いま、被災地が本当に求めていること―ニコ生×BLOGOS第7回 「震災から1年 復興は進んでいるのか」 - BLOGOS編集部
※この記事は2012年03月25日にBLOGOSで公開されたものです
ニコニコ生放送とBLOGOSがタッグを組んでお送りしている「ニコ生×BLOGOS」第７回のテーマは「震災から１年 復興は進んでいるのか」東北地方を中心に大きな被害をもたらした東日本大震災。既存メディアが伝えていない被災地の現状、復興はどこまで進んでいるのか？ ３．１１以降、被災地を見続けてきた地元紙、現地で支援を続けてきたボランティアだからこそ知っている、被災地のいま、そして被災地で求められている本当の復興支援とはなにか？ ゲストに、福島県の地元紙「福島民報」編集局・報道部長の早川正也氏と被災地の学生ボランティア活動を支援している「日本財団学生ボランティアセンター」の西尾雄志氏を迎えて、お話を伺いました。【出演】
司会：大谷広太（BLOGOS編集長）
アナウンサー：小口絵理子
コメンテイター：須田慎一郎（経済ジャーナリスト）
ゲスト：早川正也（福島民報社 編集局 報道部長）
西尾雄志（日本財団学生ボランティアセンター 代表）
本当に困っている人は、ボランティアを呼ぶことができない！
小口：震災直後、ボランティアの人たちっていうのは、取り上げられなかったという話もありますが。学生さんたちの動きは素早かったという話もありますよね、西尾さん？西尾：当初っていうのは「迷惑ボランティア」とか「ボランティア行け論・行くな論」が２分された形になったりして。
大谷：つまり行っても、なにもできないんじゃないか・・・ということですね。
西尾：自衛隊は役に立つけど、ボランティアは役に立たないと言われていた論調があって。どうしていいのかわからなかったボランティアっていうのも多かったと思います。でもそういう時、現地の状況というのを適切につかんで、提供して、学生さんにきてもらうっていう活動が求められていたと。私どものセンターでは４月１５日の時点で、現地のボランティアの体制が整ったということで、そこから学生ボランティアを派遣して、今まで続けているというような感じです。
小口：数字的なものでいいますと、ピーク時はどれぐらいの人数の方がボランティアに関わっていたんでしょう？
西尾：報道のデータなんですけれども。延べで９１万９７００人がボランティアで１年間関わっていました。これが多いとか少ないとかいう議論があるんですけれども。大体、阪神淡路大震災の時は１２０万人から１５０万人と言われているので、そんなに少ないという印象は、僕自身受けてないです。
須田：阪神淡路大震災の時は、大都市っていうこともあって、行きやすい、ボランティアに参加しやすいってことがあった。しかし今回は、東北ってことで、なかなか行きにくいということが影響したんですかね？
西尾：はい。あと被害が広大な地域にあったということで、ボランティアの宿泊先を確保するというのが難しくなったんですよね。
小口：あと（コメントで）「ガソリン不足が影響した」って書いてる方もいます。
西尾：そうですね。
小口：バスなどの交通手段が少なかったですからね。最初はやはり“がれきの処理”といったことがメインの活動だったんですか？
西尾：そうですね。津波の被害もありましたので、ヘドロやがれきの撤去が、最初のうちはメインでした。ですが、もう街は大体片付いて、キレイになってきたので、最近は、地元のお祭りとかイベントのお手伝いだとか、小規模ながら残っているがれきの撤去だとか。あとは、ちびっ子と野球をしたりとか。そういった交流の占める比重が、だいぶ高くなっていると思います。
須田：がれきの撤去なんていいますとね。地元の建設業者なんかが仕事として、対価を受け取ってやってるケースもありますよね？それとボランティアの棲み分けってのはできてるんですか？
西尾：ボランティアの場合は、ボランティアセンターが取りまとめてやってますので、そのあたりで棲み分けをすると。あともう１つの棲み分けは、ボランティアって基本的に手作業でやる場合が多いですから。業者とかが重機で入るところじゃなくて、手作業で機動力を持ってできるところが、ボランティアに割り当てられます。
小口：だから最初の頃っていうのは、行っても食料や水をムダに使うぐらいだったら、ボランティアをしないほうがいいとか。行くぐらいならお金を募金したほうがいいんじゃないかとか。確かに色んな議論はありましたけれども、実際今振り返ってみて、どうお感じになりますか？
西尾：今回ボランティアでよく言われていたのが、自己完結型のボランティアで行きましょうと。自分の寝床も食べ物も、自分で用意していきましょう。という論調が正しかったと思うんですけれども。そこが一番レベルが高いので、そこまでのレベルにはなかなか行きづらい。段々、そのレベルが落ち着いてくるに従って、参加しやすいものになってきたかという風に思います。
須田：そういった中でね、今回のボランティア活動を通じて反省点なんてありますか？ここをこういう風にやったほうがよかったなといったような。もしくは、これからの課題として、挙げるとしたらなにかありますか？
