◆大量転売を行うグループの場合、利益は…

 2人の話やSNSでの情報を総合すると、中国では、日本の市価の2〜3割増しの価格で販売されるのが相場のようだ。歴史的円安もあり、価格差が広がっているのだ。

 さて、もっと組織的に大量転売を行うグループの場合、どれほどの利益が生まれるのか。広瀬氏が解説する。

「仮に100万円の高級時計を100本、組織的に免税購入したとしましょう。まずSNSで10人の買い子を日当3万円で雇います。彼らを車に乗せて店舗を回り、購入させます。集まった時計は国際小包で中国に送るか、運び屋に直接持ち込ませる。中国では20%増しの一本120万円で売れると仮定すれば、経費を引いても1950万円の利益になります。本来、総額1億円にかかる1000万円の消費税を払っていないので、これだけ儲かるのです」

◆「空港でバレても逃がしてくれる」

 大量の高級品を海外に持ち出すことは容易でなさそうだが、日本で物流会社を営む中国人女性は、日本の税関は対応が甘いと明かす。

「個人の場合でも購入金額が数百万円程度までなら、空港で検査されることはほとんどない。1000万円以上だと取り調べを受け、課税を言い渡されることもありますが、搭乗時間が差し迫っていれば、飛行機に乗せてくれる。帰国してしまえば、税金は踏み倒せてしまうのが現状です。物流会社を利用した場合、他の輸出品に交ぜて送るので、こちらもバレないのです」

◆日本政府の対応の実態

 まさにやりたい放題だが、こうした状況に日本政府も手をこまねいているわけではない。出国時に現物を確認してから消費税を還付する「リファンド方式」を検討しているのだ。

 それによって悪質な転売は減るのだろうか。前出の笹氏はこう指摘する。

「現場の国税職員としては、不正されない仕組みづくりを優先してほしいと考えるとは思いますが、日本全体の経済効果を考えると、たくさん買ってもらうほうがいいと考える人もいるでしょう。ルールや法律を考える場合は、その適正な運用方法まで熟慮して導入を検討してもらわないと、現場は混乱します」

 組織的な転売を防ぐために対策は急務だが、実効性を高めるためには、慎重な制度設計が求められそうだ。

取材・文/週刊SPA!編集部 写真/産経新聞社

―[[免税転売]で中国人がボロ儲け!]―