大人になっても指をしゃぶってしまう理由は?

写真拡大

 子どもが大きくなっても頻繁に指をしゃぶったりしていることがあります。中には、大人になっても子どものように指をしゃぶってしまう人もいるようです。そもそも、なぜ指をしゃぶってしまうのでしょうか。直すことはできるのでしょうか。精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

乳幼児は問題なし 学童&成人の場合は…

Q.頻繁に指をしゃぶったりする原因について、教えてください。心理的にどのような原因が考えられるのでしょうか。

田中さん「指しゃぶりは、あらゆる年齢でみられる現象で、年齢によって原因は異なると考えられています。

まず、乳幼児期の場合。乳幼児にみられる指吸い(指しゃぶり)は、生理的なものです。成長とともに自然に止まるため、この時期は様子見で問題ありません。

ネット記事などで、指吸い(指しゃぶり)は赤ちゃんが自分を落ち着かせる行為であると書かれているのを見ると、じゃあ、赤ちゃんには何かストレスがあるんじゃないかと気になってしまいますが、実際には原因不明なことがほとんどなので、心配いりません。

次に、学童期の場合。心理学的には、新しい場面に遭遇するなどして安心・安全が脅かされているのではないかと考えられます。幼くてまだ言葉にできない分、指しゃぶりなどの行動によって不安な気持ちを表現しているのかもしれません。

それから、思春期から大人の場合。ある時から就寝時に指しゃぶりをしたり、日中にふと気づいたら指しゃぶりをしたりするのが習慣になることがあります。こちらは背景に(無自覚かもしれませんが)何らかのストレスが存在していることが多いでしょう。心理学的には、学業・仕事上の失敗や人間関係の破綻や離別などがあって、甘えたいのに甘えられない状況でさみしかったり、悲しみに暮れたりしているのではないかと考えられます」

Q.成人しても、指をしゃぶったりするのが癖となっている場合、どうしたらよいでしょうか。

田中さん「まずは、指しゃぶりの癖から抜け出すために、日常生活を整えることが大事です。すなわち、睡眠の質と量を確保し、食事の内容について見直しながら、適度な運動を行うのがよいと思います。

もし孤独を感じ、一人悲しんでいることを自覚しているなら、思い切って友人に声をかけ、遊びに出かけるなどもよいかもしれません。人と他愛のない話をするだけでも気が晴れることもあります。他にも、いろいろな気分転換にトライしてみるとよいと思います。

Q.指をしゃぶったりする癖を直さなかった場合、どのようなデメリットが生じる可能性がありますか。

田中さん「乳幼児の場合、3〜4歳を過ぎても『おしゃぶり』を使い続けたり、ひどい指しゃぶりが続いたりすると、前歯の生え方やかみ合わせに影響することがあるので注意が必要です。心配なら、小児科や小児歯科を受診して相談してください。

学童の場合、ひょっとしたら背景に何らかの神経発達症(発達障害)などが隠れていて、勉強につまずいていたり、対人関係がうまくいっていないことへのサインとして指しゃぶりがみられている可能性があります。養育者が早めに気づいて対処することが大切ですね。まずは、子どもとのコミュニケーションを増やしながら、さりげなく学校での様子を話題にしてみるとよいでしょう。

大人の場合ですが、何ヶ月とか何年も指しゃぶりが続いている人もいます。必ずしも指しゃぶりが精神障害のサインというわけではなさそうです。また、医学的に、指しゃぶりを放置すると精神障害を発症するなどとも言われていません。そのため、大人の場合には、指しゃぶりの癖に気づいた時点で、背景にあるストレス要因を探り、それらの解消・解決に努めるといったゆるやかな対応でよいと思います。