ネット選挙運動解禁に向けて皆で声をあげていこう - One Voiceサミット - BLOGOS編集部
※この記事は2012年06月01日にBLOGOSで公開されたものです
候補者・有権者がもっと自由に政治に参加できる社会作りを目指し、ネット選挙運動解禁を掲げて活動する団体、One Voice Campaignが５月23日、議員会館で「One Voiceサミット」を開催した。日本では公職選挙法により「選挙期間中にインターネットを使った活動を行うこと」が禁止されている。そのため選挙期間に突入すると候補者本人や政党のホームページの更新、Twitterのつぶやきがストップするほか、第三者がネットで言及することも許されていないのが現状だ。次の総選挙までにこの状況をなんとか打開しようと、この日、メディア・アクティビストの津田大介氏をモデレーターに超党派議員７名が集まり、議論を交わした。【取材：BLOGOS編集部 濱田敦子・大谷広太】
鳩山氏が潰したのは普天間の移転問題だけではなかった
司会：まずは、ご登壇の皆さま自己紹介を兼ねた簡単なご挨拶を頂きたいと思います。
遠山：公明党・衆議院議員の遠山清彦です。私は2010年６月に与野党で合意して提出した「まずは政党と候補者に限ってネット選挙運動をできるようにしよう」という公職選挙法改正案の提出者のひとりです。当時の委員会で、私は答弁者として答弁席に座っていました。ところが、鳩山由紀夫首相の辞任劇で委員会が流れ、法律は成立しなかった。今日をきっかけにネット選挙運動解禁に向けた第一歩が実現するよう努力したいと思います。
松田：みんなの党・参議院議員の松田公太です。私は実際に法案に関わったことはありません。ただ、常識的に考えてインターネットを使えないのはおかしいですよね？ 民主主義には、ひとりでも多くの国民から意見を吸いあげ、政治家の考え方や理念を聞いてもらうことが根本にあるはずなのに、選挙にインターネットのような便利なツールを使えないのは、言論統制じゃないかぐらい異常なことと感じています。世界では選挙でネットを使うのは当たり前。日本は残念ながら後進国です。必ず今国会で具体的な法案を提出し、次回の衆議院選挙ではインターネット選挙運動を解禁していきたいと思っています。
世耕：自民党・参議院議員の世耕弘成です。私は解禁に向けた歴史のほとんどに関わっていて、こんなものがライフワークになっていることが残念です。総務省が自治省だった頃に「選挙期間中はホームページを完全に落とせ」と言っていた時期があり、それを法律解釈論争で論破したこともある。
2010年には党内を説得し、迷惑メールや誹謗中傷対策を含めた“ほぼフルスペックの公職選挙法改正案”を国会に提出しました。これで動くはずが、今度は解禁を唱えていた民主党が与党になって慎重になってしまった。そんな中でも、石井さんたちと協力して本人と政党のホームページを解禁する案を各党で合意し、提出するところまでいったんです。ところが、「さぁ審議入りだ」という日に鳩山さんが辞め、国会が不正常なまま閉じられた。鳩山さんが潰したのは、普天間の移転問題だけではなかったわけです。自民党案は少しバージョンアップすれば今も使える法律になっていて、これを軸にすれば今国会で成立可能だと思いますので、がんばって参ります。
石井：民主党・衆議院議員の石井としろうです。今日一番言いたいこと。それは、皆さんに「ネット解禁より他に大事な問題がある」と思っている議員たちを動かすチカラを貸していただきたい。２年前に土壇場でダメになったとき、私も実務者として関わっていました。委員会で「今日やっと通るぞ」というときに、鳩山さんが「辞めます」と言って通らなかった。その後の統一地方選挙では「参議員選挙は全国1000人だけど、地方選挙だと候補者が10～20万。何があるかわからないからやめよう」となり、そのまま今日に至っています。今国会で衆議院が解散する可能性も大いにあり、今回通らなければ次の衆議院選挙も無理だと思います。
今は他の問題で便秘を起こしている。“一票の格差”の問題です。全然関係ないと私も思いますが、これで決まらないのが政治の本質。民主党に対する批判も、「石井ふざけんな」という声もすべてお請けするので、ぜひ皆さんのチカラを貸してください。今回のOne Voice Campaignで“おじさんたち”が動けば、我々“お兄さんとお姉さんたち”が頑張って、なんとか通せると思います。
福島：社民党・参議員議員の福島みずほです。社民党はネット選挙運動解禁に賛成です。世耕さんの話で、昔は選挙期間になったら「ホームページ落とせ」だったのが、選挙の当日までに固定させたものはそのまま表示できるようになったことを思い出しました。だから、今、政治家は「選挙の前日までにインターネットになんでも乗せる」努力をしています。
