北海道日本ハムファイターズの後半戦は、首位・東北楽天との対戦で幕を開けた。前年覇者として、これ以上ゲーム差が開いてしまえば、そのメンツも台なしだ。しかし、栗山英樹監督(56)の“敵”はチーム内にも蔓延していた。
 「栗山監督の『選手を信じる』采配が裏目に出ています。特に斎藤佑樹に関しては、“決断しなければならない時期”に来ていると思います」(ベテラン記者)

 斎藤は毎年、「今年こそは」の期待を繰り返してきた。裏切られる度に栗山監督がかばい、矢面にも立ってきた。しかし、今回はそうもいかないようだ。
 前半戦の最後の対戦カードであるオリックスとの第2戦(7月11日)、斎藤は先発登板のチャンスを与えられたが、4回を被安打11、8失点と大炎上してしまった。
 問題は不甲斐ないピッチングだけではなかった。痛打を浴び続けた2回、斎藤は一塁ベースカバーに走らず、内野安打に…。一塁を守っていた中田翔が斎藤を一瞥する。ヤンキーが喧嘩を売るときのような鋭い目線に、斎藤は中田に「ゴメン」の素振りも見せずにマウンドに帰ったが、同時に、日ハムナインは完全に戦意を喪失してしまった。
 「その前に平凡な投手ゴロを捕った後、本塁に悪送球してしまった。斎藤は冷静さを欠いており、この時点で交代させるべきだったかもしれない」(担当記者)
 結果論だが、投手交代のタイミングを見誤ったのは、栗山監督の「斎藤を何とかしてやりたい。立ち直ってくれ」という親心も多分に影響していたようだ。同時に、日ハムファンは「斎藤びいき」に関するネット上での書き込みをし、栗山批判も殺到していた。

 不可思議な采配は、翌12日も続いた。この日の先発マウンドには、今季初登板となる大谷翔平が送られた。大谷は左大腿部の故障で長期離脱し、ようやく一軍に合流したところ。復帰後も主に代打での出場が続いており、首脳陣が常に心配しているのが、全力疾走したときの影響である。
 「栗山監督は大谷の一軍登録にも慎重でした。右足首痛でWBCを辞退し、今季は打者一本でペナントレースに入りました。アスリートとして、調整不足な点も多く、右足をかばって左足を痛め、その左足も全力疾走したときに、また再発の危険性を秘めています。今季、『投手・大谷』はいないものと判断したほうがいい」(スポーツ紙記者)

 投手としての調整はほとんどしていない。7月1日、イースタンリーグで1度投げたが、1回23球、1失点、2死四球と、本来の投球はまったくできていなかった。全力疾走できないのだから、調整は投手ウンヌンを語る前段階だ。肩がなまるのを避ける程度と見るべきだが、ファンにとっても一軍登板させるとは予想外だった。
 「12日の大谷は1回と3分の1を投げ、本来の姿からは程遠い内容でした。試合後、栗山監督は大谷を投げさせた目的を聞かれ、『打者の反応など、一軍でしか分からないものがある』と説明していましたが、聞けば、30球程度で交代させる予定だったそうです。その程度なら、投げさせなくても…」(同)

 昨季まで、栗山監督の“奇策”は、ことごとく的中してきた。その一例が先発投手の大谷を一番の打順で使ったことで、そこで一発が出て、チームのムードも盛り上がっていった。しかし、今季はむしろ裏目に出ることのほうが多い。
 「中田も打撃不振です。少しでも多く打席に立たせようとしたのか、8日のソフトバンク戦では1番で起用しましたが、3三振。中田も申し訳ないと、うなだれていました」(同)

 中田は一番で起用されることを直前まで知らなかったという。4番に強いプライドを持つ男に、栗山監督は「なぜ一番なのか」を説明する必要があったようだ。
 「あえて大人扱いしたとの見方もできます。いちいち説明されなければ分からない年齢でもないでしょう」(前出・ベテラン記者)

 中田の未熟さを指摘する声も聞かれたが、「4番の気持ち」は、向こう5年のチームの命運を決めると言っても過言ではない。順調に行けば、今季終盤、中田は国内FA権を取得する。日ハムはFA宣言する選手を引き止めない傾向が強く、権利を行使して残留を許された選手もいない。
 また、「阪神が狙っている、巨人が放っておかない」などの噂もある。ここに、大谷のポスティングによる米球界挑戦も重なるわけだ。
 「正捕手の大野奨太、クローザー・増井浩俊、左腕・宮西尚生もFA権を持っており、中継ぎの谷元圭介投手も6月にFA権を取得しました。シーズン途中でDeNAから黒羽根利規を獲得したのは大野退団に備えたのでしょう」(球界関係者)

 日ハムは選手構成が大きく様変わりする可能性も高い。中田、大谷を同時に喪失することになれば、営業目的で斎藤残留の可能性も出てくる。そのときは、ファンも容赦はしないはず。今秋、新球場の候補地が発表されるが、斎藤贔屓のチームなら、移転先の態度も変わってくるだろう。
 栗山監督は、斎藤に引導を渡さなければ、自分の身も危うくなる。