「月経前症候群(PMS)」の主な症状・発症しやすい飲み物はご存知ですか?

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生理の前になると頭痛やイライラするなど、身体や心にさまざまな症状があらわれることがあります。

通常は軽い場合が多いという人でも、自律神経の乱れなどで症状が強く出ることがあります。

そして毎月強く辛い症状が続くことで、精神的にも肉体的にも苦しむ人がいるのです。この症状を月経前症候群(PMS)と呼びます。

今回はこの月経前症候群(PMS)についての悩みにお答えしましょう。

治療法や上手く付き合う方法も紹介しているので、悩みの解消に役立ててください。

月経前症候群(PMS)の原因と症状

月経前症候群はどのような病気ですか?

生理の数日前になると気分が落ち込む・イライラする・酷い頭痛など身体と心にさまざまな症状が出ることがあります。

これらの症状が精神に影響を与えるほど強くあらわれる症状を月経前症候群(PMS)と呼びます。

症状は比較的軽いものから日常生活にも支障をきたしてしまう月経前不快気分障害(PMDD)と呼ばれる深刻な精神疾患までさまざまです。

何が原因で月経前症候群になるのでしょうか?

月経前症候群の原因として、女性ホルモンの1つ黄体ホルモンのプロゲステロンが心身にさまざまな影響を与えるのではと考えられていました。

プロゲステロンは排卵後から月経前まで分泌が高まり、月経がはじまると急激に下がるために月経前の女性の身体に大きな影響をあたえるものと考えられていたのです。

しかし最近ではそれだけでなく脳と女性ホルモンの相互関係や自律神経との関連が重視されるようになっています。脳内神経伝達物質のセロトニン・GABAと女性ホルモンの関係性が月経前症候群の心の症状に関わっていると考えられているのです。

女性ホルモンや自律神経が関係すると思われる月経前症候群の主な原因を挙げてみましょう。

過度なストレス

睡眠の乱れ

カフェイン・塩分・糖分

食事バランスの乱れ

ストレスはホルモン・自律神経両方のバランスを乱すため、心身に不調をきたします。同様に睡眠もバランスを保つためには大切なのです。

カフェインの摂取量が多いと月経前症候群になりやすく、塩分・糖分の摂り過ぎも原因になりやすいといわれています。食事バランスの乱れから月経前症候群の症状が強くなる場合もあるのです。

主な症状を教えてください。

月経前症候群の症状は「身体」と「心」にさまざまな状態となりあらわれます。どのようなものがあるか挙げてみます。まずは身体に起こる症状です。

頭痛

手足のむくみ

腰痛

腹痛・便秘・下痢

下腹部の痛み

甘いものが欲しくなる

頭痛は多くの女性が経験しますが、片頭痛を含め薬を服用しなければいけないほどのひどい頭痛が続きます。手足のむくみ・腰痛・腹痛の他、無性に甘いものが欲しくなる・食欲が異常に増すなどの症状があらわれ、さらに心にも次のような症状があらわれます。

気持ちが落ち込む

イライラする

不安・緊張

集中力低下

睡眠バランス低下

人に関わりたくなくなる

気持ちが落ち込むことが多くなり、常にイライラしてしまう・人に会いたくない・集中力がなくなるなどの症状で、気分が晴れず塞ぎこむことが多くなります。

心の症状がより深刻になると日常生活に支障をきたすようになり、月経前不快気分障害(PMDD)と診断されることもあるのです。

身体だけでなく精神的にも辛い病気なのですね。

検査によって明確な診断がつきにくい月経前症候群ですから、自分の身体や心の異常を訴えても理解してもらえない辛さもあるでしょう。

実際に人にわかってもらえない辛さから、ひきこもり状態になってしまう人もいるほどです。身体と心両面から治療が必要な病気といえるのです。

月経前症候群(PMS)の診断と治療方法

どのような症状が出たら受診すべきでしょうか?