誰を選ぶかの選挙は、民主主義の基本です。討論や意見表明も積極的であるべきだし、その積極性を維持したまま選挙期間も議論をするべき。政治を遠ざけている要素のひとつに、選挙期間中に候補者の手足を縛ってしまう問題もあでしょう。311で原発事故以降、私はTwitterやメールの情報に助けられました。例えばSPEEDI（緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム）の存在を知ったのも、Twitterです。本当のことを知る意味で、ネットは不可欠。解禁のために、社民党としても、福島みずほとしてもがんばります。
井上：共産党・参議院議員の井上哲士です。私も2年前の参議員選挙の時、ネット選挙解禁各党協議のメンバーでした。最初から全党一致で法案を出して万全の体制をとったのに、鳩山さん辞任という不幸な形で成立しなかった。後一押しというところまでいっておきながら、その後は機運が下がって今日に至っています。去年７月の被災地の選挙で、私は総務省に「被災地から離れている方が、選挙情報を知るのに公報が大事だが届けられない。選挙管理委員会のネットに載せるようにすべきだ」ということを申し上げました。それに対し、総務省は最初「公報は各個人に配布か、新聞折り込みとしか法律に書いてないからできない」と言っていた。ところがその後に総務省が通達を出し、被災地ではネットに掲載することになり、さらに、今では総選挙でもやることになった。つまり、今の法律でも、総務省が姿勢を変えればできることもあるんです。そこも踏まえつつ、同時に法律そのものを変えていくためにがんばっていきます。
津田：どうも、モデレーターをつとめる津田大介です。今日は45分しかないのに、「簡単な挨拶」でもう残り30分ちょい（笑）。ネット選挙運動解禁は国民の総意と言って良いと思いますから、とっとと解禁しましょう。
原田：One Voice Campaignの原田です。今の制度が世の中の仕組みにそぐわない中で、ネット選挙運動解禁は本当に些細なことなのでしょうか？今日はこれだけの皆さんに来ていただいたので、このまま声を発して解禁に持ち込みたいです。
（ここで、遅れて鈴木寛さん登場）
鈴木：遅れてすみません。民主党・参議員議員の鈴木寛です。民主党で以前インターネット選挙制度調査会長をやっていました。ご案内のように一昨年に寸前までいったんですが、成就しませんでした。今日は超党派で集まっておりますので、頑張っていきたいと思います。
司会では、進行を津田さん、原田に移し、ディスカッションを始めたいと思います。
党内手続きがなんとなく進まないのは何故？
津田：ニコ生のコメントでは、さっそく「なんで反対派の議員がいないんだよ。反対派を連れて来い」なんて書かれていて、反対派をどう巻き込むかもポイントですね。誰が反対しているのか、田原総一郎さん風に聞いてみましょうか。「世耕さん、結局誰が悪いんですか？」
世耕：反対派がだいたい言うのは「誹謗中傷で大変なことになる」「お金がかかる」「デジタルデバイドを使えない高齢者をどうする！」といったあたり。私の10年も、この反論にどう答えるか工夫してきたという歴史です。
津田：でも、ネット選挙運動解禁は「ネット情報だけにしよう」という話ではなくて、「今までのやり方と併用しよう」って話ですよね？ ニコ生のコメントは「ローテクの長老議員が反対してるんじゃないか」って言ってますけど。
世耕：反対している人に、カメラの前で言えるような反論があるかと言ったらそうじゃないですね。
津田：ほう。それは、どういうことですか？
世耕：だから、“なんとなく”潰していく。
津田・会場：（笑）
世耕：イヤ、これ本当なんですよ。そんなことが自民党の中でずっと繰り返されてきた。法律を出したいのに、党内手続きが“なんとなく”進められない。選挙制度調査会ではまとまるのに、そこから先の作業が進まない。おそらく民主党が与党になって、同じことが起きていると思います。だから、皆さんにお願いしたいのは、その“なんとなく”を暴き出していただきたい。誰が反対していて、誰がやる気があるのかを表に出してほしいんです。
根詰まり問題と法案成立はトータルパッケージ
遠山：一言よろしいですか？ 犯人探しになっていますが、前向きにこの問題を見ると２年前に１度、全会派が一致してやろうというところまでいったわけですよね？ これは国会の歴史で初めてのことだったんです。私は民主党の執行部が２つ決断すればできると思います。１つはfacebookやSMSがキャリアを超えて送れるようになったなど新しい展開を踏まえつつ、「前回合意したところまでを通す」と決めること。２つ目は“一票の格差”など根詰まりしている問題と切り離し、「ネット選挙解禁を先にやる」と決めること。与党の執行部が決めてから我々野党に呼び掛ければ、早く実現できると思うんですが。
