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「迷惑ばかりかけているニートの長男を追い出すことはできますか」。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられている。

相談者によると、息子はまったく働かず、「人に迷惑をかけるのが生きがい」だという。

相談者の怒りが頂点に達したのは、娘(息子にとっては妹)がお見合いしたときのことだ。妹のみにお見合い話がきたことに腹を立てた息子は、相談者に「自分にも見合いを斡旋しろ」などと言っていたという。

娘の見合いはうまくいき、見合い相手とデートに出かけるようになった。ところが、息子がデートの場に押しかけるなどし、最終的に縁談は破談に。

「娘も私も怒り心頭で、親子の縁を切りたいと考えていますが、家から出ていってくれません。どのようにすれば、合法的に退去させられますか」と相談者は聞いている。河内良弁護士に聞いた。

●親の扶養義務はどこまで?子どもが「成熟しているか」が重要な要素

ーーそもそも、親は子どもに対して、どのような義務を負っているのでしょうか。

「まず、親であり子であるということは、法律上は『直系血族』ですので、お互いに扶養する義務があります(民法877条1項)が、それ以外のことは法律で明確には定められておらず、実務上の運用を参考にせざるを得ません。

また、扶養を受ける者と扶養をする者の間で、扶養の内容や程度について見解の対立がある場合には、家庭裁判所による扶養調停(不調の場合は審判)の手続を利用し、裁判所の関与のもとで決めるほかに方法がありません。

一般的には、親の子に対する扶養義務は、特に子が未成年である間は重いものとされ、親自身の生活水準をある程度犠牲にしても果たすべきものと解されています。

しかし、子が成熟(「成年」ではない)している場合には、親の子に対する扶養義務は、前述のような重いものではなく、あくまで、親自身の生活に余裕がある範囲で果たせばよいものと解されています」

ーー単純に年齢ではなく、経済的な自立が期待できるかなど「成熟」度合いが重要な要素ということですね。

「はい。問題は、子が成熟しているかどうかです。ただこれも、当事者間に対立がある場合には一方の意向だけで勝手には決められず、最後は家庭裁判所の判断を仰ぐことになります」

●困ったら、早期に裁判手続の利用を

ーー今回のケースのように、子どもが自立しないことに加え、妹の縁談を破談に追い込むなど家族に迷惑をかける行為をした場合、追い出すことはできますか。

「結局のところ、親が所有権(自己所有の家の場合)もしくは賃借権(賃貸家屋の場合)を有する家から、その権利を行使して子を追い出す(=退去明渡しを求める)ことができるかという問題に尽きます。

扶養の内容および程度を定める一環と理解するなら、親の側から家庭裁判所に扶養の調停を申し立てることができますし、単純に明渡しを求めるなら地方裁判所もしくは簡易裁判所に明渡請求訴訟を提起することもできます。

最終的に追い出すことができるかどうかは、弁護士が決められることではなく、裁判所が決めることですから、早期に裁判手続を利用されることをおすすめします」

【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp