「こども子育て新システム」は日本の運命を決める法案【後編】 - BLOGOS編集部
※この記事は2012年05月28日にBLOGOSで公開されたものです
ニコニコ生放送とBLOGOSがタッグを組んでお送りしている「ニコ生×BLOGOS」第８回のテーマは「こども子育て新システムって結局どうなんですか？」
近頃、メディアで多く報道される待機児童問題。具体的な解決策が見出せない中で、政府が今国会に提出したのが「子ども・子育て新システム」の関連法案。
待機児童問題の解決や子育て支援が目的の法案ですが、そのシステムが非常にわかりにくく、世間への浸透度が薄いと問題だらけ。必要性と問題点を徹底討論した後編になります。
※前編はコチラ→http://blogos.com/article/39955/
【出演】
司会：大谷広太（BLOGOS編集長）
アナウンサー：小口絵理子
コメンテイター：須田慎一郎（経済ジャーナリスト）
ゲスト：泉健太（民主党・衆議院議員）
田村憲久（自民党・衆議院議員）
高木美智代（公明党・衆議院議員）
駒崎弘樹（NPO法人フローレンス代表理事）
日本の公的支出は高齢者に偏りすぎ
駒崎：さきほど財源の話がありましたが、これはすごく重要な点です。日本の公的支出に占める家族や子供と高齢者の割合って、あまり知られていないのですが、子供１に対して高齢者１１なのです。非常に高齢者に寄った体系になっており、これは先進諸国と比べてみても、日本がバランスの悪さでは最悪です。小口：須田さん、やっぱりそれは投票権を持っている、持っていないといったことが影響しているんですか？
須田：やっぱり自民公明の旧政権時代に、そういう中高年以上の層が地盤になっていましたよね。ある意味、自民党っていうのは、そっちのほうにむかって政策をアピールしてきたわけです。
駒崎：誰が悪いという議論はおいといて。とにかく１対１１っていうバランスの悪さを改善しないといけませんね。それを今回、消費税をあげて財源を確保し、子供に投資していこうという点は「こども子育て新システム」のいいところだと思います。では、この財源をいかに使っていくかという点では、もっと考えていかないといけないと思いますが。少なくとも、子供たち、そして働く親たちに対して、きちんと投資していこうというのは、どの議員さんも反対しないと思いますけどね。
大谷：まだまだ足りないところはありますか？
田村：子供たちに使うお金というのは、まだまだ必要だと思いますね。ただね、さっきもいいましたとおり、我々は、幼稚園は幼稚園でいいじゃないですかと。保育園は保育園でいい。待機児童を減らすなら保育園でいいんですよ。ただ、幼稚園が維持できないというんであれば、それなら認定保育園になって、保育園型になっていけばいいだけの話であって。そこがいままで使い勝手が悪いのであれば、認定こども園をもっと使い勝手をよくすれば早いじゃないですかと。こんな全部変えちゃって。施設側もわけわかんない！使う親御さんもわけわかんないっていう状況よりかは、ちゃんと手直しして動かしたほうが、よっぽどリーズナブルじゃないかと、我々は言ってるんです。
須田：まあ、リーズナブルという点では、自民党の田村さんの意見のほうに軍配があがるんですけど、それはダメなんですか？
泉：結局ね、今おっしゃっていることは「現状のままでいいじゃないか」と「やるんだったらトコトンやれ」って言っているのか、ちょっとわからないところがあって。待機児童が解消されるなら、幼稚園に０歳から２歳までの子供を入れるように義務化したらいいじゃないか・・・っていうわけですよ。でも一方では、やりすぎはよくないっていう。結局、どんな改革をしたら自民党さんは納得するのか。それがよくわからない。
田村：そんなことは言ってないんですよ！だから言ってるでしょ！幼稚園を求める親御さんもいるんです。だから、幼稚園はそのままでいいじゃないですか！このままじゃ枠が空いちゃって、幼稚園が運営できないというところは・・・
泉：幼稚園が総合こども園になりたいって言っているんであれば、それでいいんじゃないですか。
田村：認定こども園になればいいんじゃないですか？
泉：認定こども園になるのもいいけど、総合こども園になるのもあまり変わらないですよね。
田村：総合こども園と認定こども園は違いますよ。
泉：どんなところが？
田村：例えば、総合こども園っていうのは、最後は０歳から２歳の子供を預けさせるんでしょ？
泉：いやいや、そんな制度にあってないですよ、今は。
田村：元はそうだよ！
泉：元は・・・という話ではなくて「今は」という話をしているんです。
田村：だからそれは、将来、０歳から２歳までの子供を預けてくださいという方向の中で、今は３歳以上でいいですよっていう話じゃないですか？
泉：いやだから、今は今ですよ。
田村：今はいいですけど、そういう幼稚園の将来は・・・
（収拾がつかなくなり、須田さんが場をおさめる）
須田：これ議論していても、、、
小口：駒崎さんちょっといいですか（笑）
駒崎：まあ、両党とも子供にとっていいシステムを作ろうと、ちゃんと財源を確保して運営していこうというのは、同意できると思います。幼保一体化のところは、議論があると思うので、そこは話し合っていただくにせよ、自民党さんがね、例えばもう「こども子育て新システム」の一部である幼保一体化がダメだから、この法案の全てをつぶそうということだったら、ちょっとおかしいかなって思うんです。だって、70年変わらず続いている保育制度を改革するために一歩でも二歩でも進めなきゃいけないんだから、何らかの合意と妥協をして、前に進めていかないといけないと思うんです。
須田：そういう点で、ぜひ駒崎さんに伺いたいんですけど、今１番解決しなきゃいけない問題ってなんですか？
駒崎：やっぱり待機児童の問題ですね。８５万人の潜在待機児童がいる状況を放置するというのは、先進国として、文明国として、我が国の将来を考えた上で絶対にいけない。これはなんとしてでも解決しなくてはいけない。だから、そこは手を抜いてはいけないと思います。
