われわれの生活に欠かせないスマホ。とりわけiPhoneは修理方法が限られる(筆者撮影)

写真拡大 (全8枚)


画面の割れたiPhoneを一度も見たことがないという人はおそらくいないだろう(筆者撮影)

筆者のようにiPhoneに関する雑誌を作ったり、ウェブメディアに執筆してたりすると、身近な人からiPhoneの故障の相談をされたりすることが多い。自分自身、いつトラブルが起こってもいいように備えているし、もしトラブルが起こったらどうするか、常に考える。

iPhone 3Gが日本で発売された2008年7月11日以来、16年間にわたってiPhoneを使い続けてきた筆者のiPhoneのトラブル対処・修理方法についてお伝えしたい。

1日でも「スマホなし」で暮らせるか?

多くの現代人にとって、たとえ1日でもスマホなしで暮らすのは非常にストレスに違いない。

壊れたら誰とも連絡が取れなくなるし、電車にも乗れなくなるし、どの駅で乗り換えて目的地に向かえばいいのかもわからない……という状況に陥る人は多いのではないだろうか?


我々の生活に欠かせないスマホ。とりわけ、iPhoneは修理方法が限られる(筆者撮影)

スマホだって機械だから壊れることもある。そうなった場合、どうやって修理すればいいのか?

まずトラブルとして、ソフトウェア的な問題か、ハードウェア的な問題かを切り分ける必要がある。

ソフトウェア的な問題なら、自力で直したり、ITに詳しい知人に依頼することができるかもしれない。ハードウェア的な問題で部品交換が必要なら、アップルの正規修理サービスプロバイダに頼むか、非正規の修理ショップに頼むか、自分で直すかしか方法はない。

例えばディスプレイが割れたとか、ボタンが壊れたとかがこちらに相当する。水が内部に入った場合などもハードウェア的な故障だが、こちらは直る可能性は低く、全交換になる可能性が高いだろう。

では、正規修理サービスプロバイダに修理を依頼するか、非正規修理ショップに頼むか、自分で直すかは、どう判断すればいいのか。

極力、正規修理サービスを利用する

iPhoneにどれぐらいのコストをかけられるか? どのぐらいのリスクを許容できるかによって、どの選択肢を取るかが決まってくる。

まず、正規修理サービスプロバイダと非正規の修理ショップについて説明しておこう。

正規修理サービスプロバイダは、アップルが認証している修理サービスだ。iPhoneの正規修理サービスには、ウェブ経由の配送修理、Apple Storeや正規サービスプロバイダへの持ち込み修理の2種類がある。


一番、お勧めできるのがApple Storeへの持ち込み。ただし、ウェブでの予約を忘れずに(筆者撮影)

一番便利なのは、ウェブ経由の配送修理だ。アップルのウェブサイトにアクセスすると、非常にわかりやすい対応ページが出てくるので、まずはアクセスしてみよう。

申し込むと、サポートからが送られて来て、そこに製品を入れて返送する仕組みになっている。使ってみると非常にスムーズなので、体験したことのない人は使ってみてほしい。修理費用も支払いを決定する前にわかるシステムなので、高過ぎると思えば中断できる。

Apple Storeは日本に10店舗ほどしかないが、そこへ足を運べば修理についても非常に親切なサポートを受けられるので、近くにある人は足を運ぶのがベストだと思う。

また、Apple Storeでなくてもカメラのキタムラやビックカメラなどの『アップル正規修理サービスプロバイダ』でも修理を受けられる。修理受付については予約制なので、必ず予約してから向かうこと。でないと、無駄足になってしまう可能性が高い(常に混んでいるので)。

キャリアでの修理も多くの場合は、正規修理サービスプロバイダへ送るため、発送修理となる。ごく一部のキャリアショップでは正規修理サービスプロバイダの認定を受けており、その場での修理が可能だが、対応するお店は全国でも極めて少ないのが現状だ。

正規修理サービスプロバイダは故障のタイプによっては、意外と安いこともあるので、まずはこちらを調べてみよう。

次なる選択肢は、街の非正規の修理ショップだ。


非正規修理ショップで使われる部品は正規流通品ではない(写真:Ref:030/Universal Images Group/共同通信イメージズ)

それらを利用する前に知っておいてほしいことがある。

日本では、アップルはiPhone修理のための部品を販売していない。

したがって非正規修理店で交換されるディスプレイや、バッテリーなどの部品は、アップル純正の部品ではなく、コピー品、もしくは正規の部品だとすれば横流し品ということになる。純正の製品を作っている企業が巨額のアップルとの契約を失うリスクを冒してまで横流しをするとは思えないので、ほぼコピー品と思っていいだろう。