津田：では、与党の石井さんと鈴木さん、民主党は90年代終わりから解禁を主張してきたのに、なんで政権交代したら進まなくなったんですか？
鈴木：いや、民主党は政権を取ってすぐに開かれた通常国会で法案を提出しました。遠山さんがおっしゃった段階までいっていたわけですよ。だから「まずはそこまで通そう」というのは建設的な提案で、その通りだと思います。ただ、ポイントは“根詰まりさせている色々な問題と切り離すこと”が、与野党上層部を突きあげてやれるかどうか。国対ベースで解決を考えると、問題と切り離してくれるのかなぁと疑心暗鬼なところがある。やっぱり問題と「通すこと」はトータルパッケージでやらざるを得ないんじゃないかと。
例えば、参議院で僕が昔委員長をやっていた倫選特（政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会）の公正法改正の審議などでは、「どの項目からやるか順番をあげてください」という話になる。そのときに、「ひっかかっている問題と切り離して」と言うと、「本当にお前は野党を説得してきたのか？」と詰められる。だから、“問題とセットで打ち出せる作戦”を練りたい。今日集まったのはそういうことだと思うんですが。
遠山：でも、議員定数や一票の格差は、与野党合意が未だにありませんよ？「合意をしたところは切り離して優先順位をあげよう。合意してないところは議論を続けよう」という風に、まず与党の中で整理してから、「こういう論理でどうですか？」と野党に呼び掛けてもらいたい。それを国対委員長、政調会長、幹事長というレベルで合意してもらえばいいんですよ。
ネットは意地悪！だからメンタルの弱い議員が反対する
津田：いや～、「国対」という言葉がネット視聴者に非常に評判悪いですね。UstとTwitterとニコ生のコメントを見ていますが、「結局誰が悪いのかわからない」のと、「政局理論で止まる」ことに対して不満の声が多い。
石井：さっき反対している人は“ローテクなおじいさんだ”みたいなコメントがありましたが、それは事実じゃないです。ローテクなおじいさんは「なんとなくイヤ」だけど、積極的に反対するわけじゃありません。本当にイヤがっている人は、性格上の問題で……。
津田：性格？
石井：はい。要するに自分に対するネットの書き込みを見て、ふさぎこんでしまうような人です。
津田：（笑）その人、ニコ生とか絶対に見られないですね。
石井：これは極めて重要ですよ。原口さんと長妻さんに話したら「そんなこと言ってたら、僕らは何回も自殺しなくちゃならないね」と言っていました。私も「YAHOO！みんなの政治」の私に対する書き込みを見ると寝込みます。鈴木さんや世耕さんは、もっと寝込みますね。
私は党の中でもネット選挙運動に関して最大の推進派です。でも、ネットメディアに対して政治家が思っているのは…… あ～、これ言ったらまた明日から寝込むことになるかもしれない……。「ネットの意地悪な部分が強く出ている」という仮説はあります。もちろん我々がへたれだから意地悪なことを言われても仕方ないのですが、一方で名誉棄損にあたるような場合もある。「訴訟を起こせばいいだろう」と言いますが、起こしたときには選挙の投票が終わっているかもしれない。もちろんテクニカルに潰す努力はするとして、皆さんが今日ここに足を運んでくださったような前向きなエネルギーを、ネットでも広げてほしいのです。心で思っているかはさておき、例えば知っている議員に「最近いい活動していますね」とメールしたら、コロっと「賛成」するかも知れません。
鈴木：“ローテクおやじ”は金を持っていて、いいところに発注できるから、いいホームページを作っていますよ。学生に頼んでいる僕なんかのところより、よっぽど。
国対議論は避けて通れない
鈴木：国対議論がイヤなのはわかりますが、じゃあ、それを崩すにはどうしたらいいか。ネット選挙運動解禁のプライオリティを「国会で決めるべきこと」として、国民・世論、マスメディア、ネットメディアも含めて全てでNO１にする。そうなれば、この問題は動きます！ 毎日のようにネットやメールやSNSで生の声を見ている人と、新聞やテレビの見出しを見て、それが世論だと思っている政治家の２種類がいて、「後者の方が基本的に国会の政治や法案審査の順番のプライオリティを決めている」という政治情勢を理解していただきたい。実現しようと思ったら、そこを理解して一緒に考えてほしいです。
津田：福島さんは、鳩山さんとのゴタゴタがあるまで“政権の中”にいたじゃないですか。この話を聞いてどうですか？
福島：超党派で全会一致して法案を出そうというときは、皆で内容を詰めたので……
津田：そこまでは異論はなかったんですね。