高木：全く同じ意見です。ですから、今お話があったように、まず待機児童を解消する。そのためにさっきお話があった「地域型保育」っていうのが今回入っています。それは駒崎さんがやってらっしゃるような「おうち保育所」とか「保育ママさん」とかをきちんと拡充するとか。あと妊婦健診もちゃんとその中に入れて、責任をもってやるとか。
田村：大賛成！
高木：そういうのが一時預かりだと。また家庭で育ててらっしゃるお母さんたちが孤立しないように、地域子育て支援センターなどに行く。幼稚園や保育所に併設されていますから、そこで保育士さんたちから教わりながら、そしてなにかイベントがあったら一緒に参加するとか。そういうものが今回盛り込まれているので、私はこれをどうしても前に進めなければいけないと思っています。
須田：そうすると、与野党で一致したのは、待機児童を減らすっていうのは最優先課題です。これは一致しているということですね？
高木：そうです。
田村：ただし、待機児童の減らし方は一致していないかもわかりません。どうやって減らすのかっていう部分ですよね。
情報開示義務で保育が変わる
大谷：小規模保育って話もあると思うんですけど。今の幼稚園とか保育園とは、また別の小規模なサービスができるように・・・っていうのは今回盛り込まれていて。そこでいうと“新規参入”って話がありますよね。これまでの学校法人とか公益法人とかではなくて、企業の参加を促すっていう話が出ていますけれども、それについてはいかがですか？
駒崎：これまでの認可保育園は、社会福祉法人というちょっと特殊な法人が担うという形になっていました。その法人格によって、ある種の参入障壁が存在していたわけです。その参入障壁をなんとか緩和していこうという動きが自公政権時代からありまして。一部株式会社といった、社会福祉法人ではない法人でも保育所が運営できるようになってきましたが、まだまだ基本的には社会福祉法人がメインになっているわけです。でも、社会福祉法人ってそんなに多数があるわけでもないから、保育所を運営したいという組織があるのだったら、株式会社でもNPOでも参入できるようにしようというのがこの新システム。参入者が増えることにより、ドンドン保育園の供給が増えて行くだろうという考えです。そして、それに伴い保育園の間で「質」の競争というのもでてきてしまうねとも言われています。ただ「質」で競争する分には利用者の視点に立てば良いことなのでは・・・という意見もあるから、そこは議論すればいいかなと思いますね。
田村：ちょっとね、論点が色々あってですね。今回のこども園は不思議な制度になっているんですね。それは「総合こども園」っていう、今いった保育所だとか、幼稚園だとか、株式会社も入ってくる。ただし、これは認可なんです。今までの保育所だとか幼稚園と同じ「認可制度」なんです。結構チェックが入ります。ある意味、恣意的に「ここはちょっとおかしな所だな」と思ったら、認可にしないようにできるんです。だからそういう意味では、ある程度「質」は担保できると思います。
大谷：そのチェックはどこが？
田村：自治体がやるんですけど。ただ、問題なのは、それとは別にもう１つこども園があるんです。これは、総合こども園じゃないこども園。つまり、認可じゃなくて指定だけのこども園っていうのがあるんです。ですから、さっきいいました総合こども園っていうのは、児童福祉施設であり、学校教育施設なんですね。ここに株式会社も入るもんだから、私学側が怒っているんですけどね。学校じゃないのに、学校教育施設やれるのかって。ところがそれでも、これは一応認可されているわけです。しかし、一方で学校教育施設でも、児童福祉施設でもないこども園っていうのがあるんです。
大谷：それはどういった内容のものなんですか？
田村：それは指定さえ受けちゃえば「市町村がやっていいですよ」って認めなきゃいけないこども園。
小口：審査の基準というのがまた違うんですか？
田村：それは外見的な基準さえクリアしていればＯＫ！つまり、事前規制から事後チェックへという意味の規制改革ですよね。で、ここに株式会社やＮＰＯがいっぱい入ってくるから、こども園が増えて、待機児童がなくなるんじゃないかという目算で、もう１つ作っちゃったんです。ところがですね、ここで問題が起こったのは、さっき言った総合こども園っていう認可のほうは、あがった利益を金儲けに使っちゃいけませんよって言っているんです。公金だから。ところが、今言った指定だけのこども園のほうに入ってきた株式会社は、儲かったお金を他の事業につぎ込もうが、何しようが勝手なんですよ。
大谷：ちなみに、駒崎さんのフローレンスは？
駒崎：要は、儲かったらそのお金をどうにでもできるじゃないかということが批判されているのですよね。公金だし、子供をビジネスにするのはいかがなものかという話だと思うのですが。保育士さんの反論としては「だからといっていい保育ができるかもしれない株式会社やＮＰＯを排除したままでいいんですか？」っていうことなんです。それはムダな使い方をしていたり、不適切なお金の使い方をしている組織は、事後チェックを掛けることによって排除されるといった対応が取れる仕組みがあればいいですよね。今回、新システムには「情報開示義務」というものが加えられました。これ非常に重要だと思います。
これまで保育園は情報を開示しなくてもよかったんです。行政に「自分このように運営していますよ」という報告書類をあげていればよかった。しかし情報を公にするのが義務となったので、今、保育士が何人いて、事故を起こしたのか起こしてないのかといったことも、開示しなくてはいけなくなるわけですね。そうなりますと、株式会社だろうが、社会福祉法人だろうが、ちゃんと「良い保育をしなければならない」という圧力がかかるんですね。よくよく考えてみてください。株式会社だから保育の質がダメ、社会福祉法人だから保育の質が高い・・・そんなわけないんです。社会福祉法人でもブラックなところはありますし、いいところはある。株式会社もそれは同じですよね。そういったものを利用者がきちんと選べるように、情報開示していきましょう・・・という制度にしようという話なんだから、その点は、あまり議論を単純化させてしまうと、わからなくなっちゃいますよね。
