iPhone SEで本当の勝者となるのは「iPhoneケースメーカー」

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3月31日にリリースされるiPhone SEを歓迎するユーザーの声が多い。が、もっと喜んでいるのは、iPhoneのケースを販売するメーカーだ。なぜなら彼らはiPhone 5sの在庫を、そのまま販売できるからだ。

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アップルの新たなスマートフォン「iPhone SE」について知っておくべきことは、見た目が「iPhone 5s」に似ているということだけではない。iPhone 5sと寸法が同じなので、使い古したiPhone 5sのケースが完全にフィットするのだ。コレクターにとって朗報ともいえる事実だが、本当の勝者は誰かというと、それはケースを製造するメーカー、だ。

アップルのエコシステムにおいてアクセサリーメーカーでいることは、簡単なことではない。時にアップル自身も参入する模倣合戦もあれば、適切な素材を使用しているかと眠れない夜を過ごすこともある。そして、次の年のiPhoneが今年のものに似た形になるのか、既存のケースを販売し続けられるのか、それとも新たなケースを製造する必要があるかといった不安もある。

スマートフォンを水没や子どもの手から守るビジネスに携わる人々にとって、新しいiPhoneのデザインには良い点と悪い点がある。メーカーは、慌てて新たなケースをデザインし棚に並べなければならないが、逆にユーザーからすると新しいケースを買わなければならいわけで、利益を生むのだ。

メーカーのひとつであるSpeck Productsのデザイン担当ヴァイスプレジデントのブライアン・ハインセクは、次のように言う。「われわれのケースデザインには複雑な生産工程が必要で、新たなデザインに対応するべく前もって増資を行った。新たなフォームファクターが発表されると、概してより高い需要が見られるのだ」

しかし、それは同時に、アップルが置き去りにしたモデルにしかフィットしない売れ残りのケースが多数つくり出されることを意味する。マーケットによっては売れ続けるケースもあるが、ほとんどががらくたの山となるのだ。

その点で、iPhone SEはこうした問題を実際に解決してくれる、初めてのiPhoneデザインなのかもしれない。

Otter Productsのスポークスマンであるジョーダン・ヴェイターは、「いま(iPhone 5のケースの)カラーヴァリエイション在庫は少なくなっているが、iPhone SE対応商品は十分にある」と語る。彼らは、ラベルを切り替えるだけで余分な在庫を抱えずに済む幸運な立場となった。

Pad & Quillのようなハンドメイドの高級な製品を専門とする企業にとっては、さらに喜ばしい。彼らは、iPhone 5sのケースの在庫をたくさん抱えている。これらの在庫は、本来ならば大きく売れ残るところだった。

もっとも、小さなデザイン変更ゆえに、ケースが使用できなくなってしまうことがある。Pad & Quillのホームズ氏によると、9.7インチのiPad ProはiPad Air 2と同じ寸法だが、アップル社は電源のオートオン/オフを制御するマグネットの位置を変えたため、Pad & Quill社は完全に新しいケースを作らなければならなくなった。

しかし、iPhone SEに関しては、彼も他メーカーも、単純に外箱に新しいメッセージを記せばそれで終わりである。

「すでに店頭の棚にある商品やわたしたちの流通センターにある商品については、パッケージに互換性に関する記載を追加しています」とヴェイター氏は語る。ハインセク氏は、Speck Productsも同様に「既存のケースが関連モデルに対応していることが明確になるようパッケージを修正している」と言う。そう、iPhone 5sのケースは、一夜にしてiPhone SEのケースとなるのだ。

フィッツジェラルドは「人生に第2幕はない」と書いた。だが、それはiPhoneについては言えないようだ。