福島：なかったですね。議員立法として出したので、政権でどうというのは議論になっていなかったです。全会一致で１度案を国会に出したわけじゃないですか?「２年の間にfacebookなどができたから対策を」というのはわかるんですが、その時の案を出発点としたほうが、ゼロから作り直したり、抜本的に変えたりするよりいいと思うんです。
津田：2010年５月に出たものをまず通そうということですね。
福島：もちろん議員立法だから、「ここを直そう」っていうのはあっていいんですよ？でも、重要なのは「どの党も一致している案」ということ。ここにいる政党はどこも賛成しているから、反対できないんですよ。
井上：あの時はとにかく目前の参議院選までに解禁しようと集まりました。でもダメになった後、地方選挙はあったけれど、国政選挙がなかったこともあって、せっかく１度あそこまでいきながら超党派で集まったことがないという認識です。日々いろんな問題が起こる中で、国政選挙はまだ先だという思いがあり、我々の中で優先順位が下がっていたのは事実ですよね。国民からも歳費の問題などについてはたくさんメールがきますが、ネット選挙運動解禁についてはダウンしている。それも、盛り上がらないひとつの要因だと思います。だから、「皆が参加できる選挙の在り方に各党が応えられるか、とても重要なんだ」という声があがれば、色々変わっていくと思うんですよ。政治家はもちろん、そういう大波を国民と皆で作っていければ、１度通しているんだし、本来そんな困難はないはずなんです。
セーフティネットをどうするか
津田：しかし、止まってしまっている現実。松田さんは、どうですか？
松田：前回合意できている案をまず通そうという話ですが、その当時にいなかったのは私だけなので反論を。当時の法案を見ると、候補者本人や政党はある程度解禁されますが、残念ながら一般市民は全く参加できない、解禁できていない案ですよね。私はこのまま通しても意味がないんじゃないかと思います。
津田：僕もそう思いますね。世耕さんからすれば、一種、自民党案からの後退、妥協案ですよね？
世耕：あれは「もう会期が閉じちゃうし、参議院は解散制度じゃないから夏に必ず選挙がある」という状況で、緊急避難的に「少しでもいいから解禁を！」という思いで合意した案です。その後の２年でネットの利用はだいぶ拡大しているので、自民党案をベースにしたほうがいい。別に党利党略じゃなくて、自民党案はほぼフルスペックで解禁にしている。これを基本にfacebookやクラウドサービスなど新しい動きを踏まえてもらった方が、話が早いでしょう。
津田：facebookはフィリピンの大統領などもやっていますね。大統領が毎日書きこみをして、それが掲示板状態になって。結構批判的なことも含めてどんどん書き込まれています。
世耕：自民党案をスタート台に、facebookの解禁まで議論をもっていこうとするのが大事ですよ。
津田：でも、この政局状況でそのラインまで今国会であげられると思いますか？
遠山：与野党で実務者協議会を再度立ち上げて、議論の場を作れば物理的には可能です。ただ、第三者の解禁や、SNSなどの新しい要素については難しい問題です。不特定多数が見ている場で言論的につるしあげられた場合にどう救済するか。選挙ですからね。結果が伴うわけですよ。例えば、根も葉もない噂が不特定多数が見られる場所に書きこまれたとする。後に裁判で訴えて名誉回復できたとしても、その前に投票日が来て落ちてしまったら取り返しがつきません。
津田：世耕さんは２年前の自民党案で、「プロバイダー責任制限法の期間を短くして、すぐ削除要請を出すことで対処できないか」とおっしゃっていましたよね。
世耕：ネットに変なことを書き込まれて被害者からクレームが入った場合、プロバイダーは書き込んだ人に「消去要請がありましたがどうですか？」と聞き、７日間たっても返事なかったら、勝手に消去しても責任を追及されないという法律があります。あるんですが、７日間では衆議院12日間の選挙では遅すぎる。だから、２日間返事がなかったら消せるようにするという誹謗中傷対策を案に入れています。
津田：石井さんはもうちょっと優しい声をかけてくれと言っていましたが、ネットでは無理ですよ。政治家はそれを受け止めた上で、情報発信しなくちゃいけない。ただ、ネットで組織的に落選運動をやられたり、「お金がない議員が安いサーバーを使って、アタック攻撃されてページを落とされたりしたらどうするんだ？」ってのは、わかりますね。そういう実務的な懸念はあります？
鈴木：ちょっと待って。“あるべき論”と、“今国会でなんとしても通す”ことが、ごっちゃになってきた。僕だって世耕さんとやってきたから、当然その時の最先端のプラットフォームやサービスを使えるようにしたほうがいいと思います。もちろん可能な範囲であらゆるチャンスを捉えて、いけるところまでもっていこうとも思っている。ただ、ただですよ！ 繰り返しになるんだけど、“法律を通す”ことを優先していくと……。