須田：今まで情報開示でできてなかったこと自体がおかしいですよね。
高木：それで、市町村の話になりますと、ちゃんとやってくれている企業もあるわけです。一方で、苦情ばっかりくる企業もあって。そういった面も現実であるわけです。だからやっぱり現場で一番苦情がくるのは市町村ですから、そこでもう少し監視機能を高めるとか、機能を強化するとか。あとやっぱり公正な評価ができるシステムをちゃんとするとか。それはやっぱり情報開示と合わせて、ちゃんとできればいいんだと思うんですね。
保育の「質」の向上＝保育士の処遇改善
高木：ただやっぱり足りないのは、人件費なんです。運営費のほとんどは人件費ですよね。ですから、この人件費のところで、保育士さんの処遇を下げるのか・・・っていうところはよく見ていかないといけない話だと思います。
須田：でも１兆円だ、７０００億円だって、消費税から使うんですよね。そっちのほうから、お金の配分をすればいいじゃないですか！
田村：その通りなんです。我々は、そちらに使いたいんですが、プランを見るとあまり入ってないんです。
須田：何に使おうとしているんですか？
泉：今、待機児童の問題が大変だと言ってるんです。ですから、今ある幼稚園と今ある保育所がめちゃめちゃ問題だから、この制度を変えなきゃいけないっていう以前に、今「保育」を受けられない子供たちがたくさんいる。で、そこに対して公費を投入しようというのが、今回の改革。だから、小規模保育だとか、枠を広げて・・・っていう話をしているわけです。事業所のない託児所にも、公費を投入しようという話をしているので。それはサービスをもっと広げていくためには、公費（税金）が必要っていうことですから、そこにお金を使わなくてはいけない。
須田：民主党は足元の問題だけを見ているんじゃないですかね。やっぱり１０年、２０年後を見据えて中長期的な視野にたてばね、今言われているようなところにお金を使っていくのは当然の話だと思うんですが。
泉：それは当然です。
須田：だったらなぜ？
泉：実は配置基準は、ここ数十年間、ずっと変わってこなかったわけです。例えば、３人の子供をみるのに、1人の保育士が必要とか、６人の子供をみるのに、２人の保育士が必要とか、年齢別に分かれているわけですけど、その配置基準っていうのは全く変わってこなかったんですね。しかし今回初めて配置基準を変えようかと。
須田：いや、配置基準の問題じゃなくて、保育士の処遇の問題を・・・
泉：いや、これは処遇なの、処遇なの。
田村：須田さん、違うんですよ。処遇じゃないですよ。我々も本当は保育の質を向上するために、保育士の数を増やしたいんだけど、ただでさえ保育士が足らないのに、そんなことやっちゃったら余計保育士が足りなくなっちゃって、結局まわらないですよね。だから、まず保育士の待遇改善できるような単価設定をして、ちゃんとそれを保育所に渡してあげてですね。保育所の給料があがると。そうなると、今、保育資格を持っているにもかかわらず、パートで働いている保育士さんも「私も、保育士として働こう」という気持ちになるんです。だから、それが第一だって、我々は言ってるんですが・・・。
駒崎：今、とてもいい話をされていて、保育士の仕事（地位）をあげようというのは素晴らしいことだと思うですね。今、僕が外から見る限り、「この「子ども子育て新システム」はけしからん仕組みだから潰してしまおう」という風に見てしまうと、それはもったいないと思うんですね。せっかく子どもや働く親御さんのための財源が確保されそうなんだから、今おっしゃったような素晴らしいアイディアを入れ込んでいけば、お互いでいい仕組みができるじゃないですか。
田村：でも今の制度でもできますから。
小口：自公時代にもできた？
田村：そうなんです！自公時代にできた話なんです！
泉：だったらやればいいじゃないですか！
田村：やろうという計画で進めていたんですよ。
高木：消費税っていう財源があるから、こういう議論ができるわけです。今までいくら作ろうとしてもお金がなくてできなかった。
田村：そうなんです。
高木：例えば、今ある「認定こども園」これも、地方作業型というのは本当に一般財源化されていて。地方がお金をだして、やっている人たちが身銭を切って機能しているこども園があるわけです。そこの認定こども園も、ちゃんと基準を満たしていれば、市町村は今までお金がなかったから、余計な負担は出したくないから、認可しなかったんですけど、ちゃんとお金があれば認可できるわけです。そういうことは、今の法制度でも確かにできるんです。ただ今お話があった、保育士さんの処遇改善にしても、公立、私立、それ以外は、コストが高いからベテランの保育士さんが雇えないんです。そして若い方たちは研修を受ける暇がない。そこをもう少しきちんと基金なりでお金をつけて、処遇の改善をしていく。「保育の質」ということが今回もたくさんでてきましたが、私もそれは大事な話だと思いますので。「質」の向上のためには、やっぱり保育士さん、教師っていうのが教育の一番の環境ですよね。そこの環境を、ちゃんとしていくというのが大事なことだと思います。
須田：労働力っていうのは、労働マーケットによって決まるわけだから、やっぱり処遇を改善する。あるいは、給料をあげていくってことであれば、人数は当然増えて行くわけですよね。人数が増えれば、それに伴って待機児童も減ってくる。こういう考えではダメなんですか？
泉：その考えは悪くないと思いますよ。待遇がよくなることは誰も批判はしないですよ。我々もそう思っています。ただ一方で、担い手が少ないっていう問題もあるわけですよね。駒崎さんのように新しく頑張る方もいますけれども、やっぱり都市部で社会福祉法人を作ろうと思ったら、１億円ぐらい必要になってくるんですね。ハードルが大分高いので、そういう意味では、株式会社、ＮＰＯのみなさんが入って、新しい小さい規模の保育拠点がいっぱいできていくっていうのは大事ですから。やっぱり両方の人材をいっぱい育てていくことは、何も悪いことじゃない。僕らはそれを全面的に応援したいと思います。あとこれは介護でもそうだったんですけど、多分どの党のみなさんも、処遇改善っていうのはみんな言っているところなので、そこはあまり論点にはならないというか、間違いなくやっていいと思います。