西尾：「ボランティアをやりたい」とか「ボランティアをやろう」という意思を持っている人が結構多いっていうのは感じてます。なんですけど、それがいい活動につながらなかった１つの課題っていうのは。ボランティアをやりたいっていう人を束ねて、色々指導して、コーディネートする“ボランティアコーディネーター”って呼ばれてるポジションの人なんですけど。そういった人がちょっと足りなかったというのが反省点としてありますね。ただ、もう１点いうなら、今回の災害の規模は、本当に想定していないぐらい大きな規模だったので、いたしかたない点もあるかもしれません。
須田：そしてもう１つね。菅政権で今回の大震災が起こったわけですけど。司令塔としての役割を総理補佐官である辻本さんが果たそうとする“政治主導”の部分もでてきたじゃないですか。こういったことは初めてだったと思うんですけども。これがボランティア活動に大きく影響を与えたとか、役にたったとか、どれぐらいの効果があったんですか？
西尾：私自身が勉強不足なのか。理由はよくわかりませんが、あんまり感じることは・・・。
須田：なんにも役にたたなかった（笑）ちょっと言いにくそうですけど、そういうことでしょう。
小口：ボランティアの組織は、いっぱい大きなものがありますけれども。それぞれ横のつながりとか連携っていうのは、うまく取れてたんですか？
西尾：どうしても阪神淡路大震災の時と比較してしまうんですけども。昔は、ＮＰＯ同士って仲が悪かったんですよね。でも、今回の災害で色んな団体の姿を見ていると、今まであった垣根がなくなって、仲良くなってきているというのは感じました。
須田：こういった災害が起こる前には、横の連絡といったＮＰＯ同士の関係はあるんですか？
西尾：ＮＰＯって色んな分野があるじゃないですか。環境問題であるとか、街づくりであるとか、人権とか。そういった分野ごとのネットワークはあるんですけれども。今回は“人権問題やってました”とか“国際協力やってました”といったような色んなＮＰＯがどっと入ったので。名前は知ってるけど、よく知らないＮＰＯ同士が親しくなったと思いますね。
大谷：日頃から、ＮＰＯとかで活動されている方はいらっしゃるとして。今回は学生とか若い方が（ボランティアとして被災地に）特に入っていかれたということなんですけれども。当然１年たって、これからまた必要なことって、また違うと思うんですよね。継続していくにあたって、学生であれば“夏休みとか春休みだったら行けるかもしれない”とか。あるいは、社会人であれば“週末とかは行けるかもしれないけど”といった継続性とか、どういう取っ掛かりで入っていったらいいのかっていうのは、なかなか難しいですよね。
西尾：そうですね。継続性っていうのは、やっぱり問われてることだと思うんですけど。ボランティアの道徳心だけに訴えて「ボランティアは継続性が大事ですから、がんばって継続してくださいね」っていうのは、やっぱりムリがあると思うんですね。なので、私共や他の組織では、できるだけ（ボランティアに）行きやすい環境を作っていくことが大きな課題だと思います。
小口：早川さんは福島にいらして、ボランティアの方を多く見てこられたと思うんですけれども。どういった印象をお持ちですか？
早川：福島は原発事故があってですね。特殊な環境だったのか。（報道で）言われているほど学生さんを見かけなかったんですね。
須田：なかなかリスクの部分を考えると、入りにくいという要素があったんですかね。
早川：あったのかもしれないですね。ただ僕らもやはり、学生さんたちを含めたボランティアがどういう活動をしているのかってところまで、追いきれてないっていうのもあると思うんですよね。実際には、入ってきてらっしゃたのかもしれないですけども、そこまで手が回らなかったっていうのもあったのかもしれないですね。
須田：加えて、今回被災された地域も、かなり広範囲に渡ってましたから。メディアにたくさん取り上げられている地域に対して、ほとんどメディアに取り上げられないで無視されてしまったみたいなところもありましたよね。例えば、福島県の南相馬市みたいな。その辺のコントラストがあって、やっぱり（メディアで）とりあげられると（ボランティアに）行きやすいっていう状況があるんじゃないかなと思いますけどね。
小口：学生のボランティアセンターで、どの地域に派遣するといった振り分けまでしないんですよね？
西尾：団体によりますね。
須田：私なんかね、被災地をまわってると、その辺に対する被災者の不満っていうのがすごく強いんですよ。「なにも困ってるのは、津波の被害を受けた、あそこだけじゃない！」とかね。マスメディアで取り上げられる頻度ってのは、かなり差があるじゃないですか！それに対する不満っていうのは、被災地では数多く聞きましたね。
小口：ボランティアにしても、やっぱり手を先に挙げた人のところに、どうしてもお手伝いに行くことになるから。本当に助けを必要としている人は、なかなか声もあげられないけど、そこまでは労働力がまわせなかったとかね。そういう部分もありますよね。
西尾：本当に困ってる人っていうのは、声を発せられないから困ってるんですよね。そこを探すっていうのは、ボランティアの前段階として、すごく重要なところなんですね。
福島民報社報道部長 早川正也氏 写真一覧
除染が全く進んでいないことが一番の問題