福島：鈴木さんが“あるべき論”と“今国会で通すこと”を峻別されましたよね。私は今国会で通すとしたら、これから一番理想形を追求するところから始めると、来年７月の参議院選挙、衆議院選挙に間に合わないと思います。だから、まず１歩を踏み出したらどうかと思うんですよ。
選挙についてネットに書くのはNGと
どれほどの一般人が知っているのか
津田：それはそうですが、さっき松田さんがおっしゃったことは大事ですよね。2010年のあの案だと議員はTwitterができない。議論のときにTwitterで一番話したいわけじゃないですか。普段Twitterで話をしているのに、それが選挙になるとどこまで許されるのかわからない。ユーザーだってUstとかニコ生とか、そこにつくコメントを見て投票行動を決めたいのに、「それが解禁になってないの？」っていう気持ち悪い中で進んでいくわけですよね。
福島：もちろん２年前の案から１歩も前進しちゃいけないというわけじゃないんです。
津田：ただ、あれをスタートラインに合意できたとして、果たしてそこから徐々に解禁されていくのかと思うと、それは難しいと思うんですが。
遠山：僕はゆるくなっていくと思うんですよ。ただ、そのときの問題点は、意図的に特定の政治家・候補者を落とすとか受からせるとか、“第三者が意図的に度を超えてやった場合”にどうするかということ。それと、通常の政治活動では既に皆さん、コメントなど自由にやっている。そこをわざわざ法に書く必要があるかどうかという議論もあります。
井上：実際に総務省が、“第三者の書き込み”に対して取り締まっているかというと、そうではないですね。多くの人は「メールやfacebookで選挙のこと書いたらいけない」なんて知らないから、実態はやり放題ですよね。
議員一同：（うなずく）
声をあげ続けること。それが賛成議員を応援することになる
津田：自民党の２日で削除案も、プロバイダーとかホスティング業者が大量に来た場合に対処できるのかという懸念もありますね。話は変わりますが、今日、議員会館に集まった人や、ニコ生やUstで番組を見ている人が、ネット選挙運動解禁を応援するにはどんなアクションをしたらいいでしょうか？ どうしたら、登壇者の皆さんや、ほかの議員を後押しできるか、具体的な方法を知りたいと思うんですが。
松田：Time's誌が毎年12月に発表する「Person of the year（今年の人）」を知っていますか？ アメリカでは非常に人気がある賞で、例えばオバマ大統領だったり、facebookの創業者が選ばれたりするんですが、去年誰がなったかと言うと「プロテスター（主張する人）」が選ばれたんですよ。写真にはチュニジアのジャスミン革命をイメージする女性が使われていて、これを見て「非常に大きなことをTimeは表現したんだな」と思ったんです。つまり、みんなの声が高まれば、必ずチェンジをもたらすことができる！ せっかくネットという大きなツールを手に入れることができたので、皆さんにお願いしたいのは、「第三者も参加できるカタチで解禁しよう！」と声をあげ続けてほしい。
津田：具体的に声をあげるのはもちろんですし、One Voice Campaignに賛同するのもいい。これ自体がまさに若者主体でやろうって動きですね。
原田：今日はOne Voice Campaignということで、これだけ人が集まってくれました。facebookのイイネがたった２週間で、間もなく自民党のイイネ数を抜くというところまで来ています。
会場：拍手＆笑
原田：声をあげればいいと松田さんがおっしゃいましたが、どういう風に声をあげたらいいですか？本当にイイネだけでいいのか、電話やメールをすればいいのか。具体的に教えていただければ、ぼくたちは動きますよ。
石井：やっぱり政治は“声のチカラ”で動かしていかなければならないと思うんです。今やほとんどの議員がTwitterをやっているし、少なくともブログで意見公表をして、メールで意見を受け付けている。ネットの世論は議員にとって無視できないものになっています。是非そのパワーで各議員に迫っていただきたい。皆さんがそれぞれの議員のTwitterやfacebookに呼び掛けて、賛成なのか反対なのか、党の会議でどういう発言をするのかキチッと意見表明をさせて、公開の場で議員それぞれのネット解禁に対するスタンスを明らかにしていく。これが、一番のチカラになると思います。
津田：議員によって違うと思いますが、何が一番効くんでしょう？ 電話？メール？ それともTwitterでリプライ？
