三菱総研グループのエム・アール・アイ リサーチアソシエイツは、テーマパークの利用者に関する興味深い調査を行っています(「生活者市場予測システム(mif)調査レポート」)。東京ディズニーランド、USJ、富士急ハイランドで、過去1年間で1回以上利用した人の来園回数を調べたもの。それによると、3つのうちのどのテーマパークでも、年1回の利用者は65%程度、年2回が16%程度、年3回は9%程度と共通していたのです。

 東京ディズニーランドのように認知度が高く、ファンが多いテーマパークや、富士急ハイランドのように絶叫マシン好きに支持される遊園地は、一見すると利用頻度が高いようにも感じます。しかし、実はどこもほとんど変わりません。

 富士急ハイランドはニッチ市場に最適化して競合のテーマパークとの差別化に成功しました。しかし、母数を拡大することが難しいうえ、リピート回数を引き上げる施策も限られているのです。

 外国人観光客による富士山の観光に注目が集まっており、インバウンド需要には期待できるかもしれません。ただ、富士急行は列車などの運輸業には外国人観光客の好影響が出ていると発表していますが、テーマパークには言及していません。ほとんど影響がないのでしょう。

 そうなると、中長期的には富士急ハイランドの客数は横ばい、もしくは日本の人口減とともに微減する可能性が高いことになります。

◆大正時代から運航する芦ノ湖遊覧船を取得

 富士急行は鉄道事業や不動産開発、ホテル運営などを行っています。グループ全体でシナジー効果を生み出し、収益拡大に努めなければなりません。

 中期経営計画では、「箱根・熱海」エリアへの事業展開が注力する取り組みとして掲げられています。箱根エリアは小田急、東急、西武が激しくやりあった「箱根山戦争」で有名。富士急行は出遅れていました。しかし、近年は勢力を広げています。

 2022年に伊豆箱根鉄道から十国峠のケーブルカー事業、2023年に芦ノ湖の遊覧船事業を取得しました。芦ノ湖遊覧船は1920年4月に開業したこのエリアを代表する観光事業の一つ。2024年2月に新型船「SORAKAZE(そらかぜ)」の運行をスタートさせ、新体制に移行したことを印象づけました。

 箱根は2023年の観光客数が前年比12.4%増の1900万人となった人気の観光地。そのうち外国人観光客数は34万人。前年から8倍に急増しています。

 観光客数はコロナ前を上回っており、インバウンド効果の恩恵を多いに受けています。富士急行にとって箱根エリアの本格進出は悲願とも言えるもの。今後の成長のカギを握っています。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界