日産は日本で開発したEVを中国市場に投入したが、劣勢挽回には至っていない(写真は東風日産のウェブサイトより)

日産自動車の中国合弁会社である東風日産(正式社名は東風汽車有限公司)は、中国で開発・生産したEV(電気自動車)を日産ブランドで2025年から輸出する。11月11日、東風日産が発表した新事業戦略のなかで明らかにした。

東風日産は中国の国有自動車大手、東風汽車集団と日産の折半出資により2003年に発足。一時は日系合弁メーカーのなかで市場シェアトップの座にあった。しかし近年は中国市場の急速なEVシフトに乗り遅れ、販売に苦戦。中国市場での2022年の販売台数は前年比22.1%減、2023年1〜10月は同33.1%減と劣勢に拍車がかかっている。

「予想をはるかに超える変化」

これは日産だけの話ではない。外資系の合弁メーカーは(本国の開発部門が主導する)グローバル市場に向けた製品開発を主体にしており、中国市場の急速(かつ特異)な変化への対応が後手に回った。そのため、おしなべて市場シェアを大きく落としているのが実情だ。

中国の自動車業界では、外資系メーカーが今後どのように中国戦略を修正するかに注目が集まっている。日産本社の社長兼CEO(最高経営責任者)を務める内田誠氏は10月25日、ジャパンモビリティショー(旧東京モーターショー)の会期中に中国メディアのグループ取材に応じ、「中国市場では天地が覆るほどの激変が起きており、われわれの予想をはるかに超えている」と驚きを隠さなかった。

「われわれ(日産本社)は販売不振の現実を受け入れなければならない。中国市場を(アメリカ、ヨーロッパ、日本などとは異なる)ユニークなコア市場と捉え直し、中国の消費者が求めるクルマを(現地で)ゼロから開発していく」。内田氏はそう述べ、今後の巻き返しに意欲を見せた。


東風日産の新事業戦略の発表イベントには、日本から内田誠社長(右から3人目)も駆けつけた(東風汽車集団のウェブサイトより)

外資系大手の最近の動きからは、中国戦略の見直しに関する2つのトレンドが読み取れる。第1に、中国の合弁会社や開発系子会社の研究開発能力を引き上げ、中国市場向けの新型車を現地で開発すること。第2に、EVシフトで世界に先行する中国のノウハウやコスト競争力を生かし、グローバル市場への輸出を拡大することだ。

日産ブランドで4車種を輸出

11月11日の新事業戦略の発表イベントでは、東風日産も同様の戦略を採ることが示された。

「東風日産には(発足から)20年にわたって研究開発力を磨いてきた蓄積がある。今後は東風汽車集団と日産本社のサポートを受けながら、輸出事業を拡大していく」。東風汽車集団の副総経理(副社長に相当)で、東風日産の執行副総裁(副社長に相当)を兼務する陳昊氏はそう意気込む。


本記事は「財新」の提供記事です

新事業戦略によれば、東風日産は現地開発の第1号モデルを2024年後半に中国市場に投入。翌2025年から輸出を開始し、当初は日産ブランドの4車種を含む年間10万台の輸出を目指すとしている。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月12日

(財新 Biz&Tech)