Masahiro Sano Xpeira PRO-I

ソニーは2021年10月26日、1.0型のイメージセンサーを搭載した新しいスマートフォン「Xpeira PRO-I」を発表しました。2020年に発売された「Xperia PRO」に続く、プロやセミプロを対象とした「PRO」の名前を冠したモデルを、早速触れて試すことができました。

簡単にXperia PRO-Iについて振り返っておきますと、同社のフラッグシップモデル「Xperia 1 III」をベースにしながらも、カメラ機能をさらに一層強化した、ある意味“カメラ全振り”というべきモデルとなっています。メインカメラに高級コンパクトデジタルカメラ「RX100VII」に搭載されているイメージセンサーをベースとした1.0型のイメージセンサーを搭載し、さらに独カール・ツァイスのZEISS Tessar T*レンズを採用したことが、その象徴といえるでしょう。

▲「Xperia PRO-I」の背面外観。1.0インチセンサーを搭載しているが、カメラのサイズは出っ張りは思いのほか小さい

もちろん1インチセンサーを搭載し、レンズにもこだわったスマートフォンとしては、既にシャープの「AQUOS R6」や「LEITZ PHONE 1」が先行しています。ですがXperia PRO-Iはイメージセンサーに像面位相差AFを搭載しており、瞳AFやAF/AE追従の20コマ/秒高速連写に対応するなど動いている被写体も綺麗に撮影できる点や、F値を2.0と4.0に変更できる点、そして1.0インチセンサー搭載の焦点距離24mmのカメラだけでなく、別途16mmと50mmのカメラも搭載しているなど、幅広い撮影シーンと表現に対応できることが強みとなっています。

▲イメージセンサーに像面位相差AFを搭載し、瞳AFやAF/AE追従の20コマ/秒連写に対応するなど、Xperia 1 III同様動く被写体に非常に強いのも大きなポイント

▲F値を2.0と4.0に切り替えることが可能で、撮影シーンに応じたボケ具合の調整も可能だ

またXperia PRO-Iは写真だけでなく動画撮影もかなりの強化がなされているようです。実際Xperiaシリーズで初めて動画撮影での瞳AFやオブジェクトトラッキングに対応、動画撮影時も動く被写体に強い性能を備えたのに加え、新たに4Kでの120fpsでの撮影にも対応し、スローモーション映像にも対応できる滑らかな映像撮影が可能となっています。

▲動画撮影時も瞳AFなどに対応し、動く被写体にしっかりフォーカスを当てての撮影ができるようになっている

アプリに関しても新たに「Videography Pro」というアプリを用意。思い立った時にすぐ、正確に撮影できる工夫がなされているなどVolggerなどの利用を意識した撮影のしやすさに力が入れられているのに加え、マイクを前面だけでなく、背面にも用意するなどハード面でもVloggerの利用を意識した工夫がなされています。

▲Vloggerなどをターゲットとした新しい動画撮影アプリ「Videography Pro」も用意。ズームやマイクの切り替えだけでなく、撮影中にさまざまな設定を変更しながらの撮影が可能だ

それに加えてXperia PRO-Iに向けては、Vlogger向けの専用アクセサリーも用意。メインカメラでの自撮りがしやすいよう、背面に設置する専用のディスプレイが提供されるなど、かなりVloggerを意識した内容であることが分かります。

▲Vlogger向けの専用アクセサリーも用意。3.5インチディスプレイを背面に装着することで、メインカメラを使って自分撮り撮影が可能になる

実際に使ってみた感想としては、「これはスマートフォンというよりカメラだ」という印象です。もちろんスマートフォンとしての機能を備えてはいるのですが、どちらかといえば5Gで写真を高速伝送したり、SNSに投稿したりといった補助的な使い方が主体では……と考えられる程。コンセプトとしてはかつてパナソニックが販売していたAndroid搭載デジタルカメラ「DMC-CM1」に近く、それに加えて動画撮影も強化するなど、時代に合わせた進化を遂げたデバイスといえるのではないでしょうか。

実際Xperia PRO-IのWebサイトを見ますと、スマートフォンとしてのアピールはわずかで、カメラのアピールに全振りしている様子がうかがえます。ソニーとしてはXperia PRO-Iをスマートフォンのラインアップとしてではなく、「α」「Cyber-shot」といったカメラの1ラインアップとして位置付けようとしているのでは、と感じてしまう程です。

ただそれだけに、Xperia PRO-Iはどういう視点で見るかによって評価が非常に大きく変わってくるでしょう。スマートフォンとして見た場合、確かに機能・性能は充実していますが、市場想定価格は19万8000円とLEITZ PHONE 1(18万7920円)をも超えており、「凄くても高くて買えない」という評価になってしまうかと思います。

ですが見方を変えて高級コンパクトデジタルカメラとして見た場合、Xperia PRO-Iの1.0インチセンサーのベースとなった、RX100VIIのソニーストアでの価格は執筆時点で15万9500円。それに約4万円をプラスしてスマートフォンとしての付加価値が付くならば、「安い」という見方もできるでしょう。

▲上がXperia PRO-Iの1.0インチセンサーのベースとなった「RX100VII」。ソニーストアでの販売価格は約16万円と、Xperia PRO-Iと大きく変わらない価格だ

そもそもXpria PRO-Iは、先に触れた通りプロやセミプロをターゲットとしたPROシリーズの1つであり、そのコンセプト的にも一般的なスマートフォンを購入する層は狙っていないことは確かです。ただXperia PROが映像のプロ向けにかなり特化した仕様であったのと比べると、Xpria PRO-Iはカメラ愛好家やVloggerも狙うなど対象がやや広がっているのもまた確かで、初代Xperia PROと比べると消費者の受け止め方がやや違ってきていることから、よりスマートフォン寄りの評価がなされている可能性があるのが気になります。

「凄いけど高いスマホ」と評価されてしまえば途端に消費者から受け入れられなくなってしまうだけに、ソニーがXperia PRO-Iを販売する上では、あくまでカメラとしての機能や性能を求める人達をターゲットとしていることの明確なメッセージを打ち出したプロモーションが必要でしょうし、そのためには「これはカメラだ」と言い切れるくらいのぶれない姿勢が求められるのではないでしょうか。

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