田村：これね、私失敗したのはですね、麻生政権の時、介護の方は処遇改善交付金というのをつけたんですよ。月々１万５０００円とか２万円っていうね。それを保育でもやろうと踏み込んだんですが、その時私は力足らずだった。保育をあの時やっていれば、今もっと保育士さんが起きあがってこられていて、色んな保育所で仕事をされておられたと思うんですよ。あの時の我々の判断というのは、ちょっと失敗だったなあと思っているんですけど。だから、それを今やらないと待機児童の問題は解消できないし、質のいい保育も提供できないという風に思いますね。
駒崎：あとね、事業所側からの観点なのですが、「園」が増えると、どこの園も保育士を欲しがりますね。そうすると、処遇競争というのが行われるんですね。うちの園も、あんまり（処遇が）低すぎると保育士が応募してきてくれないので、ちょっとあげていこうと思いますね。つまり、今の保育園の数って限られていますから、処遇をあげる競争があんまり生じていないんですよ。でも供給が増えることによって、処遇をあげようという競争がでてくることがありますので、質のいい保育につながる効果というのはあると思います。
田村：ただそれは、ちゃんと国の方から「運営費交付金」をあげないと。
駒崎：もちろんそうですよ。
田村：じゃないと、人件費８割ですからね！
駒崎：それもありますが、供給量、つまり保育園の数を増やすというのは、保育士の処遇をあげることに寄与、つまりプラスになりますという話ですよ。
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新システムの目玉「指定制」とは？
田村：一番今問題なのはね「指定制」になること。東京なんかは、待機児童が多いですから、色々な株式会社が申請すれば、ほぼ指定されますからね。保育所を作るわけですよ、こども園を。すると、東京は非常にマーケットとしておいしいですから、保育士を近隣の自治体から連れてくるんですよ。すると、そっちのほうが、保育士が足らなくなっちゃってですよ、待機児童がでてくるという本末転倒の話になっちゃうんですよ。だから私はやはり、保育所・こども園をもし作るというのであれば、保育士をちゃんと開拓してこないと大変なことが起こっちゃうという風に警告しているわけですよ。大谷：今の話題に近い質問がユーザーからもきています。埼玉県と愛知県の女性からですね。「無認可の保育園で保育中の事故により子供が亡くなることがありますよね。昨年だけで１４人にもなります。そのうち認可は２名、認可外が１２名です。新システムでは保育事業への参入の制限がある意味なくなってしまって、行政の責任が後退するんじゃないかという見方もあります。その中で保育の質をどう保っていくのか？そこが不透明な気がしています」ということなんですけれども。
泉：実は児童福祉法２４条っていうのがあるんですけど、ここには「市町村が子供の保育を措置しなければならない」ということが書いてあったんですね。で、今度は「確保を措置しなければならない」という書かれ方になるんですけれど。しなければならないという意味では、両方とも責任は一緒なんですけど、さっきの話にもあったように、今やっぱり都市部では行政が保育所を全部作っていますよね。ドンドンドンドン人が集まってくるんで、行政もお金が足りない。実は国からの予算は余っているんですね、都市部では。「安心子供基金」っていうのがあって、そこに基金を積み立ててですね「保育所を作った場合、出しますよ」って言っているんですけど、使い切られていないんです。ってことは、結局、地方の負担ができない状態になっていて、民間の力を借りなきゃいけない。今回「児童福祉法２４条」をある意味書き換えているんですが「市町村がちゃんと利用者が利用しやすいように手配をするっていうことは変えない」これは国会の本会議の答弁でも言いましたんで。
田村：それはこういうことなんです。今までは、市町村が保育所を開設して設置しなければいけなかったんですよ。でもそれができませんから、これまでは、民間の社会福祉法人に委託していたんですね。これからは、その環境を整えなきゃならないって話ですから、指定をするだけの話になっちゃうんですよ。すると、委託をしているのと、指定をするっていうのは「委託」のほうがよっぽど市町村の義務が重いですよね、それは。だからやっぱり後退になると思いますよ。
泉：ただこれ、今までそれでずーっとできてこなかったわけで、だから今回はね。市町村で計画を作るって言っているわけです。ちゃんとニーズを確かめて、計画を作って、その計画をやっていこうとしているんですね。
田村：今の話で大きな問題は「市町村はお金が無かったからやらなかった」って話ですよね？要するに、国はお金が余っているけど、市町村はお金が無いから保育所を作らなかったっていう話です。これ、指定制になろうが、今回の制度になろうが、やっぱり市町村はお金がないんですよ。負担がありますから。だから結局は、ドンドン作られると市町村はお金が無いから困っちゃうって話になってくるんですよ。つまり問題は解決されないんですよね。
高木：これは深刻な話なんですね。だから「質」をどういう風に確保していくかというのが、もう１つの大きな課題で、特にさきほど「法的責任が後退するんじゃないか」っていう、実に鋭いご指摘の質問なんですが、確かに私はそうなんだと。今回の新システムはそうなっていると言わざるをえないんです。市町村が直接実施するという義務が外れますから、契約するのは利用者が保育園や保育所と直接契約を結ぶわけです。「民」と「民」の契約なんです。だから例えば、事故があった時に、今までだったら保育所であれば国家賠償までできるわけですけど、それがこれからできなくなる。そういう責任の変化というのは、好ましくないと思います。
