まったくの期待外れだったトーゴ戦後の記者会見で、岡田監督は「相手がどうであれ、自分たちのやるべきことをするのが大事だった」と強調した。「相手がこうだからこのテストはできなかったとか、そういうことはない」と。

本音を包み隠すところもあったはずだが、W杯を見据えたテストは確かに行われていた。そのひとつが佐藤寿人の起用法である。

「ラスト15分で仕事ができる選手になって欲しいと要求している」と、岡田監督は言う。前半にして勝敗の決していたトーゴ戦でも、佐藤が呼ばれたのは後半31分だった。後半30分直前に出場した香港戦と同じように、ジョーカーとしての適正を問われたのだ。

所属する広島では揺るぎない得点源である。先発で出たい気持ちはもちろん強い。ただ、「それぞれの選手が与えられた役割のなかで、しっかり仕事をすることが大事だと思います」と佐藤は話す。「途中から使いたいと監督から言われているので、ウォーミングアップの持っていき方とか、試合の見方とか、イメージをしやすいところはあるんです。新鮮な気持ちというか、途中からでもやりやすいところはあるんですよ」。淀みのない口調には、求められる場所で勝負していく覚悟と、チームへの高いロイヤリティがにじむ。

香港戦ではいかにも彼らしいワンタッチゴールでネットを揺すったが、わずかなタイミングのズレでオフサイドになってしまった。トーゴ戦では本田のクロスに合わせてピンポイントのタイミングで飛び込んだが、シュートに結びつけることはできなかった。

「ケイスケ(本田)からのクロスの場面は、監督からひとつ作ったな、と言ってもらえました。でも、僕はひとつ決めたな、と言ってもらえるようにならなきゃいけないんです」

香港戦では中村俊と三度のアイコンタクトをかわしたという。残念ながらゴールには結びつかなかったものの、チームの大黒柱である背番号10との共鳴は今後につながっていくはずだ。「3回もあったのにごめんなと、俊さんには言われました」と、佐藤は表情を緩ませた。

ジーコが率いたドイツW杯のチームでは、直前のテストマッチで結果を残しながらメンバーから漏れてしまった。今回こそはという思いは強いだろうが、「チームでしっかり点を取ることが、代表につながっていくと思います」と、気持ちに力みはない。それが何よりも大切であり、決して簡単ではないことを、佐藤は経験的に感じているのだろう。二度目のチャレンジにかける男が、本大会開幕の残り8か月で再びサバイバルに加わってきた。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