学生の窓口編集部

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アイスクリームやチョコレート菓子に欠かせない「バニラ」。あの食欲をそそる甘い香りが、牛のフンからも作れるのはご存じだろうか?

牛フンに水を加えて加熱すると、消化できなかった成分からバニラの正体・バニリンが取り出せ、従来の半分程度のコストで作ることができる。この研究が発展すれば、バイオ・プラスチックの実用化も夢ではないのだ。

■牛フン+水+熱でバニラができる

本来のバニラはつる性の植物で、実が香料に使われる。香料にするためには多大な労力が必要で、未熟なうちに摘み取った実を、

・30秒ほど熱湯につける

・昼間は日光に1〜2時間あてる

・夜間は毛布に包んで保管

を2〜3週間繰り返して発酵させる「キュアリング」を経て香料になる。実がチョコレート色に変色し、おなじみの「バニラの香り」を放つようになるのだ。

バニラの香りの正体はバニリン(C8H8O3)と呼ばれる物質で、アルコールなどと同じく炭素/水素/酸素から成り立つ有機化合物なので、さほど特殊な存在ではない。甘い香りが好まれ、アイスクリームなどのお菓子だけでなく、タバコや香水にも使われることが多い。

余談だが、バニラは香りだけで「味」はない。ときどき「バニラ味」と表記されたアイスクリームを見かけるが、これでは「味なし」アイスになってしまうので、ミルク味と表示すべきだ。

このバニリンを、ウシのウンチから取り出すことに成功したひとがいる。作業工程はきわめてシンプルで、

・牛フン1gに対し、水4mlを加える

・200℃で60分間加熱する

たったこれだけの作業で、牛フン1gから約50μ(マイクロ)gのバニリンが抽出できるのだ。

キュアリングによって作り出されるバニリンは5%ほどといわれ、対する牛フン・バニラは0.0005%と少ないが、材料はほぼ0円なので低コストで作れるのが魅力だ。200℃で60分も加熱すればバイ菌の心配もないので、食品や香水に牛フン・バニラが使われる日がきてもフシギではない。

ミルク+牛フン・バニラの、100%牛由来のアイスクリームも夢ではないのだ。
■合成バニラはすでに存在する

なぜ牛のフンからバニラが作れるのか? じつは牛に限らず草食動物のフンであればOKなものが多く、消化されずに排出されたリグニンからバニリンを作り出しているのだ。

リグニンは木材に多く含まれ、木の丈夫さに欠かせない物質であるのと同時に消化されにくい特徴を持っている。竹やワラなど固い細胞壁を持つ植物にも含まれるため、これらをエサにする動物のフンには、量の差はあれどもリグニンが含まれているのだ。

また、リグニンからバニリンを取り出す方法も「世界初」ではなく、合成香料としてすでに出回っている。最終的にC8H8O3であり、なおかつ衛生面などの基準をクリアしていれば、バニラから取り出したものと同様に食品添加物として扱われる。

おいしい!と食べているアイスクリームにも、木材から作ったバニリンが含まれている可能性もあるのだ。

リグニンはバイオ・プラスチックの原料としても着目されているが、解明されていない点も多い。牛フン・バニラの研究が、牛フン・プラスチックなどに発展することを期待しよう。

■まとめ

・牛のフンからバニラの正体・バニリンを取り出す研究がある

・水を足して加熱するだけの、カンタン作業

・草食動物のフンに含まれるリグニンが、バニリンの原料になっている

・研究が進めば、牛フン・プラスチックが登場するかも

(関口 寿/ガリレオワークス)