駒崎：現場の観点からいいますと、今までも自治体は「設置義務」なんて負っていないです。例えば、私共が自治体のところへいき、「ここ待機児童多いから保育園を作りませんか？どうですか？やりますよ。」っていったら「いやー、まあ考えときますね」とか「来年の予算案の中に入れ込みましょう」といった感じでなかなか実現しない。結局ですね、待機児童が減っていない自治体の首長がクビになるか？といったらなりませんね？保育園担当者の人が降格されるか？降格されないんです。一切責任をとっていないんです、今でも。
なので、自治体のスピードで保育園を出店しようとすれば、事前調査に半年、出店の決断を下すのに１年、実際に自治体が動き出すのは１年半後といった話になるので、そのスピードじゃ待機児童なんて、永遠に解消できないんです。ですから、基本的には自治体の意思決定のスピードとは関係なく、必要だと思われるところ、ニーズがあるところに事業者が行って保育園を開園出来るという仕組みにしないといけない。これが「指定制」ですね。新システムの目玉のうちの１つはこれだと思っていて、幼保一体化なんかよりよっぽど重要ですよね。これがあることによって、待機児童の解消は進むと思っています。
高木：その時に課題があって「５年ごとに計画を作りかえる」。それで作り変える時も、例えば「子供子育て会議」というのを今度は自治体にも設置しますから。で、その「子供子育て会議」というのはすごく大事だと思っています。ここに当事者を入れるという案は、素晴らしい。ぜひやるべきだと思います。そうすると、今おっしゃったような、自治体のペースじゃなくって、会議のほうから発信することができる。ただ一方で、計画を作るっていうのが、本当に市町村にできるのかなって。まず、待機児童数の掌握から大変なんですね。申し込む人にも色々な申し込み方があって「とりあえず申し込む人」「本当に切羽詰まっている方」「転職しながら申し込む方」色んな方が待機児童という考え方になっていて。しかも今「無認可」に通っている方は待機児童の数に入っていませんから。そこをきちんと掌握しながら、自治体としてどうしていくか。だからこれは会議の「民」の力を借りながら、自治体を後押ししていく。ですから「計画」といっても、入口から本当に作れるのかなあという気がしますけどね。
須田：ただ先ほど駒崎さんが言われたように「スピード感がない」というのは、やる気の問題もあるでしょうけど、財政的な事情がかなり大きいんじゃないですかね？
駒崎：自治体で仕切っているスピードは、そのスピードじゃないとまわらない構造なんです。なぜかというと議会にかけないと正式に承認されないような仕組みになっていますから、そのスピード自体はもう仕方ないと思うんですよ。
田村：いや、それだけじゃなくってね。今おっしゃられた通り、国から補助金は出るんですが、市町村にはそれぞれ負担があるんですよ。で、それがあるものですから、新しく作っちゃうと自分ところの持ち出しが増えるんで、それで嫌がるんです。認可したがらないんです。だけど、今回の「指定制」にしても、やはり地方の負担は同じように残るんですね。結果は一緒ですから。市町村が少なめに出すっていうのは、それを多く出しちゃうと、保育所をたくさん作らないといけないから自己負担が増えるっていう話ですよね。それをイヤがった。「指定制」でもそこが変わらない限りは、やっぱり待機児童の出し方っていうのは、本当の数字より低く出しちゃうんですよね。だから私は、待機児童が今いるところは、市町村の負担分まで国が出してあげればいいじゃないかと。そのほうがよっぽど早く解決すると言ってるんですよ。
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新システム施行で、私たちの負担はこう変わる！
小口：消費税が増税できなかったらどうするんですか？泉：キツイですねー。消費税増税は確かにセットになってしまっているので。今後、保育拠点を「子供子育てビジョン」というもので、ずっと増やし続けて行くんですよね。これは３０００億円でやります。だけれども、制度を変えていくための７０００億円というのは消費税前提になりますね。
大谷：それでいいますと、埼玉県の女性からこんな質問がきていまして。「生活保護者、シングルマザー、シングルファーザーといった一般的に見た弱者と思われる人にメリットはあるのでしょうか？私はシングルマザーなので負担が気になります」もし今回の新システムが通って、そのまま入った場合に、負担はどうなりますかという質問です。
泉：それはですね、今例えば「認可園」に入っていれば、基本的にはあまり変わることはありません。それはやっぱり所得によって「応能負担」と「応益負担」というのがあって。同じサービスを受ける人は、全員所得がいくらであろうがおんなじ負担というのと。所得によって、低い人は負担が少なくっていう考え方があるんですけど、その「応用負担」というのは変えないので、これからもずっと所得が低い方は大丈夫なんですね。一方で、今「認可外」に入っている場合は、そこは今よりも少し公費が入るので、安くなるという可能性があります。
田村：ただですね、実は公立の幼稚園は、保育園よりも安いところがいっぱいあるんですね。そういうところに入っていた人たちっていうのは、多分負担があがると思います。
大谷：総合こども園になるからですね？
田村：ええ。公立の幼稚園の負担は、かなり低いんです。
須田：ただその辺は、元々補助金っていうのは税金だから、納税者の公平・公正を現存するんだったら、そこはフラットにしても、負担があがっても仕方がないところじゃないですか？要するに、同じ納税者なのに、片方にメリットがあって、片方にメリットがないというんじゃ公平感がありませんからね。
高木：ただ今お話があったシングルマザーの方や生活保護者の方など、色々な方がいらっしゃいます。そのような方たちにとって、あまりに過度な負担というのはダメなので、そこはやっぱり分に応じてやっていくべきだと思います。ただ、そこのところを国がどういう水準を決めていくかっていうのは、施行までに検討するという風に私は聞いています。
