外国人観光客7000人に聞く!期待以上だった活動トップ10(PIXTA=写真)

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円安、ビザ緩和を追い風に1000万人を突破。外国人が「期待以上」だった活動は何か。神社仏閣や富士山だけではない、最新人気スポットと誘致のための施策を紹介する。

■【期待以上だった活動5位:宿泊】
ファーストキャビン
――宣伝ゼロでも高稼働率「とんがったホテル」が受ける理由

秋葉原に昨年生まれた新しい宿泊施設が外国人観光客の人気を集めている。大手建築設計事務所プランテックグループのファーストキャビンが運営するファーストキャビン秋葉原店だ。

個室には窓もドアもなく、部屋と通路を隔てるのはスクリーンカーテンのみ。スペックを書き連ねると安っぽい簡易宿泊所のようだが、現実の施設は実にスタイリッシュ。ビルの空き室対策として開発され、飛行機のファーストクラスをイメージしてデザインされたファーストキャビンは、エントランスからフロント、大浴場、セキュリティ管理にいたるまでシティホテルと比べても遜色はない。

秋葉原店は大阪、京都、羽田ターミナルに次ぐ4番目の店舗。日本人利用率が高い羽田ターミナル1店をのぞけば、どこも外国人の利用率は22%におよぶ。

ただし、他店がアジアの客が多いのに対して、秋葉原店は客の出身国が幅広い。これまで利用した客の国籍は約20。ファーストキャビンではフロントに客の国籍の国旗を飾り、客を出迎えているが、秋葉原店では国旗が入手できず、スタッフが手づくりで対応することも多いという。

開業以来、宣伝広告を一切していないにもかかわらず、外国人客が押し寄せている理由を社長の来海忠男氏はこう分析する。

「外国人はとんがった個性やわかりやすいコンセプトを好むんですよ。行った先で面白い体験をしたいという志向も強い。その点、ファーストキャビンのコンセプトはラグジュアリー&コンパクト。海外にも例がない。中途半端なビジネスホテルに泊まるよりはずっといいと思ってくれているようです」

稼働率は上々だ。他店のオープン1カ月目の稼働率は45%程度だったが、秋葉原店はいきなり60%という数字を叩き出した。他店も80〜95%で推移している。料金は、4.4平方メートルの「ファーストクラスキャビン」が5500〜5900円、2.5平方メートルの「ビジネスクラスキャビン」が4500〜4900円。3000円台のゲストハウスがあるため、利用客にバックパッカーは少ない。宿泊費は安く抑えたいが、安心安全は確保し、貧相な部屋も避けたい。確実に存在するニーズをファーストキャビンはがっちりとつかんだ。

秋葉原店ではLCCをイメージに内装を変え、従業員の制服もJALやANAの客室乗務員風から一新。カジュアルでキュートなテイストを打ち出している。店舗ごとに周辺のマップを作成し、客に配布するといった個別のサービスも強化した。「この春には博多店もオープンします。東京への出店も加速しますよ。東京五輪前の4年間でじゅうぶん収益が成り立つ計算です」と来海氏。目指すは日本を代表するホテルブランド。五輪に向けて宿泊施設不足が懸念される東京で、ファーストキャビンが果たす役割は大きそうだ。

■ほかにもこんな場所、モノが人気

●カオサン東京ゲストハウス(東京、京都ほか)

相部屋が前提の格安バックパッカーズホステル。1泊あたり2000〜3000円台前半がメーンで、東京、京都、福岡、別府などに店舗を持つ。

●大江戸温泉物語(東京・台場)

縁日のようなインテリア、たたみの休憩処など日本的なものが揃う。簡易宿泊施設「黒船キャビン」(男性専用)も備えている。

●サクラホテル(東京・神保町ほか)

1994年創業。池袋、浅草、幡ヶ谷にもあり、年間約110カ国の外国人観光客が宿泊する。相部屋タイプのドミトリー(3000円前後)が外国人観光客に人気。

(ライター 三田村蕗子=文 尾関裕士、向井 渉=撮影 PIXTA=写真 (公財)東京観光財団=写真提供)