大谷：「原発どうする？」「がれきどうする？」といったニュースでしか見ていない、表面的な部分ってあると思うんですけれども。福島のメディアとして、県内を取材されていて、都心部ではあまりみなさん気づいてないけれども、実際地元では切実な問題というのは、どういったものがあるでしょうか？早川：なんといってもやっぱり“除染”なんですね。これが全く進んでいないのが現状です。事故の収束作業をはじめ、避難者の帰還と生活再建、さらには県民の健康管理など。これらすべての前提となるのが除染なんですけども。これがなかなか進まないために、復興の大きな足かせになってるというのが現状なんだと思いますね。
これ２つ問題点があってですね。いわゆる技術の面と汚染廃棄物の処分場をどう確保していくのか？この２つの問題が除染作業の大きなネックになっているわけです。技術的な面をいえばですね。こういった災害というのは初めてなわけで。除染技術っていうのは、全く誰もやったことがないわけですよね。それを１からやってるわけですよ。どうやれば、効率的に効果的にできるのかというのが、なかなかわかってこない。手探りの状態で進んでるっていうのが実態です。
さらに、除染する範囲がものすごい広いわけです。福島県は５９市町村ありますけども。だいたい４０市町村以上が、程度の差はあっても、除染の対象地域になっているわけです。環境省の試算によりますと、その総量は、東京ドームの７２個分。９千万立方メートル。ただこれは、ボランティアをやっている人に聞きますと、かなり低く見積もっている。表土のギリギリのとこを集めると大体このぐらいだろう・・・という数字なんですね。だから、除染作業をやってみると、それよりももっと多い土砂であるとか、汚泥であるとかがでてくるというのが、実際やっている人の声ですね。
大谷：表面だけではなくて、深いところまでやらないといけないわけですか。
須田：（東京ドーム）７２個分というのは、表土２～３センチの世界なんですよね。表土を２～３センチ削りとって、客土を入れる。その削り取ったものが７２個分相当だと言う風に言われてるわけなんですね。ですから、放射能汚染がもっともっと下のほうまででていくと、７２個がもっと増えてしまうわけです。
早川：新聞に出てましたけど、日本原子力研究開発機構の推定では、去年の６月段階で、セシウムは地表の５センチぐらいで留まってたらしいんです。ところが今はおよそ３０センチぐらい深いところまで入ってしまっているんじゃないかと。ですから、これを取り除くとなると相当大変な作業になってくるわけですね。
大谷：しかもテレビで見ていると、もちろん重機もあるかもしれないですけれど。手作業による部分もあるわけですよね？
早川：重機っていうのは、校庭とか水田とかならある程度入れられますけども。基本的に住宅地の除染なんてのはマンパワーなんですね。家の屋根にあがって、高圧洗浄機で洗い流したり、庭木の下の土砂を取り除いたり。手作業じゃないと、とてもできないわけですね。
須田：重機でやるとね、かき回しちゃうんですよ。むしろ、放射性物質が拡散しちゃうような形になりますからね。それで環境省が「４月から本格的に除染作業をはじめますよ」と、工程表を出してるじゃないですか。あれは地元では、どれほど信頼を置いているものなんですか？
早川：除染のガイドラインがでてるんですよね。例えば、一般住宅でやる時は「こうやってやればある程度下がりますよ」というガイドラインがあるんですが、実際やってみるとですね。思ったほど効果がなかったです。で、それ以上、手間ひまをかけると“コスト”がかかるわけですね。大体“１軒当たりの除染で５０万円”って言われていたんですが。徹底的に除染をやろうとすると、５００万円ぐらいかかるという話もあって。全然、桁が違ってきてるっていうことがあるんですね。だからその、膨大な量とともに、除染にかかるコストをいかに下げてくかという２つの問題に対して、全く今は見通しがたってない。そういう状態にあるわけですね。
須田：報道ベースで見ますとね。除染って、住宅地であるとか、平地であるとか、そういったところの家屋については、高圧洗浄機で洗い流しますよと。表土については、２～３センチ削り取って、客土をいれますよと・・・いう形で進んでいるっていう風に言われてるじゃないですか。
ところがやっぱり、放射性物質には、重さや粒の大きさもありますからね。高台のところや山林ではきちんとやらないと、雨が降ったり、風が吹いたりすると、また汚染されてしまうという状況になるんですよ。私もですね、除染作業を引き受けたゼネコンなんかに話を聞きにいってきますと「山林についてはどういった形で除染作業やるんですか？」と言ったら「木を全部切り倒して。切り株を全部引っこ抜いて、その上で、表土を削り取る」と。このような作業をやらないと本当の意味での除染は進みませんよと。そうするとさきほど言われたように、コストの問題がでてきて、大体年間１兆円とか２兆円っていう見積もりをだしてますけど。とてもじゃないけど、そんなレベルじゃ済まない！数１０兆円規模の費用がかかるわけですね。
大谷：そして、そこからまた農作物を作っていくってことになると、風評被害の問題もありますし、時間もかかるということですよね。
小口：早川さん、さっきからね。「そこまではムリだよ」というコメントが入ってるんですけど、地元の人としては、どんなお気持ちなんでしょうか？それだけのお金があるのか？手間をかけられるのか？
早川：さきほど須田さんがおっしゃったようにね、山からやってかなきゃなんない。上流から下流へという話なんですけど。コストの問題なんか考えるとですね。じゃあ、どこから手をつけてくんだと。今一番地域で心配されているのは、子供さんへの影響ですから。「じゃあ、まず子供の生活区域からやったほうがいいんじゃないの？」かと。