田村：これは今の保育制度にも問題があって、問題提起をしているんですけど。保育の必要度っていうのを今度計るんですね。今までは「保育に欠ける」という言い方をしていたんですけれども、その基準を作るんです。で、その中に「世帯収入」というのがないんですよ。本来、児童福祉の視点から見れば、やはり収入が少ない。それで困ってお母さんが仕事にでている。そういうところが最優先で、預ける・預かる度合いをあげてあげなきゃいけないんですが、それが今回も入っていないというところを問題提起しています。いくら提起しても直してくれないんですよね。
泉：私、その話を聞いたこともなくって、今初めて聞きましたけども・・・一方で、環境なんですよね。自分の家族環境がどうなっているかで。例えば、待機児童がいるところは、どうしても優先順位を自治体がつけているんですね。それもですね「親が同居しているかいないか」とか「（保護者の）親が近くにいるかどうか」とか「週に何回働いているか」とか、そういう順位の付け方で、所得がいくらあるかっていうことよりも、周りに子供を見る人がいるかどうかっていうことで優先順位が決まっているということなんです。
田村：それだけじゃ問題だっていうんですよね、やっぱり。
駒崎：「保育に欠ける」っていう言葉は、みなさんあまりご存知ないかもしれないですね。「保育に欠ける」つまり、子どもを預かってくれる人がいない場合、そのニーズの度合いに応じて「保育所を配給しますよ」といった制度になっているのです。この言葉がそもそも適切ではないですね「保育に欠ける」ではなくて、保育に預けたいと思った人、みんなが預けられるような社会でないといけないんですよ。なぜなら、就職活動中に、実際に仕事がなくても（子供を）預けなきゃとても就活はできない。そういった時に「仕事をしていないのだから、保育に欠けてないよね」って話に今なっているわけですよ。だから、現在の保育を配給するという仕組みではいけないのです。
田村：それは違いますよ。保育にかける要件を今変えているわけです。そういうのも、保育に欠ける要件に入れてあげなきゃいけないって話ですよね。
駒崎：選別主義、普遍主義、という概念があるのですが、例えば、スウェーデンって普遍主義を採用しているんです。「望む人は誰でも預けられる」という社会インフラを作らないといけないという考え方なんです。だってそうですよね。仕事をしていないから、保育園に預けられないかっていったらね。例えば、育児ノイローゼで非常に困っている親御さん。我々の園がお預かりしました。虐待一歩手前です。でもそういった人たちは、働いてないから来られないんですか・・・って、そういうわけにはいかないですよね。子供を救う意味でも預けてもらって、病気を治してもらったりする必要がありますよね。そういう意味では、望む人すべてに、保育園というプラットホーム、社会的インフラっていうものを提供すべきですよね。
須田：そういったご意見はよくわかるんだけども、ある種、駒崎さんが言っているのは理想的な将来像ですよね。ただそのためには、公費というのがかかる。税金がかかるわけですから、それに対しては制限が十分にかかってくるわけですよね。使えるお金で、何にプライオリティ（優先順位）を置いて、その課題を次々に潰していく必要があると思うなと。
田村：今のようなニーズに対しては、ちゃんと預かる機関があるわけですから。
小口：あるんですか？
駒崎：いやいやいや、足りない。足りないです。
田村：作ればいいんですよ！保育所でそれを全部やろうとすると、働かなきゃいけないお父さん・お母さんが、今預けられないですから、少なくとも。そこがやっぱり預けられなくなっちゃうって話になるんで、ある程度、扶養が確保できれば「今日は買い物行きたいから子供を預けよう」ってことも必要かもわかりませんよね。
高木：今の気になるお子さんの話はすごく大事な話で。やっぱりそのお母様たちが、育児ノイローゼとかご自分が病気になったとか、お子さんが障害を持っているとか。そういった方たちが、これから新システムでどうなるかというと、恐らく市町村に相談に行きます。で、そういう認定はしてくれます。でも最後は自分で探すんです。正当な理由があれば、事業者の方は。保育所のほうは断ることができる。「正当な理由ってなんですか？」って聞いたら、１つは定員がもういっぱいです。もう１つは、施設が車イスのお子さんに対応できるような構造にないとか。あと「専門的な職員がいません」。こういう場合は断ることができるっていうわけです。
自治体が責任を放棄している
高木：今地域で障害のないお子さんと障害を持つお子さんと一緒にやれる仕組み作りがやっと始まったところで、もっとこれは進めなきゃいけないんですね。ところが、新システムでこれどこに請け負いますかっていうと・・・。
須田：だけどね、これ新システムでそれを包括する必要性ってあるんですか？やっぱり社会保障制度の一環として、きちんと手厚く対応してあげるべきであって、今回の新システムの最優先課題っていうのは、待機児童の解消ですから。それを一体化するっていうのは、難しいんじゃないかなと思いますけどね。
高木：ただその時に、弱者の人が落ちたら困るわけです。あまりにそういうことはやっちゃいけない話で。それが今落ちかかっている。
泉：いやいや、全く落ちかかってないですよ！
高木：そういう新システムなんで、私は心配しているわけです。
泉：高木さん、今日もね本会議聴いていたと思いますけど。正当な理由でね、もし障害児を落としたら、それはもう指定を受けられないですよ。
高木：違います。
泉：指定を受けられないですよ。
田村：今までは自治体が割り振りますから、保育所は断れないんですよ。ところが今回は１対１ですから、例えば変な話ですよ。お父さんとお母さんの働いている状況を見て、もしかしたら保育料を取りっぱぐれるなあと思ったら、なんだかんだ言って断れるんです。
泉：それができないようになっているんです！
田村：市町村に訴えに行く親御さんはいいですよ。だけど、次のところを探さないとこの子どうするの・・・っていう一番困った人たちが預けられなくなっちゃう可能性がでてくるんですよ。
小口：そうなることも想定されるんですか、駒崎さん？