遠山：私の場合はiPhoneで事務所に来るメールを全て見ています。でも、さっき井上さんもおっしゃっていましたが、ネット選挙運動解禁のメールって皆さんが思うほど多くないんですよ。それが日常的に増えれば、心理的に効くと思います。
ネット選挙解禁に積極的じゃない政治家は、「本当にネットを重視して投票行動を決めるの？」と思っている。新聞の調査を見ていると、参考にしているメディアは１番がテレビで、２番目が新聞で、そのあとラジオ。ネットの地位に疑念を持っている政治家が多いから、「それは違う」と言っていかないと。
津田：遠山さん自身はどうですか？ 遠山さんの中でのネットの地位は？
遠山：まぁ～、テレビ、新聞の後ぐらいじゃないですかね？ それが、印象としてあるんですよね。
津田：なるほど
福島：脱原発の話で例えましたが、巨大メディアと違う言説や情報がインターネットに出てくることもあるじゃないですか。社民党の幹事長だったとき、私が出したものじゃない文書がネットに出たことがあるんです。社民党の党首や幹事長の名前で出ちゃうと大変で、プロバイダーに削除してもらうのにヒーヒーだったんですね。だから石井さんと似ていますが、インターネットが意地悪メディアではなくて、韓国などのように“民主主義のツールなんだ”という雰囲気がもっと出てくるといいなと思っています。もうひとつは、新聞など活字メディアで「インターネット選挙しよう」などと報道されると、活字しか見ない国会議員も「なるほど」って思うんじゃないかと思います。
解禁されなくても来年は赤信号を渡ろう
石井：あとは、津田さんを始めここにいる皆さんは法案が通らなかった場合も、次の選挙で“赤信号”を渡られると思うですが……
津田：そういう意味では、“総務省の解釈次第”なところがあるじゃないですか。総務省がなんと言おうと、各党そろっている解禁派の議員の皆さんが勝手に更新を始めて、なし崩しに進めていくのもありなんじゃないですか？
鈴木：僕は来年やりますよ！
会場：拍手＆笑
石井：鈴木さんは、勇気があるなぁ。
議員全員のアンケートで賛否をはっきりさせてほしい
津田：（笑）質問にうつりましょうか。
原田：会場から「議員全員へのアンケートで賛否を明らかにしたらどうなのか」という意見が来ています。これは僕たちが先週１度やりましたが、両議院で60名程度しか回答が来なかった。ここにいる議員の皆さんから、周りの議員に語りかけて見解を出すなどしていただければ、この会場の人も１万人の視聴者も、賛成議員をどんどん後押しすると思うんですが、いかがでしょう？
福島：国会には実にたくさんのアンケートが来るんですよ。今60人と聞いて「私も出したかしら？」って心配になりました。とんでもない数がきますが、私が党首として「全員やってね」と言ったり、各党で声かけ運動をすれば、回答率はあがると思います。もしくは、「回答ください」って市民団体から連絡をするとか。悪気があって答えないのではなく、ただ紛れてしまっている場合もあるので、それは党の中でも声かけの努力をしたいと思います。
松田：是非あきらめずにアンケートを続けてほしいと思いますね。送り続けて、送り続けて。そして、回答していただけない議員はこの方ですっていうのを、どこか表で開示していただいて。
津田：僕やりましたよ。2009年頃、東京選挙区だけですけど全員に送って。そのときは７割ぐらい賛成でしたね。
井上：回答した60人って、賛成の人ばっかりでしょ？ 関心のある人は答えるけど、関心のない人は無視を続ける。関心のない人は紙メディアを見るから、FAXでアンケート結果を送るなどしたらどうだろう。ネットと紙と両方やることが大事だと思いますね。
新しいコミュニケーションサービスにどう対応する？
津田：もうひとつ質問で、「Twitterやfacebookなど新しいコミュニケーションサービスで議論していますが、更に新しいサービスが出てきたらどうするんですか？」というのが来ています。法律にサービス名を書くわけじゃないので、大丈夫だと思いますけど。
遠山：去年の７月ぐらいから、ショートメッセージ（SMS）をキャリアを超えて送れるようになりましたよね。アメリカではこれを使ったマーケティングが発達しています。日本は未発達ですが、相手の電話番号だけで送れてしまうので、2年前に想定しなかった攻撃ができる。ある人が私になり済まし、投票日前日に不特定多数の100万人に「遠山に投票お願いします」とメールしたら、それ自体が迷惑メールとなって私の票を簡単に落とせます。こういうものに対して技術的対処や、「新しい法律を作らないと」というのはありますね。
世耕：今だって迷惑メールには困っているので、メールにはある一定の制限が必要だと思います。でも、他のweb上の新サービスは制限ができない。「Twitterはダメ」って前から言われているけど、法律には書けなかったんですよ。今って自主規制ですよね。だから、新しいサービスに関してWeb上で展開されるものはどうしょうもないところがあるので、淡々とやっていけばいいんだろうと思います。
