則です。

ベストな組み合わせは「ごま」

ピーマンにはβ-カロテン、ビタミンE、クエルシトリンなど脂溶性の成分が多く含まれます。そのため、油で調理すると吸収率を上げることができてお得です。

ピーマンのビタミンCやピラジンも熱で壊れにくいので加熱調理もOKです。

ピーマンに含まれる脂溶性の栄養素を余すところなく摂るためには、脂質をプラスすることが大切。おすすめは「すりごま」。

ごまのセサミンで抗酸化力も倍増するため、ぜひ食材の「あと一品」に追加を。作り方は縦切りにしてレンチンしたピーマンをすりごまと和えるだけでできあがりです。

監修者:
濱裕宣
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部部長。日常生活で活かせる健康と栄養バランスをモットーに、患者の立場に立った食生活に向上指導にあたる

赤石定典
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部。栄養食事指導によって、病態改善・治療・治癒への貢献を目指す