大阪王将「ナメクジ大量発生」投稿事件。元従業員による“SNS上の内部告発”の真相が裁判で明らかに
さらに、検察官は語気を強めて質問をする。
検察官:それなのに、鍋にナメクジが付きまくっているなどど従業員である被告人が投稿すれば、事実なんだと思わせてしまうのではないのか。
被告人:そういう風に受け止められるとは思ってもいませんでした。
被告人によると、問題の投稿は世間に拡散されたかったわけではないという。当時のフォロワーは1万6千人。それでも、「全員が友達でただ見てほしかっただけ」と弁解した。
また、検察官は初公判の冒頭陳述で、被告人の動機については職場への「復讐」だと指摘している。現に事件直前には、以前から労働環境や店長への不満が溜まっていたところ、店長から勤務態度を注意され、憤慨して退職していた。
これに対して、被告人は事の発端となった“復讐心”について、「東北を管轄しているマネージャーみたいな人と、大阪王将検定を取った時に先生にも話しました」と、大阪王将本部には相談していたという。なお、被告人が大阪王将検定を取得したのは2022年2月のこと。事件よりも前から相談していたことになる。
その後も、被告人は退職を検討する機会は何回かあったというが、運営会社側は深刻な人材不足で、被告人との問題が起きる度に上司が自宅まで押しかけてきて懇願されて、仕方なく続けてしまったと述べた。
◆ナメクジの証拠写真が一枚しかない理由
検察官の後、裁判官からも被告人質問が行われた。通常の裁判では、裁判官からの質問は数分程度で終了する。ただ、今回は15分間も行われた。それだけ、裁判官も難しい判断に迫られているのだろう。
主に質問していたのは、ナメクジの証拠写真について。実は当時、被告人が店長に対してLINEで、ナメクジが写った証拠写真を添付して、大量に発生していたことを報告している。だが、なぜだかその写真にはナメクジが1匹しか写っていないのだ。
裁判官:写真は1枚だけしか撮っていないのか。
被告人:はい。
裁判官:なぜ、1枚だけなのか。
被告人:写真を撮って、すぐに処分しないといけなかったので。
裁判官:ナメクジの発生の現状は、必ずしもその写真1枚だけではわからないと思うが。
被告人:いっぱいいるという衝撃で、とりあえず早くしないとと思って、撮った写真は確認していませんでした。
店長とのLINEのやり取りを被告人はTwitterに投稿しており、問題の証拠写真が添付されている。それを見ると、たしかにナメクジらしきものは1匹だけ。これだけでは、大量に発生しているかどうかは把握し難いだろう。それでも、被告人は「ナメクジの処分を急ぎすぎた結果、よく確認していなかった」と話した。
その後、裁判官から被告人の捜査段階で作成された調書の矛盾点について質問するなどして、この日は閉廷した。
◆今後の裁判の行方は…
前回の劇場型裁判とは一転して、検察官からは厳しく指摘する質問もあった。
適切な通報をせずに、まさに“バイトテロ”のような悪手に及んだ被告人。弁護人によると、前回の公判で明らかになった壮絶な生い立ちなどの情状事実をもとに、寛大な判決を求める方針だという。
次回の公判は9月27日、論告・弁論が予定されている。
取材・文/学生傍聴人
【学生傍聴人】
2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。