実際、福島県は学校の表土はほとんどのところで削り取ってて、それなりに放射線量が下がったんですね。国は「やる必要はない」と言ったんですけども、市町村が先攻してやって。結果的に成功している形ですよね。だからある程度、優先順位を設けてやるしかないのかなと。どこまでできるかわかりませんが、技術開発っていうのを、これからドンドンドンドン続けていってもらいたいっていうのが、地元の意向としてあると思いますよ。「ムリだからもう住めない」っていう判断は、なかなか地元の人にはできないですよね。
須田：そりゃそうですよ。福島の人はなんにも悪くないんだから！そうすると、住んでいたところに再び戻るためには、いくらコストをかけても僕はやるべきだと思うんですよ。「（コストは）ここまでしかかけられません。」「ここまでしか除染ができませんでした」「みなさん、どっかその辺で生活してください」これはあまりにも無責任だと思いますよね。
早川：やっぱり土地と一緒に生きてる人達が多いですから。土地を使って、農作物を作って。土地を先祖代々受け継いで。土地を中心にコミュニティができてきて。そういう社会の成り立ちがあって、継続してきたわけですから。「こっち（福島）の土地は使えませんから、よそへ行ってください」っていうのは、そんな簡単に踏ん切りつかないと思いますよ。
須田：もう１つ問題なのはね。こういった議論をちゃんとテーブルの上にのせて。「こういったことをやるために、これだけのコストがかかります。さあ国民のみなさんどうするんですか？」といった議論が全くないじゃないですか！なんとなく１兆円、２兆円かければね。そのうち除染が完了するような。そんなムードが広がっている。これは福島の人に対して、私は失礼だと思いますよね。だからそういったことも含めて、きちんと議論していく必要が、私はあると思うんですよね。
日本財団学生ボランティアセンター 代表 西尾雄志氏 写真一覧
実体のない政府の復興活動
小口：がれきの処理の話。コメントでもあったんですけれど。静岡県島田市でも、がれきの処理受け入れを表明したなんてニュースもありましたが。これ、東北地方に回すことはできないのか？という議論もありますよね。須田：阪神淡路大震災と比較すると、非常にわかりやすくてですね。阪神淡路大震災というのは、兵庫県１県で排出したがれきの量は、２０００万トンなんですよ。今回東北３県で排出したがれきの量は約２２５０万トンとされてるんですね。阪神淡路の時は、そのうちの５０％が地元で処理されてるんですよ。例えば、がれきを住宅地の基礎部分に使ったりして、地元で処理をしていったという経緯があるんですね。
ところが今回、福島は別格なんですけども。放射能で汚染されたがれきとそうじゃないがれきを、私は分けるべきだと思いますけどね。そうすると、なんで野田政権は、旗を振って、それを他の地域でやろうとしているのか？しかも「そのコストは全部国が面倒見ますよ」と、言ったところが私は納得いかない。むしろ、地元で処理をしたほうが、お金をそこで落としたほうが、仕事も雇用も、私は確保できるんじゃないかなあと思いますね。
大谷：被災地の岩手県岩泉町の町長さんが「１０年、２０年かけて地元で片付けたほうが、地元にお金も落ちるし、雇用も発生すると。元々、使ってない土地もいっぱいあるので困らないのに、税金を青天井に使って、（がれきを）全国に運び出す必要がどこにあるのか？」とツイートしています。地元ではこういう声も上がっているということですね。
早川：色んなお金の話がでてきましたけど。福島がやっぱり特殊なのは「国と東電の責任である」ということなんですね。ですから、誰がまず最初に責任を負うんだっていうのが基本にあって。岩手、宮城とはニュアンスが違うんですよね。除染の話にしても「除染を事業として雇用の場を確保できる」という声もあるんです。マンパワーが必要なんですから。ただ県民感情として、自分の土地を汚されてね。「なんで被爆を覚悟する除染作業を僕らがやらなきゃいけないの？」という思いはあるんですよね。だからその辺は、岩手・宮城とは違うところなんですよ。
須田：私もね、実際に大阪のほうまで、除染を引き受けた建設業者の取材に行きましたらね。大体、３ヶ月ローテーションで社員を回していくっていうんですよ。これは、３ヶ月以上は精神的・肉体的にもたないであろうということがあって。もう１点は、今後、子供を産む予定のない社員や作業員を派遣するということなんですよね。ですから“被爆”と“除染作業”というのは、背中合わせの状況というのが一方であるんですよ。だからいま（早川さんが）言われたように、そのリスクを覚悟して「なんで地元で除染しなけりゃいけないんだ」という意識があるっていうのは、納得できますよね。
早川：ただね、いわゆる原発周辺地域じゃなくて。我々がいま生活を営んでいる場。ある程度、放射線量が抑えられてるところでは、子供さんもいますから。「子供のためなら、もう損得抜きでやりましょうよ」という話になっているところが、結構あるんですよね。このままじゃダメだとみんな思ってますから、たぶんやると思います。ところがそれのネックになっているのが、さっきの話で。「仮置き場」というのを設けることになってるんですが、仮置き場を設けたとしても、「そのあとどこに持っていくの？」って話は、まだ決まってないわけです。そこの話が決まらないと動けないんです。
