グループ首位のサウジアラビアを埼玉スタジアムで迎え撃つ11月15日のロシア・ワールドカップ・アジア最終予選。すでにホームのUAE戦で黒星を喫しているため、ここで敗れると、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の進退問題に発展することになりかねないが、オマーンとの親善試合を終えて、にわかに注目が高まっているテーマがある。

 はたして、FW本田圭佑(ACミラン/イタリア)はサウジアラビア戦で起用されるのか――。

 所属するミランで依然として出場機会を得られていないことに加え、オマーン戦後にハリルホジッチ監督が「本田は試合のリズムが足りないことが確認できた」と語ったことから、本田のスタメン落ちの可能性が報じられるようになっている。

 だが、オマーン戦での本田のプレーは、そこまで酷(ひど)かったのだろうか。

 たしかに後ろから潰されたり、ボールを失ったりシーンは何度かあったし、トラップが浮いてしまう場面もあって、かつての本田と比べれば、物足りない部分はあった。

 一方で、ペナルティエリア内でMF清武弘嗣(セビージャ/スペイン)とパス交換をした16分、続けざまにシュートを放った25分、FW齋藤学(横浜F・マリノス)にロングフィードを送った28分、ミドルシュートを放った57分の場面など、本田がチャンスに絡んだ回数も少なくない。

 FW大迫勇也(1FCケルン/ドイツ)が決めた2点目のゴールシーンでも、MF山口蛍(セレッソ大阪)からのパスを受け、タメを作って清武に預けたのは本田だった。

 個人的に採点を付けるとすると、「6」――。及第点のプレーに映った。

 大迫、清武、山口ら周りの選手たちの活躍があまりに鮮やかだったため、霞んでしまったかもしれないが、本田は彼らの活躍を引き出す一助となっていたように見えた。

 興味深かったのは、前線の選手たちの距離感、コンビネーションだ。

 右ウイングの本田がマークを引き連れてインサイドにポジションを取り、右サイドバックのDF酒井宏樹(マルセイユ/フランス)やトップ下の清武をフリーにする場面が何度か見られた。また、球離れも早く、ワンタッチ、ツータッチで周囲にボールを預け、前線に走り込んでいた。

 そうした関係性について、清武が明かす。

「昨日は圭佑くんの位置を見ながら、中に入ったら外に出るっていう距離感を大事にしていた。そういうふたりの距離感については、試合前に話をしていた。あのシーン(大迫の2点目)は、圭佑くんが中に入っていってくれて、僕が外に開いて、蛍も加わって。いい攻撃だったんじゃないかと思います」

 オマーン戦では左ウイングに入った齋藤も本田と同様、ややインサイドにポジションを取り(これは監督の指示だったようだ)、カットインからのフィニッシュよりもチャンスメイクに回る機会が多かったため、本田にシュートチャンスが巡ってきた。4本のシュートは、大迫と並んでチームトップの数字だ。

 フィニッシャーとしての役割に加え、セットプレーでの空中戦も強く、依然としてピッチ内での精神的な拠り所でもある。大一番となるサウジアラビア戦では経験のある本田が必要なのではないか。

 指揮官の発言も含め、批判があることを認識したうえで、本田はオマーン戦の翌日、こんなことを語った。

「批判もありがたいことだと思っているし、見返したいという気持ちがなくなってしまえば、サッカーを辞めるべきだし、本田はパフォーマンスを上げてきたとか、もう一度本調子に戻してきたって言われないといけないと思っているので、自分で強がって発言するだけじゃなく、実際に明らかに戻ったって言われることも重要だと認識している」

 これまで自らの力で道を切り開き、日本代表でのポジションを掴み取ってきた本田は、十分すぎるほど理解しているはずだ。もう一度絶大なる信頼を取り戻すのは、自身のパフォーマンス次第だということを。

 サウジアラビア戦は、2勝1分1敗でグループ3位につける日本代表だけでなく、本田にとっても正念場となる。オマーン戦で見せたようなアタッキングエリアでのコンビネーションでサウジアラビア守備陣をこじ開けて、勝ち点3と信頼を掴み取るしかない。

飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi