この記事をまとめると

■ロシアのウクライナ侵攻に端を発して「第三次オイルショック」も噂される展開

■経済制裁によって産油国のパワーバランスが崩れて原油相場の上昇につながっている

■停戦協定が結ばれて次のステップへと世界中が進まない限りガソリン価格は下がらない

いつ「第三次オイルショック」になってもおかしくない状況

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから1カ月が過ぎた。経済がグローバルにつながる現在において、これはロシアとウクライナという隣国における国際紛争にはとどまらない。もはや「第三次オイルショック」につながるという声も出ている。

 オイルショックというのは1970年代に二度ほど起きた原油価格の高騰に端を発した経済的な混乱のことで、第一次オイルショックは1973年、第二次オイルショックは1979年に起きている。前者はアラブ諸国による中東戦争がきっかけ、後者はイラン革命がきっかけとなっている。いずれも産油国が当事者の紛争により原油の生産が抑制され、取引価格が高騰したことが世界経済にネガティブな影響を与えた事象のことだ。

 今回も、ロシアという大産油国かつ天然ガスの供給国が紛争当事国であることにより、世界の原油相場は大きく上向きに動いているのは、日々のガソリン販売価格の上昇で実感しているだろう。もちろん、日本におけるガソリン価格においては原油相場と為替というふたつが影響しているのは、ご存じのとおり。原油相場が上昇すると同時に、円安が進んでいるというダブルパンチが、ガソリン価格の上昇につながっている。

 円安になるということは、ドル建てでの支払い額を円換算したときに高くなってしまうということだ。そのため、輸入品の価格は上がってしまい、庶民の生活を直撃、負担が大きくなってしまう。一方で、輸出企業にとっては有利な部分もあって、政府は大胆な対応をしない傾向にある。せめて金利を上げるなりしてくれれば円安のペースも抑えられるかもしれないが、日銀が動く気配は残念ながらなさそうだ。

ロシアへの経済制裁により原油価格が高騰している

 今回の原油相場において特徴的なのは、産油国であるロシアが価格を引き上げているのではないことだ。むしろ西側諸国はロシアとの取引を減らすという判断を、経済制裁の一環として行なっている。こうして世界的な産油国のパワーバランスが崩れ、原油相場の上昇につながっている部分も無視できない。単純にひとつの事象を解決すれば原油相場は落ち着いてくるとは言い切れない状況になっている。

 また、世界的なカーボンニュートラル・トレンドを考えると中東産油国による増産も期待できない。ニーズが減っていくのが見え見えであれば、少しでも高く売ろうというインセンティブが湧くのも当然だからだ。もちろん、世界経済が恐慌的になることは産油国にとっても歓迎できないわけで、そのあたりのバランスを見ながらの供給になっていくわけだが、いずれにしても相場を大きく押し下げるようなことは起きづらいといえるだろう。

 結論からいえば、しばらくは原油相場が下がることは考えづらく、すなわちガソリン価格も高止まりのままとなる可能性が高い。とくにロシアのウクライナ侵攻がなんらかの結論に達するまでは、世界中が対応策を見出すことができず、結果的に原油高騰を様子見するといった状態が続くだろう。

 逆にいえば、ロシアとウクライナの間において停戦協定が結ばれ、次のステップへと世界中が進めるようになれば、原油相場にも大きな動きが出てくる可能性もあるが、はたして1週間後の未来も読めないのが、まさに現在の状況といえる。

 日本においては、原油価格の高騰とロシアからの天然ガス供給が読めないことで、電力ミックスのバランスを見直す動きが出始めていている。簡単にいえば、化石燃料による火力発電の比率を下げざるを得ない。すなわち、良し悪しは別として原発再稼働を求める声も大きくなり始めているのは事実だ。

 原油価格高騰の対応策として原発再稼働が始まれば、一気にエネルギーミックスも変わるであろうし、自動車においては電動化を推し進めることになる。そうなったときにガソリン価格を安定させることに補助金を注ぎ込むか、それとも電気自動車に普及に補助金を投入するのか。はたして、日本政府はどのような判断をするだろうか。