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時速300キロで新幹線が通過する光景を間近で体感させる研修について、JR西日本が見直しを検討していることが報じられている。

報道によると、この研修は、上下線の線路間にある作業用通路に入り、頭上を通過する新幹線の風圧を体感するもので、2015年に福岡県のトンネル内であった部品落下事故を受けて、これまでに29回実施し、200人超が体験したという。

石井啓一国土交通相が10月16日、「JR西のやり方について、効果もさることながら、安全性の確保や必要性について問題意識を伝えている」と述べるなど、騒動が大きくなり、JR西日本が見直しのコメントを出した。

このニュースを受けて、ネットでは「怖い」「危なそうだ」「何の意味があるのか」といった指摘が出ているが、このような研修に問題はないのか。今泉義竜弁護士に聞いた。

●「業務命令権の濫用と言えるような場合は違法」

「このような研修は問題です。使用者は労働者に対して研修の参加を含めた業務命令をする権限を有しているとはいえ、何を命じてもいいわけではありません。

業務上の必要性を欠く業務命令や、不当な動機・目的をもってなされる業務命令、合理性・相当性を欠く業務命令など、業務命令権の濫用と言えるような場合には違法となります」

具体的にはどのような点が問題になるのか。

「頭上を通過する新幹線の風圧を体感する研修は、何かその際に部品の落下事故でもあった場合には直接労働者の生命を危険にさらしかねないものですし、仮に安全が完璧に確保されていたとしても、労働者にとって過剰な精神的苦痛を与えるものです。

私もそうですが、駅のホームにいて、新幹線が通過する際の音や風圧に恐怖を感じる人は多いと思います。それを頭上で体験するということは人によってはトラウマになりかねない恐怖心を抱かせるものでしょう。

労働者をそのような危険にさらし精神的負荷をかけることが、『メンテナンスに対する勘所の醸成と作業の重要性』を認識させることにつながるとも思えず、必要性も合理性・相当性も欠く研修と言えるでしょう。違法性を帯びたこのような研修は直ちに廃止すべきです」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
今泉 義竜(いまいずみ・よしたつ)弁護士
2008年、弁護士登録。日本労働弁護団事務局次長。青年法律家協会修習生委員会委員長。労働者側の労働事件、交通事故、離婚・相続、証券取引被害などの一般民事事件のほか、刑事事件、生活保護申請援助などに取り組む。首都圏青年ユニオン顧問弁護団、ブラック企業被害対策弁護団、B型肝炎訴訟の弁護団のメンバー。
事務所名:東京法律事務所
事務所URL:http://www.tokyolaw.gr.jp/