E.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)は、2024年1月9日、『コスメティクス・クリミナルズ(Cosmetic Criminals、コスメ泥棒)』という15分間の短編映画をAmazon FreeveeとYouTubeで公開した。また、2024年1月12日からは一部のAMC映画館で映画『Mean Girls』の前に上映されている。米国最大の映画広告プラットフォームであるナショナル・シネメディア(National CineMedia)によると、この短編映画はこれまで映画館で上映されたブランドコンテンツスポットのなかで最長尺となったという。

化粧品の盗難事件を探る短編映画

『コスメティクス・クリミナルズ』は(ドキュメンタリー風に撮影されたフィクションの)モキュメンタリーだ。監督は、オスカー賞やエミー賞にノミネートされた経歴を持つアレックス・ブオーノ氏で、同氏はNetflixの『ロシアン・ドール: 謎のタイムループ(Russian Doll)』やTVモキュメンタリー『Documentary Now!』などを手がけている。この短編映画には、ニーシー・ナッシュ=ベッツ、ネルソン・フランクリン、ネカー・ザデガンらが出演している。この映画は、「E.l.f. pinching」(訳注:pinchは盗むの意)、つまり化粧品盗難被害に遭った10代の少女の物語だ。彼氏からのプロムへの誘いの演出は失敗に終わり、彼女の失態はソーシャルメディアで拡散されてしまう。事件の捜査は、複数の容疑者(そのうちの1人は美容系インフルエンサー)を対象にFBIが担当する羽目に。E.l.f.の名前自体は映画内でほとんど言及されていないが、「ジェリーポップ(Jelly Pop)」や「ヘイローグロウ(Halo Glow)」などの製品は随所に登場している。映画の最後には、登場人物についての後日談にelfcosmetics.comが登場する。この短編映画には、専用のURLであるcosmeticcriminals.comと専用グッズコレクションがある。https://youtu.be/bxGKZ6lfJ7A

インスピレーションとなった「3つのインサイト」

Glossy Popでは、キャンペーンを指揮したE.l.f.の最高ブランド責任者、ローリー・ラム氏をGlossyビューティポッドキャストの特別エピソードに招いて、短編映画に込めた想いや狙いについて話を聞いた。当初、E.l.f. は『Mean Girls』の前に『コスメティック・クリミナルズ』を上映することは計画していなかったというが、両映画には大きな相乗効果があることが判明し、プロダクトプレイスメントにつながった。ラム氏はポッドキャストで、『コスメティック・クリミナルズ』について、そして『Mean Girls』との提携について語った。

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この短編プロジェクトは、「3つのインサイト」に基づいているとラム氏は言う。その1つ目は、消費者インサイトデータのなかで、E.l.f.が「ベビーブーマー世代からアルファ世代まで」の消費者、特にZ世代に共感されていることが判明した点だ。そこで、幅広い層へのアピールを狙った。また、ラム氏はSXMメディア(SXM Media)の調査を引用して、「アメリカ人の半数は実録犯罪コンテンツを楽しんでおり、実録犯罪ポッドキャストのリスナーの74%が女性」であると話した。3番目のインサイトは、「E.l.f. pinching」現象が起きているのを発見したことだ。この言葉は同社の造語であるが、この現象についてはコミュニティから知ったという。この現象は「E.l.f.の聖杯(製品)を返すつもりもなく、家族や友人から借りてしまうこと」だとラム氏。

製品の手頃な価格もアピール

映画におけるブランドメッセージに関しては、ブランドの手頃な価格をアピールすることを優先したとラム氏は言う。盗難の被害者であるオリビアが悔しさのあまり、「E.l.f.はこんなにお手頃値段なんだから、自分で買いなさいよ!」と叫ぶシーンがある。「(ソーシャルメディア上で当社の)消費者からは、姉妹や子ども、娘など誰かに製品を取られるので、同じ製品を一度に2〜3個買っているというコメントが多く見られる」とラム氏。「手頃な価格ゆえに顧客が製品を複数購入しているという事実を強調したかった」。この短編映画が「あらゆるところにブランドを登場させてわざとらしく見せつけている」ように思われないためには、「映画としてのまとまりを維持する」ことが重要だったとラム氏は言う。それには、ブオーノ監督の構想を表現できるよう彼自身を尊重したことも含まれる。また、「当社のやっていることが、我々自身、我々の声、コミュニティとの関係にとって、本物で信頼できるものであると感じてもらえるようにしたいと、常に思っている」とラム氏は話した。