駒崎：今自治体に障害児の受け入れ義務があるっておっしゃっていましたけど、現時点でも保育所で受け入れを断っている事例がありますから。でも、さっき高木先生がおっしゃったように、一番困っている方々がこぼれ落ちてはいけない。それはもう大賛成です。だからこそ新システムでも、きちんと障害児を預かれる仕組みというのを盛り込むべきなんですね。実際に僕が希望を持っているのは、小規模保育の中に「訪問型」っていうカテゴリーができているのですが、その中では障害児等の家に、マンツーマンで保育士が障害児を保育しに行ってあげられるという仕組みが埋め込まれているんですね。これはすごくいいなと思うんですね。というのも「重症心身障害児」といいまして、身体障害と知的障害が重なったような重度の障害児に関しては、今もう既にこぼれ落ちているんですよ。
基本的には、そういうお子さんがいるおうちっていうのは絶対働けない。けれども、保育士がマンツーマンで行ってあげるっていう仕組みに補助がでるようになれば、そうした重度の障害児にマンツーマンの保育が可能になるんですね。このような可能性もあるので「できない！できない！」と欠点をあげつらい、ネガティブチェックだけをするのではなくて「この仕組みを活用すれば、こうできるじゃないか！だから弱者を包摂できるよね」っていうような形で議論できればいいのではないかと思います。
須田：そういう分野っていうのは、福祉施設の中に内包するってことはできないんですか？
駒崎：やっぱり制度と制度の狭間に落ちるっていうのは、よくあるんですよね。だから障害者の制度を使おうと思ったら「障害児」には適応できなくてとか、あるいは介護保険サービスと保育の間のケースに当てはまってしまうとか。このような、制度が適用できず対応しきれていないケースは結構あることなんですよね。そういった制度の穴の部分をきちんと埋めていくことによって、弱者にあたる人が少しでもこぼれ落ちないようにできるんじゃないかなと。
高木：なぜこのような話をするかといいますと、今、発達障害のお子さんって１０人に１人なんです。もっと多いっていう現場の実感があります。だからそこの方たちを、ちゃんと早期の発見と養育にちゃんとつなげられれば、社会的な色んな考え方も、そこで身につけることができて。きちんと人生を歩んでいけるっていう入口なので。それで先ほどから障害者の話を少しさせていただいたんです。
田村：それに、市町村に責任感があれば割り振りますよ。仮にうちは人員が整備されてないからって断るところがあっても。
駒崎：いやー、現実はちょっとそういう風に言えないところがありますよ。
田村：うちの地元は割り振ってますよ！
駒崎：いや、地元はそうかもしれないんですけど。都心部では全然ダメですよ。
田村：だったら、自治体は責任を放棄してるって話になりますよ。
駒崎：いやいや自治体は実際放棄しているケースもあります。だって現に待機児童が減らないじゃないですか。待機児童が減らないっていうことで、じゃあ自治体の部長さんが「責任を取ってやめます」っていった事例ってないですよね。
田村：だから、保育士がいないんだから、ムリでしょう！
駒崎：いやいやそんなことないですよ！そんな一園も作れないぐらい保育士が不足しているわけではないでしょう。だって僕らは保育施設を作れていますもん。保育士不足というのは関係ないですよ。やっぱり、今でも自治体の責任というのがそもそも問われてないんですよ。だから結局、待機児童問題が放置されてしまうという構造はあるのです。そこにメスを入れるっていうのは非常に重要です。今回の法案審議は、疲労している保育制度を改革するためにメスを入れる機会ですので、うまく生かしてもらいたいなと思いますね。
事故再発防止のために・・・
小口：この時点でここまでの議論だと、今駒崎さんがやってらっしゃる「病児保育」の話までね、国がちゃんとケアできるところにいくのは、本当に先なんじゃないかなという気がしますね。駒崎：まあそうですね。ただまあ、新システムで一応ようやく「病児保育」のカテゴリーも出来上がってはいるので。もちろん細部は詰まってないのですが「できていない、できていない」という風に政府を叩いても建設的でないので、こういう風にすればもっとうまくいきますよ・・・という対案をこれから提言していきたいなと思います。そしてさきほど「質」の話がでていましたけど、認可外だから事故があるということではありません。例えば、僕の知人がお子さんを亡くされたんです。
愛知県碧南市の社会福祉法人が運営されていた認可保育園で命を落とされたお子さんの話です。なんとですね、ちゃんと調査が入るまで１年半かかっているんです。１年半ですよ、人が１人死んでいるのに！第三者の委員会も作られずに、そのままなぜ亡くなったのかよくわからないという状況ですね。つまり、今現在、そういう風に「質の低い園」に関して、第三者が入って行って調査をして、なぜそれが起きてしまったかということを全国で共有する仕組みが存在しないんですよ。これ驚きじゃないですか！保育の質なんて言っていられないですよね。だって、厚労省だってつい最近ですよ、保育事故で子どもが何人亡くなられたか把握したのだって。それに実際全部、捕捉しているかなんてわからないんですよ。そして、我々保育施設運営者が「教訓にしないといけないから、その情報を教えてください」といっても教えてくれないんですよ。おかしいですよね？だから、こういった事故の情報をきちんと開示して、事故を起こした園は、罰を受けるという仕組みにしないといけないんです。
だから、情報開示も非常に重要ですし、そしてその事故の情報っていうのは、全国できちんとデータベースにして、ちゃんと教訓にできて、二度と起こさないっていうような仕組みにしていかないといけません。そういった教訓の機会をうまくいかさないといけないわけで。それなのに「子ども子育て新システム」になると保育所運営に株式会社が入るから保育の質が下がるとか、そんな議論じゃないんですよ。株式会社だろうが、社会福祉法人だろうが、どこが入ろうが、ダメなところはダメなんです。だから保育をどう行っているか、施設をどう運営しているかを継続的にチェックして、ダメなところは排除できるという仕組みにしないと、子供たちの命に関わる問題なんですから。そういった点がきちんと守られるような仕組みにしていってもらいたいと思いますね。
