被告人がTwitterに投稿した店長とのLINEの様子。証拠写真が添付されていた。

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「本来、ナメクジは1匹もいないはずなので、3匹も4匹もいたら大量だと思っています」
 こう語ったのは、2022年7月に宮城県仙台市内で営業していた「大阪王将」のフランチャイズ店舗「仙台中田店(現在は閉店)」の厨房内で、「ナメクジが大量発生している」などと誇張して、事実と異なる内容をTwitter(現X)に投稿した元従業員の男。

 偽計業務妨害などの罪に問われているのは、元従業員の圓谷晴臣被告人(25)。この男の裁判が、今年の4月から仙台地裁(須田雄一裁判官)で開かれている。

 初公判では、「ナメクジ」の大量発生は事実だとして、起訴内容を一部否認。9月3日に開かれた公判では、検察側の被告人質問が行われた。

◆Twitterでの内部告発の内容

 この事件の発端は2022年7月、元従業員の被告人がTwitter上で「内部告発」と称して、勤務していた仙台中田店の厨房内にナメクジが大量発生しているなどと投稿し、一時話題となった。一方で運営会社側は、ナメクジの存在は事実としつつも、「大量発生」と誇張した内容で投稿されたことで、営業を妨害されたとして被害届を提出。

 Twitterへの投稿から1年8ヶ月が経過した今年3月、仙台地検は被告人を偽計業務妨害の罪で起訴。その後、Twitter上で店長を「クソゴミ」などと表現して投稿したことや、YouTubeでも店長の名誉を傷つけたなどとして、侮辱と名誉毀損の罪でも追起訴されている。

 被告人は今年4月に開かれた初公判で、ナメクジの大量発生は事実だと主張し、起訴内容の一部を否認。弁護人によると、SNS上で告発したことは適切な内部告発ではないとして、偽計業務妨害罪の適用自体は認めるというが、ナメクジの大量発生は事実であり、判決では考慮されるべきだとしている。

裁判での争点は「大量」の基準

 被告人は、紺色のジャージ姿で刑務官らに連れられて入廷。前回の公判では、弁護人から被告人質問が行われ、情状として壮絶な生い立ちも明らかになった。

 今回は、検察官から被告人質問が行われた。この裁判の主な争点は、ナメクジが大量に発生していたのか否か。検察官は、ナメクジの存在を店長は認識していたのか、などの質問をしていた。

検察官:被告人の認識として、「大量」とはどのくらいを指すのか。

被告人:本来、ナメクジは1匹もいないはずなので、3匹も4匹もいたら大量だと思っています。

検察官:他の従業員はナメクジを見たことはあるのか。

被告人:正確にはわかりませんが、ナメクジ自体は一緒に見たことがあると思います。他の従業員がナメクジ出たよと言うこともあったので。

 また、店長は平均して週に4日勤務しており、店内での接客だけではなく厨房でも働いていたため、少なからずナメクジの存在は知っていたのではないか、と被告人は語った。

◆ナメクジが“鍋”に入っていたかも争点に

 前回の公判で被告人は一部の投稿の虚偽を認めた。それは、ナメクジが調理する鍋や料理に混入した旨の投稿だ。被告人としては、ナメクジに潜む寄生虫が鍋や料理に混入したのではないか、という可能性を示唆したものだと述べていたが、当然にも検察官は厳しく追及していた。

検察官:実際に、ナメクジ自体が料理に混入したことはあるのか。

被告人:それは見たこともないですし、そもそもないと思います。

検察官:ナメクジが鍋に混入していたというが、ナメクジは卵を割る缶に1匹だけということで合っているのか。

被告人:はい、そうです。

 調書によると、厨房に卵液を入れておくための専用の缶があり、そこにナメクジが混入していたことがあったという。しかし、被告人の投稿では「鍋」とされている。その後の裁判官からの質問でも問われていたが、被告人は、その「缶」の形が通常の缶とは異なり、特殊な形状であったことで「鍋」と表現したと述べている。