解禁したら選挙は変わる？
津田：もうひとつ質問です。「ネット利用が解禁されたとき、選挙活動はどう変わっていくと思いますか？ 現時点で計画されている活動があれば教えてください」と。正直、ぼくそんなに変わると思わないですけど。
世耕：一番やりたいのは演説会の告知ですね。今は後援会の口コミでしか伝えられないけれど、「こういう演説会をやりますから来てください」ってネットで言えたらいいなぁ。特に大物が応援に来てくれるときは人も集まりやすいし、選挙運動を活性化させることができると思います。
津田：ぼくは政治家が「そういうものはTwitterでお知らせする代わりに、選挙カーの名前連呼やめます」って政治家が約束したら、票が増えると思いますよ。
鈴木：ぼくは来年、やりますけどね！
会場：拍手＆笑
鈴木：大物告知もそうだけど、選挙ってだんだん盛り上がってきた選挙最終週の水曜日ぐらいから、ようやくみんな意見を聞いてみようかなとなるわけですよ。その時に、世の中に任せると不正確な理解がどんどん伝わってしまうから、ちゃんと自分で伝えたいという思いがある。最後の水木金土なんて、朝６時から夜の20時まで街頭演説に出ずっぱり。だけど、解禁されれば、意見と向き合って１つ１つに答えるなんてこともできる。
津田：政権放送だけじゃなく、いろんな議員の意見を24時間ずっとUstやニコ生で見ることができたらいいですよね。
鈴木：なんでもいいから色んなメディアで拡散されて、意見がフィードバックされていくっていう状況に早くしたいですね。
どうかネット選挙運動解禁が大事な話だと広めてほしい
津田：時間もなくなってきたので、最後におひとりずつこの問題に対して「こういう風に関わっていきます」というのを、できるだけ具体的に、公約的にお話していただけますか？ じゃあ、井上さんから。
井上：私は参議院の国対委員長であり、政治倫理の特別委員会のメンバーでもあります。まずは前回の実務者会議をやったメンバーで１度集まるというのがいい。そしたら直ちに馳せ参じますので、是非お願いしたいと思います。
福島：今、井上さんが国対がとおっしゃっていましたが、私は党首なので、文句を言わせず（笑）、党をまとめてちゃんとやっていきます。後は超党派で実務者会議を始めるのが第一歩で、そこで内容をどうするかきっちり議論していきたいですね。
鈴木：アンケート回答人数が60人っていうこの数字が一番、現状を物語っていると思うんです。TPP反対署名だと一夜にして720人中300人の反対署名が集まるわけですよ。それが60というのが、この問題に対するパワーなんでしょう。それをどうしたら300にできるか。361になれば、この問題は動くんです。
何が効くのかとの質問がありましたが、議員の部屋に署名を集めに来るのも効きます。もう１つは、この世で一番チカラをもっているのは、残念ながら政治家ではなくタケシさんと、みのもんたさんなんです。彼らの発言は2000万人とか3000万人がリアルタイムで見ていて、それに対して賛成だとか反対だとかいうわけです。メディアももちろんですが、ここに集まっている皆さんが声をあげて、2000万とか3000万という数字を動かせるかっていうことですよね。おじいちゃんやおばあちゃんや家族、友達、地域の人に、「これは大事な話なんだ」ってことを知らせて。少なくとも今国会とか来国会ぐらいは強い影響力をもっている世論調査で、ネット解禁について調査してもらうのもいい。その上で、圧倒的な多数がやるべきだっていう数字を示すために、使ってない人を含めて巻き込んでいく。これを僕らと連動してやっていきたい。
津田：まあ、みのさんは無理でしょうけど、ハイテク好きな小倉さんだったら引き込めるかもしれませんね。ネットの人たちは小倉さんをたたかないで（笑）、「ネット運動解禁やりましょう」っていいましょう。石井さんは？
石井：私は衆議院の委員会の理事で最前線にいますから、通すために最大限努力します。通ったら「あいつは通した」と、通らなかったら「あいつはダメだった」と、どうぞ炎上していただく勢いで見ててください。冒頭で世耕さんもおっしゃいましたけど、僕もいい加減この問題から卒業したいんですよ。
津田：今日の会の中で、僕は石井さんの「反対する議員は、性格的な問題」っていう発言は、目からうろこでしたね。世耕さんは？
世耕：私は各党協議会を前回のメンバーで立ち上げて、それを党に持ち帰ってしっかり議論することを確実にお約束したいと思います。あとは、このOne Voice Campaignのチカラがほしいですね。ネット運動推進協議会かなんか作って、このひな壇にみんながビビるような有名人をズラっと並べる。場合によっては津田さんのTwitterで、アンケートに答えない議員をつるしあげるとか、そういう暴力的なことも含めてやってですね……。
