華麗なスカイプレーを決めたRB中村翼【写真:中戸川知世】

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ハンドボールの「リーグH」が6日に開幕

 ハンドボールの「リーグH」が6日、開幕した。記念すべき「開幕戦」は東京・ひがしんアリーナで行われ、ジークスター東京がゴールデンウルヴス福岡と対戦。東京が34-29で白星スタートを切ったが、準備期間の短さもあってか観客は890人と寂しかった。段階的なプロ化を目指す新リーグは、課題を山積したまま静かに船出した。

 ショーアップされた選手紹介に乗ってコートに登場する新旧日本代表のスター選手。高い技術を駆使したトリッキーなパス回しに、豪快なポストプレー、華麗なスカイプレーに観客が沸く。ホームの東京が福岡の粘りに苦しみながらも新リーグの初戦を勝利で飾った。

 もっとも、昨年までの日本リーグと大きな違いはなかった。平日だったとはいえ、観客は1000人を超えた昨年の同チームの1試合平均にも届かない890人。テレビカメラもなく、報道陣も普段より多いとはいえ10人程度。違うのは、リーグHの中村和哉代表理事のあいさつと始球式ぐらい。「何が変わったの?」と突っ込みたくなる開幕戦だった。

 当初予定された24年秋の新リーグ発足に向けて昨年7月に中村氏がリーグの代表理事に就任したが、準備期間が短かすぎた。新リーグの開幕戦ともなれば、強豪同士の注目カードが選ばれ、リーグ主導で開幕セレモニーや観客動員が行われそうなものだが、それもできなかった。

「本来ならリーグとして開幕戦を考えるべきだが、すでに日程も決まっていて動かせなかった」と中村代表理事。もともと予定されていた昨年リーグ3位の東京と同13位の福岡の試合が「開幕戦」になった。東京はチアパフォーマンスチームをデビューさせるなど新たな取り組みもあったが、大賀智也社長は「観客動員もしたが、時間がなかったことやカード的な問題もあって難しかった」と話した。

 昨年最下位の福岡は開幕戦を意識。記念のリーグH初得点を決めた木村翔太は「相手は強いし、恥ずかしい試合だけはしないように話していた」と明かしたが、東京の選手たちは「普段と変わらない」と淡々。細川智晃は「ミーティングでも開幕戦だからという特別な話はなかった。いつも通りでした」と話した。

観客数の目標は1試合平均1000人…パリ五輪出場は追い風に

 将来的に「世界トップレベルのリーグ」を目指すというリーグHだが、昨年まで48年続いた日本リーグと目に見えて大きく変わるのは「チーム名に地域名をつける」「12歳以下のチームを持つ」くらい。今後段階的に「プロ契約選手11人以上」や「チームの独立法人化」など時間をかけながら進めていくから、劇的に変わることはなさそうだ。

 観客数も目標は1年目の今季が1試合平均1000人。昨年の700人や開幕戦の890人を考えると高いハードルにも思えるが、これも5年後には2000人まで増やすという。東京はもともとエンタメ性を重視した「プロクラブ」だが、他のチームもファンサービスなどに本格的に取り組む必要がある。選手たちの頑張り以上に、リーグやチームの努力がカギになる。

 日本リーグ4連覇の大崎電気で活躍し、20年に東京に移籍した元日本代表主将の信太弘樹は「僕が日本リーグに入ったころ(12年)とはハンドボール界も変わった。ただプレーするだけから。今は見てもらうことも意識するようになりました」と話した。企業チームだけでなくクラブチームも誕生し、移籍も活性化。日本代表が36年ぶりに五輪予選を突破したこともハンドボール界の追い風になっている。

 とはいえ、同じアリーナ球技のバスケットボールは16年にBリーグが発足し、26年には「Bプレミア」が始まる。バレーボールも来月にはプロ化を目指してSVリーグが開幕する。信太は「バスケやバレーは、もっと変わっている。魅力的な試合で多くの人に来てもらってリーグHを成功させないと、完全に置いて行かれます」と危機感を口にした。

 開幕戦を終えて中村代表理事は「観客が少ないのは残念。もっと露出を増やして、リーグHを周知しないといけない」と厳しい表情で言った。それでも、新リーグはスタートを切った。14チームが争う男子に続き、7日には11チームの女子が開幕。来年6月のプレーオフで、初代王者が決まる。リーグH、いや日本ハンドボール界にとって大事な10か月が始まった。(荻島弘一)

(THE ANSWER編集部)