須田：だからそのあたりがね、全部その場しのぎなんですよ。国がやってることは。話全然変わっちゃうんですけども。福島第一原発で汚染水が出てますね。メディアに公開された映像が流れましたけども。タンクがありますでしょ？たくさんあったじゃないですか。私、あのタンクメーカーに取材に行ったんですけどね。汚染水を出す蛇口がないんですよ、あれ。入れたら入れっぱなしなんですよ。「そういう注文はきてない」っていうんですね。つまり出続ける限り、タンクの中に汚染水を入れて「これどうするんだろうか？」っていうね。その先行きの見通しが全くついてないっていうのが、今の実態なんですよね。
小口：全部が想定外の事態で、後手後手にまわってしまっているというね。
早川：汚染廃棄物もそうですし、今おっしゃった汚染水もそうですし。今のままじゃ、貯めとくしかないんですね。放射性物質って消えませんから。だからそれをどうするのかっていうのが見えてこないですよね。技術的にも確立されてないんでしょうけども。だからこそ、そういう研究を早急に進めていかなきゃなんないだと思うんですけど。
小口：この瞬間にも、水は貯まっていると。だからどうするんだという話も本当はしたいんですけれどね。どうするべきなのか。
須田：だからそういった話って、既存メディアは、現地にいってなんでそういったことをきちんと取材しようとしないのか。知っているんであれば、なぜそういったことを報道しないのか。早川さんは新聞社ご勤務ですけど、東京のメディアの情報発信の仕方に、不満があるんじゃないですか？
早川：最近でいえばね、露出がめっきり減ったという。「そろそろ終わったら？」みたいな感じを受けますよね。
大谷：いまちょうど１年経ったという節目だからこそ、またクローズアップされはするけれどもっていうことですよね。
早川：これは福島県内の被災地の話なんですけど。「震災関連・原発関連の話は辛くなるから読みたくない」「もっと明るくなるようなニュースを伝えてくれよ」という声が確かにあるんですよね。ただ僕らがそういうシビアな話をドンドン書いていかないと、本当に終わっちゃうんじゃないかと。政府は去年に収束宣言をして、除染の工程表を出して、警戒区域を見直してと、スケジュールだけできてるんです。ところが実態は、除染ができないところですべてストップしてるわけですよね。実態を全く伴っていないわけです。その流れをほっといたらば、もう福島県は完全に分断・隔離されて、復興もおぼつかないような状態になってしまうと思うんですよね。
須田：ただこれは福島だけの問題じゃないと思いますよ。その行き着いた先が、福井県の大飯原発の再稼動の問題。政府としては“再稼動ありき”みたいなところで走ってるじゃないですか。要するに、福島の情報発信がドンドンドンドン希薄になっていて、その一方で「電力不足だ」とか「原発なくて、この夏持つのか？」みたいな議論になってる。これはもう意図的なもの、作為的なものを感じますよね。
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今、ボランティアに求められるのは、新しいアイデア
大谷：西尾さんにお伺いしたいのは。ボランティアの方が実際に被災地に行って、見方が変わったとか。参加されたボランティアの方々の思いをお感じになったことはありましたか？西尾：何日か、実際に活動に行って汗を流しただけで「よかった、よかった」と帰ってくる人は、ほとんどいないと思うんですね。口を揃えて言うのは「たいしたことはできなかった」「なにもできなかった」っていう学生が多いですね。福島の問題になると、飯館村の村長さんのボランティアをテーマにした講演を聴きに行ったんですけども。聴いていた人からの質問で「ボランティアをやるにしても、現場のニーズを捉えてないといけません。どんなことが必要とされてますか？」っていうのを村長さんに聞いたわけですよ。それで印象的だったのが「もちろんボランティアはありがたいんだけれども。本当に東京にいるみなさんにお願いしたいことっていうのは、現代文明そのもの、生活そのものを見直して欲しい。それが一番やってほしいことなんだ」って答えでした。恐らくそれと似たようなことを考えて、帰ってきてるんじゃないかなっていう気がしてます。
小口：今、ボランティアの人達に一番求められてることってなんだと思いますか？
西尾：やっぱり“アイデア”とか“発想力”だと思うんですよね。今までは、がれきがそこら中にあるから片付けろ、片付けろと。やることはすぐわかったんですけれども。じゃあ、一通り片付いてキレイになって、この先どうしていくのが１番いいのかってなると。例えばそれは「街づくりの問題」であったり「福島の問題」であったり、簡単には答えが見つからない問題ばっかりなんですよね。そもそも震災前からあった問題が、いま現地で出てきてて。それに対して、どう向かい合っていくのかっていうと。アイデアとかこれまでにない発想でやってかないと。なかなか活路は、明るい未来は描けないかなっていう風に思ってます。