ディスプレイ・タッチパネルにせよ、バッテリーにせよiPhoneに使われている部品の製造技術は世界トップレベル。コピー品を作っているレベルの会社が、まったく同等のものを作れるとは考えにくい。ディスプレイ・タッチパネルでいえば色の偏りや、明るさ不足、ドット欠けやタッチ位置のズレが存在することが多い。

バッテリーも、開発コストによって性能の差の激しいパーツなので、容量が少ないとか(表記上は多い場合もある)、耐久性が足りず、使用している間に容量の減りが早い、バッテリーが膨れてくるなどのアクシデントが起こる可能性が高いことを理解しておかなくてはならない。


正規修理サービスプロバイダ以外の修理店で使われる部品はコピー品など非正規なもの。また、そういうお店で一度分解されたiPhoneは正規修理サービスプロバイダで修理を受け付けられなくなる可能性が高い(写真:dramaticphotographer/PIXTA)

正規修理サービスプロバイダでは、iPhoneのタッチパネルは取り付けてからデジタイザーの調整を機械にかけておこなうのだが、この機械は非常に高価で正規修理サービスプロバイダにしか提供されていない。そういう意味でも、iPhoneは本来の性能を発揮できなくなってしまう。

ゆえに、できることなら正規修理サービスプロバイダで修理することを強くお勧めする。

非正規の修理を選ぶしかない場合も

しかし、非正規の修理をお勧めする場合もある。

古いiPhoneで機種変を検討しているが、もう少しだけ使いたい(=お金をかけたくない)というような状況だと、正規修理サービスプロバイダで高価な修理代を払いたくないものだ。そんな場合、非正規修理ショップに依頼してもいいだろう。

筆者自身は仕事柄もあって常に保証か、AppleCare+のあるiPhoneを使い続けているが、家族のiPhoneを非正規修理ショップで修理してもらったこともある。

また、ネットを検索すると、ディスプレイやバッテリーも販売されているので、手先の器用さに自信のある人なら、それらを買って自分で修理しようと思うかもしれない。

しかし、こちらも上記の非正規修理ショップの場合と同じで、純正部品より性能が低い部品であることは間違いないし、一度、iPhone本体を開けると正規に修理を受けられなくなる可能性がある。

iPhone 8ぐらいまでは、個人でも修理できなくはなかったが、iPhone Xからはタッチパネル側にFace ID、iPhone 12シリーズからは裏面にMagSafeが設けられ、本体を開く際、メイン基板とこれらの部品を繋ぐフラットケーブルを切らないように作業しなければならないなど、高度な技術が必要となっている。よほどの自信と、オウンリスクで作業する覚悟がなければやめておくのが賢明だ。


最新のiPhoneになると、前面のFace IDカメラ用や、背面のMagSafe用のフラットケーブルを切らないように開かねばならない。集積密度が非常に高く、バッテリー交換ですら極めて高難度となっている(筆者撮影)

また、日本では技適の問題もあり、認証されていない企業や個人が通信機器を分解すべきではないという事情もある。

風呂場で使うのはお勧めできない

以上がiPhoneをできる限り正規修理サービスプロバイダで修理したほうがいい理由だ。

新機種を購入したら万一の際に備えAppleCare+に入っておくか、少なくともキャリアの保証に入っておきたい。データのバックアップはiCloudに課金して常に行っておく。

もちろん、何よりも壊さないようにすることも大切だ。

よく人がスマホを落下する場面に遭遇するが、自分はやらないように対策をする。例えば、頑丈なケースを装着したり、バンカーリングやストラップなどを用いてホールドをサポートするのもいいだろう。

また、多くの人は『防水』機能を過信しているが、実際は薄いゴム状のパッキンが入ってるだけだ。お尻のポケットに入れて荷重がかかったりしていると、本体が微妙に曲がることもあり、経年劣化でパッキンも剥がれてくる。防水機能があるからといって、風呂場で使うのはお勧めできない。

さらにiPhoneの動作環境温度は0〜35℃なので、お風呂のお湯は温度的にも補償範囲外だ。

iPhoneを長く使いたい場合の対策事項をまとめると以下だ。

とにかくAppleCare+に入る壊れたら正規修理サービスプロバイダで修理するバックアップを常に取る壊さないようケースなどで対策する

iPhoneと、その中にあるデータを守るため、上記を徹底することをお勧めする。


iPhoneなどスマートフォンを安心して使い続けるためには、日ごろの備えが大切だ(筆者撮影)

(村上 タクタ : 編集者・ライター)