議員一同：いやいや、逆効果、逆効果（笑）
世耕：（笑）いや、ただ一覧を表示するだけですよ？ そういった形で皆さんのチカラを示していただきたいと思います。そうすれば、必ず動くと思います。
全党協議会を開いてください！
津田：今このOne Voice Campaignスタッフの江口君が、Twitterで「全党協議会を開くことを、約束してください」とつぶやいたんですが、皆さん大丈夫ですか？
石井：……それだけの権限を私がもてるかわかりませんけれども。
津田：みなさん、そういうときは「ハイ」っていったほうがいいですよ。
議員一同：「ハイ」
会場：拍手＆笑
津田：おお、拍手が起こりましたね。では、松田さん。
松田：私は目標が明確じゃないとイヤな性格なものですから、全党協議会からさらに１歩踏み込んで、何月何日までには出すと。このぐらい決めてしまったらいいと思うんですけど、どうでしょうか？
会場：拍手
松田：私はすぐに動けますので、何月何日というのを最大勢力の民主党と自民党さんから公言をいただければと思うんですが。
石井：私は慎重な性格なんで申し上げますが、まず一票の格差を近日中に解決をします。さっき締め切りを作ってと言いましたが、近日中にこの問題がまず料理をされる日が来ると信じて、「過急的速やかに、暑い夏ぐらいまでに」という言い方ではまずいですか？（笑）ただ、この通常国会で最大限の努力をさせていただきたいと思います。
世耕：自民党は法案を用意して、２年前に１度党内手続きを終えていますから。その法案をベースにしっかりやっていきます。いつでも出せる状況ですから、大丈夫だと思います。
津田：“フルスペックでのネット選挙運動解禁”を是非実現してください。
遠山：松田さんが期日とおっしゃっていますが、国会が延長されるかどうかでだいぶ違いますよね。現実的に、今国会の最後までになんとか出すということで目標はいいじゃないですか？
津田：出たら通りますか？
遠山：それはそのときです。とにかく出す！先ほどネットの地位はテレビと新聞の次だと言いましたが、一方で、テレビや新聞って一方通行のメディアですよね。対してTwitterやfacebookなどのSNSは、双方向のクチコミメディア。「マスコミで負けたら、口コミで勝て」を、我々政治家は選挙のときの合言葉にしていますので、そういう観点からいくとSNSは、双方向のクチコミツールとして最強なんです。誰でも安いコストで参加できるし、日本の民主主義の発展にプラスにだと思っています。今日話した内容は、SNSをフルスペックでという点までなかなか到達しない議論だったかもしれませんが、そこを最終目標にして我々でがんばっていく。その流れの中で、私も役割を果たしていきたいという決意を申し上げて、最後のご挨拶とします。
暑い夏ごろまでに第２回サミットを
津田：今日のTwitterもニコ生もコメントが面白いので、皆さんもぜひ後で見直してほしい。例えば今日、遠山さんはiPhoneを持っていて、メールをすれば100％見てくれることがわかりました。こういうことを可視化していくことがとても大事だと思うんです。
原田：各党の議員さんが今国会でどんどん活動すると聞いたので、ぼくらOne Voice Campaignも皆さんと一緒に盛り上げていきたいと思います。暑い夏ごろまでに、この会の第２回目をもっと大きな規模でやるので、その時までの進み具合を見せてください。ここにいる賛成している皆や、議員を応援している皆が「やってないじゃないか」となるのが一番よくない。このキャンペーンを通じて「やろう、やろう」となるようにがんばりましょう。
津田：One Voice CampaignはWebサイトがしっかりしているので、これに賛同議員リストみたいのを作って、どの議員がこの問題について今何をやっているかのステータスを可視化したらいいじゃない？ もしやったらキラーコンテンツになると思いますよ。
原田：わかりました。では、そのあたりも事務局の方から週に１回くらい議員の皆さんの元へ連絡がいくかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。「今週は忙しかったのでこれしかやっていません」でもいいので、進み具合をお伝えください。
津田：議論を煮詰めることはできなかったですけど、今日は第１回目として進むきかっけになったと思います。次につなげて、多くの議員を巻き込んで、当たり前のことが、当たり前のように解禁されていくように。ぼくらがネットを通じて政治に興味がわくような環境にしたいと思います。
司会：ご登壇いただきました議員のみなさん、津田さんありがとうございました。
会場：拍手