早川：私去年、岩手県の大槌町と田老の被災地にいってきたんですね。もうやっぱり忘れないんですよ。テレビで見る映像ですとかね、新聞で読むことと違って、自分の目で被災地に立ってみると、忘れないんですよね、色んなことを。「忘れない」っていうのは、いま「風化」の話がでてきはじめましたけど、その「忘れない」っていうことだけでも、僕はいいんだと思うんですよね。ボランティアの人達が現地に行ってね。そこから何かでてくるんじゃないか・・・っていう気もしますし。忘れられるのが１番辛いですよね、被災地では。
大谷：早川さんは、報道する側でありながら、一方でご自身もそうですが、親戚や知人の方も被災者であり、大変な思いをされているという中で、葛藤とかっていうのはありましたか？
早川：僕らはね、１歩引いて見ている立場ですから。僕らより、すごい人いっぱいいますよね。例えば、避難地域の自治体の職員のみなさんとか、病院の看護士さんとか。もう原発のすぐそばで、ギリギリまで仕事なさってきた方がいっぱいいらっしゃって。避難している方もいますが、１９８万人は福島県内に残ってるんです。そこで色んなこと言われながら、現実に生活している。さきほどもいいましたけども、やはりそんな簡単に故郷は捨てられない。低線量被爆っていうのは、リスク管理の考え方ですから。その中で、色んな人々が選択しながら「生きて」「暮らして」いるっていうことをわかってもらえれば、ありがたいと思うんですけどね。
須田：そういった意味でいうとね。報道はキレイごとが多くてね。例えば、警戒区域から引越しをされて仮設住宅に住まわれてますよと。東京電力は引越しに類する費用として、１世帯に対して１００万円。その一方で、単身世帯に対して、７５万円の一時金を払ったんですよ。ところが、仮設住宅に取材に行ってみますとね。「あそこの家庭は２人で１００万円。うちは１０人家族で１００万円。これっておかしいじゃないか！」っていうね。お金を出したことによって、コミュニティが軋んでいる状況があってですね。東電や国は「お金をだしときゃいいだろう！」というところがあるし。地元の人の間では「東京のメディアは“絆”っていうけど、この当たりは絆なんてありませんよ」という話もでてきている。
小口：かといって、お金を出さないというのもね。
早川：いやもう、それはできませんもんね。だから、農家の高齢者の方なんかは、生活する術を失っているわけですから、社会保障っていうのは、きっちり速やかに行わなければならないんだと思うですよね。
須田：また農村のコミュニティというのは、元々お金を必要としていなかったんですよね。そこにお金がポンと出て行ってしまった。外部から見ると「毎日毎日、酒飲んだり、パチンコ行ったりしてあいつら遊んでて・・」みたいなね。そういう風潮が、元々住まわれていた人と仮設住宅の人の間にでてきているという部分がありますよね。
早川：やっぱりね、時間がかかり過ぎてると思いますよね。全然、除染が進まないっていう状況っていうのを、早く解消していかないと。いま福島県民が求めてるのは“将来像”だと思うんですよね。これから来年までどういう風にして生きてくんだと。そのあとの年はどうやって生きていくんだと。福島県が復興構想を作ってますけども、完璧に抽象論なんですね。「再生可能エネルギーの蓄積」であるとか「絆の再生」であるとかっていう、抽象論の構想であって、全然イメージが浮かばない。「来年の生活どうしたらいいんだ」って、みなさん考えたいんでしょうけど、考えられないような状況が続いてるんですよ。須田さんがおっしゃったように、お金の話もそうですけども。もっと具体的なビジョンを出さないと、ドンドン社会が荒んでいってしまう気がしますよね。
須田：農作物って考えてみた時に。例えば「葉タバコ」なんて、福島では大量に生産されているんですが。福島県内の葉タバコって、もう作らなくても保証金がでるんですよ。ところが、福島県外の葉タバコって、作ったうえで、放射性物質が一定以上でなければ保障金ってもらえないんです。福島っていうのは、作らなくても（お金が）もらえる。やっぱりこれが、仕事を継続していこうっていう気持ちを低下させている。確かにお金を出さないといけないんだけれども、それだけでは問題解決にならないと、僕は思うんですけどね。
早川：（福島県）川内村はね、１月に帰村宣言をしたんですよね。その背景には、住民の人が、賠償金で生活をしてる、さらには村よりも都市部で生活してる。そういう生活が、もう１年以上続いてきて、やっぱり労働意欲が減退したり、故郷に対する意識が薄れてきたり・・。村長さんはその辺をものすごい気になさってて。やっぱり動かないと、コミュニティがダメになっちゃうなって。みんなひしひしと感じてると思いますよ、いま。
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被災地のニーズに国が対応できていない
小口：いっぱい質問をいただいているのでご紹介していきましょう。大谷：愛知県の２０代男性からです。「今回の震災では、除染を含めて賛否分かれる議論が多いと思いますが、福島民報の記者の中で１番割れた議論はなんですか？」ちょっと難しい質問かもしれないんですけれども。
早川：読者からは「低線量被爆っていうものが、安全なのか安全じゃないのか。スタンスを明確に取って報道しろ」ということがものすごい多かったですね。要は、１００ミリシーベルト以下の低線量被爆っていうのは、リスク管理の問題になるんですけども。そういうことを受け入れない人もいるわけですよ、世の中には。だから、立場によって話が変わってきちゃって。ただどっちかのスタンスに立つと、どっちかを切り捨てることになっちゃうわけですよ。これはものすごい大変な問題で。そのバランスの取り方には、今でもすごい苦労してます。
