聴覚障害者が話の輪に入れる手話音声翻訳デバイス

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音声コントロールやジェスチャーコントロールは、現代の電子デバイスが力を入れて開発している分野だ。もちろん多くのひとにとってメリットがある技術だが、特にハンディキャップを持つひとにとっては、健常者とは比較にならないほどメリットが大きいのではないだろうか。

現在、クラウドファンディングのサイトINDIEGOGOにおいて、聴覚障害者のコミュニケーションを助けるツールが市販化のための資金を募集している。

UNIと名づけられたこのツールのコミュニケーション機能は双方向だ。まずひとつめは、聴覚障害者側から健常者へのコミュニケーション。手話をカメラで解読し、それを音声言語に翻訳して発話する。

もうひとつの機能は健常者から聴覚障害者へのコミュニケーション。音声をマイクで拾って、それを文字にして表示する。そうすることで、耳の聞こえないひとと、手話を知らないひとがスムーズに”会話”できる。

手になにも装着しなくても手話を解読してくれる

音声を認識して文字にするのは、スマートフォンではもうめずらしい技術ではない。当サイトで「聴覚障害者の通話をラクにする音声テキスト変換アプリ」という記事で紹介した技術もある。

それに対して、このアイテムの特徴としては、やはり手話を認識し、翻訳する機能だろう。これまた、当サイトでも「手話が聞こえる!Google Gestureが拓く次世代の扉」というタイトルで紹介したことがあるが、リストバンドを装着して手話を判読するアプリならすでに開発中のものがある。

しかし、このUNIは、手になにかを装着することなく、カメラだけで手話を解読するのだ。そこが新しいし、高度だといえるだろう。

おそらく、スマートフォンの能力だけで手話を検知して翻訳をするのは、負担が大きすぎると思われる(参考:「ふつうのスマホでジェスチャーコントロールが可能に?」)。

そこで、このUNIではタブレットと専用のユニットを併用している。現状ではタブレット端末のDell Venue 8 Proを表示部として使い、それをホールドするハウジングのなかに、カメラやモーションセンサーを内蔵している。なお、タブレットは今後AndroidoやiOS端末に対応していく予定があるという。

「手話」の壁は高い。聴覚障害のあるひとは、音が聞こえないこと以外なんでも普通にできるのに、健常者とのコミュニケーションがはかりにくくてもどかしさを感じることも多いのではないだろうか。それが、このデバイスがあれば、聴覚障害者でも”話の輪”に入れるのだ。

しかし、このUNI、現状(10月24日現在)INDIEGOGOにおいて資金の集まりぐあいがいいとはいえない。その理由として想像できるのは、すばらしい技術にはちがいないが、これが最終形にはならないことが予想できるからではないだろうか。

最終形はもちろん”手ぶら”でこれが可能になることだ。Google Glassのようなウェアラブルデバイスで手話通訳や音声の文字変換が可能になれば、タブレットはいらない。

しかも「Google Glassが聴覚障害者に見せる新たなセカイ」という記事で紹介されているように、すでに音声の文字変換は可能になっているようだ。手話の判別、音声化も、カメラも持つスマートグラスだったら、将来的に性能が向上すれば可能になるだろう。

しかしその際には、UNIが持つ手話認識技術や翻訳機能だって役に立つはず。質の高いコミュニケーションツールの完成のために、ぜひともさまざまな技術、ノウハウが融合していくことを期待したい。

*出典:INDIEGOGO -MotionSavvy UNI: 1st sign language to voice system-、MotionSavvy