高木：だからいずれにしても、公的な評価制度をどう作っていくか？またそれを受け止める市町村もその権限を強化していかないと。苦情が全部集まるのは市町村ですから、やっぱりどこが今一番どういう状況であるかチェックできるわけです。ですから、そこのところをもう少し強化することが必要だと思いますね。
田村：これが本当に難しいと思いますね。今回、AIJの問題ですとかね、例のツアーバスの問題がありました。あれは全部、規制緩和の流れの中でドンドンドンドン参入していく。緩い参入基準にしていったんですね。つまり、登録さえすればOKという風になったんです。で、今回の「指定制」というのはそれに近いんです。何が起こるかというと、一斉に増えた時に事後チェックしなければいけない。その仕組みがちゃんとあるのか！？一方で、公務員は減らしていきますから、チェックする人は減っていく。例のAIJっていう投資顧問会社。なぜチェックできなかったかというと、人が足らなくて手が回らなかったからなんですね。だから、これをやるとなればかなり人員面でチェックする目をしっかり作っていかないと。子供の場合は、もし本当に事故が増えたりしたら取り返しのつかないことになりますから。しっかり監督をしながら進めて行かないと、マズイなという風に思いますよ。
須田：今日話を伺っていましてね。どうしても補助金っていうのは必要なんだろうなと。最優先課題としては待機児童を減らすとか、発達障害の子供たちをどうやって対応していくか。いずれにしても、たくさんの公的資金が必要だと。そういうところを考えると、今議論されている消費税増税の問題というのは、非常に身近な問題なんだなということがユーザーのみなさんにもわかっていただけたんじゃないかと。それで今日のね、喧々諤々の議論があったんだけれども、与野党ともに一致しているのは、待機児童をなんとか減らしていかなきゃならないと。そういう点では一致しているわけですから、そこから入っていくと場合によっては、自民党も公明党も財源確保のために、消費税増税に対して賛成する可能性があるってことですよね？
小口：あるんですか？田村議員？
田村：我々は使い方さえOKならば、元々あげると言っていますから、消費税は。使い方がちょっと違うんですね。そこは問題があると思います。
小口：高木さんは？
高木：私はですね、消費税をあげていくには、子育てだけだとまだ７０００億。数％までいきませんよね。したがって、やっぱり全体像をどうしていくのか。年金、介護、医療、そして子育て。そういうのを総合的にきちんとどういう姿にしていくのかというのを、国民のみなさまに「消費税をあげればこうなりますよ」というのをまずきちんと提示をしていくとか。ムダの削減とか景気回復とか社会保障にしか使わないとか、やっぱりそこをこれから税と社会保障の一体改革の特別委員会の中で審議されるわけですから。その審議を、しっかり私たちもそこで論戦をして、その問題点をクリアにして、国民のみなさんにわかる形で、よく聴いていきたいと思います。
小口：それでは最後にみなさんから一言ずついただきたいと思います。まずは泉議員お願いします。
泉：これ考えたのは、確かに全国の色々な団体のみなさんですとか。研究者のみなさんが集まって考えられて。恐らくそこは自公政権時代の研究と変わらない結果がでていると思います。今日は合意した部分があると思うので、そこは成果物として、まずは一歩一歩やっていきたいと思いますね。
田村：とにかくですね、あんまりムダなことをやっていただきたくないなと。とにかく今必要なものを、その解決策だけをやっていただきたい。ムダなことをやったために、全体を混乱に陥れることだけは避けていただきたい。必要なものは我々も必要だと思いますから、その部分だけには賛成をしたいと思います。
高木：ともかく子育てしにくい現状というのが一番の問題で。それを解決するために、政局とか色々な動きがありますけれど、そうではなくて、すぐに当事者の方たちのためになにができるのかという。とにかくよりよいものを作るためにがんばっていきたいと思います。
小口：では、駒崎さんお願いします。
駒崎：「子ども子育て新システム」の中の一部を容認できないからこの法案自体全部ダメといった議論ではなくてですね。なにがこれからの日本にとって良いのかということを考えた。そして先ほどおっしゃられたように、政局のためではなくて、政策の中身できちんと議論していただきたいなと思います。本当に日本の運命を決める法案だと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします！
須田：とはいっても、与野党はともにですね。あまりにもこの問題について説明不足ですよ！恐らくほとんどの国民はきちんと正しく理解していません。なんか幼保一体化のことだけ頭に入っているのが実態だったのではないかなと。やっぱりこれからは懇切丁寧に、色んな機会で説明していただきたいなと思いますね。で、先ほどの政局の話なんですけども、こういった重要な問題について「民意を問う」という作業は必要なんじゃないかなと。賛成か反対を問うね。いくつかのメニューがあるにしてもですね、きちんと民意を問う作業をしないと、いくら立派なことをいっても、なかなか物事は前に進んでいかないんじゃないかなと。それが解散総選挙になのかどうかは別にしても、そういった手続きを踏んでいただきたいっていうのが私の感想ですね。
大谷：最後に一言言わせていただきたいんですけど。私も実は８カ月の子供がおりますので、まさにいま保育園を探しているんですよ。この８カ月の間にも、子供手当ての仕組みなどは変わりましたし、非常にシステムが複雑。で、今回新しいシステムが決まって、いい方向に進めばいいなあと思っていますが、今やはりそこで「メディアの役割とは？」って出ていて。９０分色々とお話を伺いましたけど、まだ伝わってない部分もあると思いますので、引き続きこれがどうなったのかというのを報道していきたいと思います。