大谷：じゃあ、続いての質問。埼玉県の３０代男性から。「学生ボランティアは、卒業後も継続していますか？やはり継続的な支援は難しいですか？」ということなんですが、これは西尾さんお願いします。恐らく、実際に被災地へ行ったりして携わった学生の方がいると思うんですけれども。今年の春、卒業してからも、彼らがどうやって継続的に携われるかっていうところだと思うんですけども。
西尾：住んでる場所にもよると思うんですけれど。何度も何度も通い続けるっていうのは、今の日本の社会の中では、仕事をもっちゃうと、なかなか難しい面もあると思います。ですが、現地に行かなくてもできること、東京で出来ること、他の地域で出来ることがありますし。そういったところで学生たちも卒業後、自分の置かれた立場で出来ることを考えて、やっていって欲しいなと思いますし、やっている学生もいます。しかし、残念ながら、きれいさっぱり忘れてしまう学生も当然ながらいます。
須田：これね、ちょっと話が横に逸れちゃうかもしれないんだけど。原発の設置基準っていうのがあってね。もし事故が起こった場合に、人口１人当たり、どのぐらいの被爆量なのか？っていうことで決まってるんですよ。つまり過疎であればあるほど、原発っていうのは作りやすくなるんですね。ですからそれに伴って色んな補助金や交付金が仮に出たところで、過疎を改修して経済活性化することは許されていないんですよ。そうすると、今回の福島の問題っていうのは、ただ単純に除染をして原発が廃炉になる・・・これでよかったよかったじゃなくて。元々、ベースになっている「過疎である」とか「経済的な疲弊」といった問題をどう解消していくのか？これは原発が有る無しに関わらず、東北地方って経済的に厳しい状況に置かれていた地域が多いじゃないですか？そういった問題を、これから復興と同時に考えていく必要があるんではないのかなと。
大谷：また西尾さんに質問なんですけれども。東京都の３０代男性から。「今回、ＮＰＯの支援がどれだけの効果があったのかわかりません。報道されていないからなのでしょうか？それとも限界があったからなのでしょうか？」報道がそもそもそこに光を当てなかっただけなのか？それとも、出来たことに限界があったからということなのか・・・という質問なんですけれども。
西尾：今の日本のＮＰＯ・ボランティア、私たちも含めてなんですが。やってることを人に知ってもらおうという努力がまだまだ足りないなという風に思いますよね。いいことやって、現地でありがとうって言われて「ああ、よかったよかった」で終わらせるんじゃなくって。やってることをできるだけ多くの方にわかっていただいて、少しでも共感してもらって、支援をいただいて、活動をより広げていくっていうのが、大切かと思うんです。そのためには、知ってもらう努力というのをこれからも続けていかないと・・・と思いますね。
小口：やっぱり「ボランティア行ってきた！」ということを、声高らかに言えるような感じでもないんですよね。芸能人の方でも、ものすごいお忍びで行かれてた方もいますしね。
須田：よく議論としてね、大学生がボランティアに行った場合に「その活動を単位として認めるべきだ」っていわれるじゃないですか。あの辺りってのは、効果がでてくるものなんですか？
西尾：単位化は非常に難しい問題だと思います。やっぱりボランティアの１番大切なところっていうのは、誰かに命令されていくんじゃなくって、自分でやりたいと思って、利益を度外視して行くっていうところなので。そこでポイントとなってくるのが、コーディネーターの問題。きっかけは単位とか大学に勧められたからっていうのがあるにしても、学生たちのやる気とか問題意識をうまく整理して、引き出して、役に立つボランティアにしていく・・・っていうコーディネーターの役割が大事だし、それがあるからうまく機能するわけですよね。それ無しでやっちゃうと、破綻しますよね。
大谷：やっぱり欧米だと「ボランティア」とか「ＮＰＯ」って、市民権があって、ドンドンやっていったりしますが、日本では「アピールせずにこっそりやらないと」みたいなところがあると思うんですけど。それに比べて欧米だと、立場のある人とかお金を持っている人が、名前を出して、きっちり寄付していって、ＰＲしていくっていうところもありますよね。
西尾：そうなってくると“文化”とか“美徳”の問題が絡んでくるので、難しいですよね。
小口：私も学生時代に、阪神淡路大震災のボランティアに行きましたけど。戻ってきて就職活動の時に、担当の先生に「このボランティアのことは履歴書に書かないほうがいいよ」って指導されましたからね。「別にそれわざわざ言わなくていいから」って。
須田：言うとマイナスになるっていうことなんですか？
小口：恐れがあるっていうことだったんでしょうね。当時の感覚でいうと。
大谷：最近でもそういうのってありますよね。「ボランティアやったとかっていうのは、就職にちょっと・・」って。
小口：まあ、なんでも就職に結びつけるというのもどうなんだろうというのはあるんですけれども。
大谷：続いて、千葉県の２０代男性から。「１番伝わらなかった地元の声には、どのようなものがあるのでしょうか？」これはお２人に伺ってもいいのかなと思うのですが。