月経前症候群(PMS)はさまざまな症状が特徴です。症状の種類にかかわらず、自分が辛いと感じたら早めに受診してください。

月経前症候群(PMS)は、すぐに命にかかわるという病気ではないため我慢する人が多いのです。

それでも症状は毎月あらわれることなので我慢することで、ますますストレスを感じることもあります。

1人で抱え込まずにまずは相談してください。痛みや心の症状を軽減できる方法があります。また心の症状がより重い場合には、月経前不快気分障害(PMDD)と診断される場合もあります。

身体や心が辛いと感じた時がよいタイミングと考えて医師に相談しましょう。

月経前症候群の診断基準が知りたいです。

月経前症候群の診断は米国産婦人科学会の基準を参考にして行われています。まずは問診をしっかりと行い、次の症状を確認して月経前症候群の診断条件としています。

月経周期と症状が連動している

月経終了とともに症状が消える

心身ともに症状による苦痛が大きい

参考にする米国産婦人科学会の診断基準は次の項目を満たす場合です。

学会の挙げる身体的・情緒的苦痛(抑うつ・不安・頭痛・乳房の痛みなど)

月経開始4日以内に消失・月経周期13日目まで再発しない

症状が薬物やアルコールによるものでないこと

2周期症状が確認されていること

症状が社会生活に障害をきたしていること

条件を満たし、身体的または情緒的な症状が1つでも当てはまれば月経前症候群と診断されて治療が行われます。

治療に使う薬やピルについて教えてください。

月経前症候群の治療では、生活習慣の見直しなども含め心身のバランスを整えるための薬を使用します。婦人科では主に低用量ピル(人工ホルモン剤)が処方されますが、その有効性には個人差があります。

効果があらわれ難い時は抗うつ剤・抗不安薬・漢方薬などの処方と心理療法が併用される場合が多いです。その他身体的な痛みに対しては鎮痛剤、乳房の腫れや浮腫に対しては利尿剤などが処方されます。

婦人科での治療で症状全般の改善のために使用されるピルはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の合剤です。脳の刺激ホルモンと卵巣ホルモンの連動を減少させることで排卵を抑制することを目的に処方されます。

本来ピルは避妊薬・月経を調整するなどの目的で使用されていました。しかし現在ではさまざまなタイプのピルがあり、月経前症候群や月経困難症の治療に使われています。

心療内科での治療は、主に漢方薬や安定剤を使用して心身を安定させることを目的としています。ストレスコントロール・生活習慣・リラクゼーションなどを組み合わせて症状の改善を目指すのです。

月経前気分不快障害との違いは何ですか?

月経前症候群の中でも特に心の症状が重く、不安定さが顕著な場合には月経前気分不快障害(PMDD)として区別されています。

自分でコントロールできない怒り・感情・抑うつなどにより社会生活や人間関係に支障をきたす深刻な症状が、月経前気分不快障害です。

月経前症候群(PMS)と上手く付き合うために

日常生活で気をつけることを教えてください。

月経前症候群と診断された場合には、病気と上手に付き合っていくことが大切です。日常生活では過度なストレスを溜めないように注意してください。

症状がひどい時にはできる限りハードワークを避けて、心身ともにリラックスすることが大事です。

ハーブティーやアロマなどリラックスできるものを上手に取り入れるのもよいでしょう。ホルモンバランスを整える効果のあるアロマバスやアロマオイルを使うとリラックス効果がより上がります。

食生活でも炭水化物の摂り過ぎや甘いもの・カフェインなど嗜好品の過剰摂取には注意が必要です。食事は栄養バランスを考えて偏りのないようにしてください。

ビタミンB群・カルシウムなどのサプリメントも有効ですが、医師に相談の上取り入れるようにしましょう。

周囲の人はどのようにサポートすべきでしょうか?

月経前症候群の人にとってもっとも辛いことは、自分の症状が周りの人に理解してもらえないことです。

周囲の人も月経前症候群という病気を正しく理解して、症状が少しでも軽減できるようサポートしてください。

症状がひどい時にはできるだけリラックスできる環境を作るなど、さり気ない優しさが必要なのです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

月経前症候群(PMS)は命にかかわる病気ではないことから、自分自身も周りの人も症状を理解しにくく、1人で悩むことの多い病気です。自分で辛いと感じた時には、迷わず医師に相談してください。

少しでも早く症状が安定するための治療法や症状を軽減させる方法があります。決して我慢せずに話して気持ちを軽くすることが大切です。

編集部まとめ


月経のある女性の約7割から8割が、月経の前に何らかの不快な症状を感じるといわれています。

月経前症候群と診断される人はその症状が強い人なのです。1人で辛さを抱え込まずに辛いと感じたら医師に相談してみましょう。

婦人科や心療内科では、低用量ピルをはじめ効果的な薬を併用しながら症状の軽減を目指せます。

女性にとっては毎月のことです。少しでも早く症状が改善される治療を行い、病気と上手に向き合う方法を試しながら明るく過ごすようにしてください。

参考文献

月経前症候群(PMS)とは|済生会

月経前症候群(PMS)|こころみ医学

PMSは病院に行くべきか|EPARK

月経前症候群(PMS)の改善法・治療法・受診の目安|All about