『Mean Girls』との提携の経緯とその影響

『コスメティクス・クリミナルズ』が完成したとき、E.l.f.はそのリーチを拡大したいと考えた。それは当初、Amazonの広告付きストリーミングプラットフォームであるAmazon Freeveeでのストリーミング配信を意味した。Amazon Freeveeでの配信に映画掲載料を支払ったかどうかについては、E.l.f.はコメントを控えた。しかしその後、AMCとNCMナショナル・シネメディア(NCM National CineMedia)を通じて映画館で広告展開する機会が巡ってたとき、E.l.f.はその絶好のチャンスに飛びついたのだった。現在、期間は未定だが、cosmeticcriminals.comで「コスクライム(コスメを盗まれた経験)」を報告すると、E.l.f.サイトで使える10ドル(約1500円)のコードがもらえる。2024年1月9日には短編映画のプレミア上映と同時に、「コスメティックセキュリティ(Cosmetic Security)」と名付けられた3点セットのグッズ(22ドル、約3200円)を発売した。この商品は一見普通の家庭用品に見えるが、盗難防止のためにメイク用品が隠せるようになっている隠しジッパーポーチ付きテディベアや中が空洞になっている本などが含まれており、2024年1月12日までに完売した。『Mean Girls』にE.l.f.製品を登場させたいという願いについて、ラム氏は、「この『Mean Girls』を観れば、(2004年の)オリジナルと比べて新しくなったことがわかる。多くが近代化されている。テクノロジーがあり、ソーシャルがあり、バイラルの要素がある。……なので、登場人物のバッグやロッカー、そして化粧台にあるのがE.l.f.製品なのは理解できる」。なおTikTokでは、『Mean Girls』にE.l.f.製品があからさまに登場していたことが嘲笑された。この反応について、また、スポンサードコンテンツに対して人々の意識が高まっている現在、E.l.f.がプロダクトプレイスメントにどのようにアプローチしているかについて尋ねたところ、同社コーポレートコミュニケーション担当者からは「当社は常に我々のコミュニティがある場所に注目しており、それはカルチャーを形成することの一環である」という回答を受け取った。また、E.l.f.は「エブリデイ・ウィー・ウェア・ピンク・バンドル(Every Day We Wear Pink Bundle)」(33ドル、約4800円)と呼ばれる製品コレクションを2024年1月3日にローンチして、『Mean Girls』内でその存在をちらつかせた。もちろんこれは、『Mean Girls』の「水曜日にはピンクを着る」という象徴的なセリフにちなんだものだ。このセットにはジェリーポッププライマー(Jelly Pop primer)が含まれているが、これは不定期で発売されて人気を博しているスイカの香りの製品である。
「『Mean Girls』に登場することについてコミュニティに向けて少しずつヒントを出し始めた」とラム氏は語る。『Mean Girls』の前に『コスメティック・クリミナルズ』を上映するという好配置のおかげで、E.l.f.は約380のAMC映画館の1万2000を超えるスクリーンを通じて1200万人のオーディエンスにリーチすることができた。E.l.f.は、この短編映画の製作費、映画館での上映におけるAMCおよびナショナル・シネメディアとの提携費用、パラマウント配給の『Mean Girls』への製品提供に関する予算の詳細は明らかにしなかった。しかし、2023年11月1日に発表された同社の第4四半期決算では、過去4年間で、マーケティング投資額が純売上高の7%から22%に増加したことが判明している。同四半期の収益は2億1550万ドル(約319億円)で、前年同期比の76%増だ。『コスメティック・クリミナルズ』は初週に70億インプレッションを突破し、現時点でYouTubeでの再生回数は300万回を超えている。[原文:Glossy Pop Newsletter: E.l.f. Beauty’s mockumentary taps into Gen Z’s love of makeup and true crime]SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)