西尾：どうしても地震のイメージがあるので、東京にいると“被災者”という捉え方をしてしまいますけれども。当たり前ですけど、３月１１日以前も普通に生きていた方なので、それぞれ個性がある、特徴がある方なんですよね。それを“被災者”っていって、ひとくくりにしてみちゃうっていうところは、しょうがない部分もありますけれども。その中でたくましく、固有性を持って生きてる人達の姿っていうのが、もっと伝わると、東京にいる人とか他の地方にいる人達もそこから勇気付けられたり、動かされるものがあると思うんですよね。そういうのがもっと伝わるとよかったかなと思います。
大谷：早川さんいかがでしょうか？
早川：地元の声っていうよりも、地元の意識と国のズレってありますよね。要は、（福島）県内で求められていることが国にうまく伝わらないと。例えば、除染しかり。福島県に住んでる役人がいうんですよ。「国の対応遅いよね」って。とにかく遅いです。非常時なのに、通常時のやり方でやるわけですよね。役所ってそんなもんなのかもしれませんけども。ただ少なくとも、震災から１年間くらいは非常事態。今も福島県は非常事態ですけど。その非常時が、平日に半分戻ったみたいになってきて。地元のニーズっていうのに、国がうまく対応できてないっていう現象が今もずっと続いていると思いますね。
須田：国政を預かる政治家は、与党にしても野党にしても「現状をよく認識していない」という批判がやっぱり出てくる。「だって被災地に来ないもん！」という批判っていうのもあるんですけど、やっぱりその通りだと思います。
早川：来る来ないは別だと思うんですよね。どれだけ地元のニーズを、自分の部下を使って引き上げてるかっていうことなんでしょうから。やっぱり組織の動かし方として、そういう問題があるんだと思うんですね。今、福島県内で自主避難者も含めて、避難区域以外も賠償対象とするっていう風になったんですけども。以前はその部分が含まれていなくて、野党が提出して「基金」を作る法律が通ったんですよ。ところがその法律で、基金の造成が認められているにも関わらず、国は「そういうのは必要ないですよ。今は既存のもので出来ますから」って。必要あるから作ったんですよね。だから、基金に最初お金を入れなかったんですよね。最終的には入りましたけども。だから、その辺のズレっていうのがまどろっこしいっていうか。「なんでこんな時に普通の対応するの？」っていう感じを受けましたよね。それは今も続いてますよ。宮城も岩手も同じだと思いますよ。
須田：やっぱりね、現状を正しく認識することが大切だと思いますよ。正しく認識しなければ、誤解したまま、あるいは正しい情報を得ないで判断していたのでは、なんにも前に進んでいかないと思うんですよ。やっぱり正確に状況を認識することが大事だと思いますけどね。
小口：では最後です。私たちにできることは、なんだと思うのか。一言ずつ頂いてもいいでしょうか。まずは西尾さん。
西尾：非常に難しいですよね。出来ることは色々あると思うので、それをやり続けていくことだと思いますし。あとは「風化の問題」っていうのは、必ずでてくることだと思うので、自分の中でしっかりした問題意識を持つっていうのは大事だし。あともう１つは、自分がずっと記憶に留めて風化させないっていう思いを、色んな人に伝えていく努力も、また必要になってくるかなと思いますね。
小口：早川さんはいかがでしょうか？
早川：僕はやっぱり、今年が正念場だと思うんですね。避難住民をどうするのか？農林水産業をどうするのか？そういう現状を常に伝えていくのは、僕らの使命ですし、いわゆる在京メディアへの露出が少なくなるのに比例して、僕らは増やしていかなきゃなんないということです。それ（震災の記事）だけでは紙面が重くなっちゃうので、出来るだけ前向きに生きる人たちの姿であるとか、そういうのも合わせて伝えていきたいと思いますよね。
小口：最後に須田さん、お願いします。
須田：早川さんがいらっしゃってるんで、福島の件に関してだけ限定的に言わしていただきたいんだけれども。大前提としてはね、福島の人はなんにも悪くない！このことからすべてスタートして、物事考えていかなければ、僕はダメだと思うんですよね。加えて、経済の原理原則で物事を測るべきじゃないと。もとあった環境になるべく近づくためにはね、お金をたくさんかけてもいいんじゃないかと思うんですけどね。
あともう１つ言うならば、福島が体験したこと、経験したことっていうのを、やっぱり生かさなきゃダメですよ。そういったことをどうやってこれから考えていくのか。１０年後、２０年後じゃなくて、５０年後、１００年後の日本として、これをどう位置づけるのかと。なにも変わらずですよ、なんで大飯原発を、いとも簡単に再稼動しようとしているのか。この体験・経験がなにも生かされてないじゃないかと。本当に今の民主党政権って不思議でしょうがない。
既存メディアが伝えない被災地の真実の声。
「これからどうやって生きていくのか。福島県は将来像を求めている」と語る早川さん。「震災の記憶を風化させないために伝えていく努力が必要」と語る西尾さん。被災地をよく知るお２人だからこそ出てくるエピソードや言葉に、震災の重みを感じた１時間でした。３．１１から１年が経ったとはいえ、被災地の復興は、まだはじまったばかりです。ＢＬＯＧＯＳでは今後も、震災の記憶を風化させないために、引き続き、既存メディアでは知ることのできない被災地の現状を伝えていきたいと思います。
