2013年05月14日 18:58


交流戦前までの戦いを終え、ライオンズは２１勝１６敗で貯金５という数字をマークした。最後の４連敗や３連敗などで一気に貯金を減らしてしまったわけだが、しかしこの交流戦の開幕というのは、チームを立て直すためには非常に良いタイミングだと思う。ペナントレースそのものの開幕と比較をすれば、それほどの緊張感はもうないだろう。だが交流戦ということでセ・リーグのチームと戦うという高揚感は選手にもあるはずだ。開幕時の勢いを再び取戻し、もう一度そつのない野球を見直していくには、まさに絶好のタイミングで始まる交流戦だと思う。

その交流戦の開幕、ライオンズに１.５差を付ける首位マリーンズは、セ・リーグの首位ジャイアンツと激突する。一方ライオンズは１６勝２２敗と負け越している４位スワローズが相手だ。マリーンズが首位対決で、ライオンズが４位との対決という状況を考えれば、この２連戦は２戦２勝を計算しなければならないだろう。交流戦は同一リーグ同士の対戦がないため、追い駆ける側からするとなかなかゲーム差を縮めていくことができない。となるとやはり、セ・リーグ下位チームを相手に星を取りこぼすことは許されない。

同一リーグ上位チームとの差は縮まりにくいが、逆に差は広がりやすい。連敗など喫してしまえば、その差は開く一方となってしまう。ライオンズは交流戦をそれほど得意とはしていない。上位に食い込むことはあるものの、だいたいは５割前後で終えてしまっている。交流戦からライオンズが巻き返していくためには、今季は最低でも勝率６割以上の数字を残さなければならない。昨季のように貯金２程度の数字では、好調マリーンズとの差は広がる一方となるだろう。

交流戦で善戦するためにも重要な役割を果たすのは、正捕手の存在だ。つまり炭谷銀仁朗捕手だ。正捕手とは本当に過酷なポジションだ。自分自身の練習に手を抜けないことは当然だが、それ以上に誰よりも早く球場入りし、そして誰よりも遅くまで残り対戦相手のデータの予習復習を繰り返す。記憶力や明瞭な頭脳がなければとても務まるポジションではない。しかもそれがこれからはセ・リーグが相手となるのだ。名前と顔、背番号さえ一致しない選手も出てくるだろう。その対戦相手の情報をしっかりと頭に叩き込み、投手陣を引っ張っていかなくてはならない。本当に大変なポジションだと思う。

だが炭谷捕手ならばきっとやってくれるはずだ。今季はチームにおける自らの責任感もより強く感じていると言う。その責任感とリーグ屈指の強肩、守備力を武器に、これからは炭谷捕手が緩み始めているライオンズの守備陣を立て直してくれるはずだ。とにかく何度も言うように、ここ最近のライオンズはエラーが多過ぎる。記録に残るエラーだけを数えても１試合で４つ記録した日さえもあった。これでは連敗をするのも当然だ。野球というスポーツは誰もが口にする通り、ミスをした方が敗れるスポーツだからだ。

さて、炭谷捕手だが今季はオールスターまでの前半戦、打率.２８０を打つと平尾博嗣氏のテレビインタビューで明言した。打撃コーチのアドバイスで力を抜いて打つようになるとそれがはまり、ヒットが続くようになったと言う。チームの勢いが下降線となってからは炭谷捕手の打率も下がってきてしまった。しかしこれは別の視点から見ると、炭谷捕手が打てばライオンズは勝っていたと言うこともできる。ということは炭谷捕手はディフェンス面だけではなく、投手が打席に入る交流戦では打つ方でも大きな期待が寄せられるということになるだろう。

この記事を書いている時点の炭谷捕手の打率は.２４１だ。ここから４分上げて.２８０に近付いていけば、ライオンズは再び上昇気流に乗っていくはずだ。８番打者とは言え、今季の炭谷捕手は打線のキーマンになっているとも言える。クリーンナップのような活躍までは求められないが、しかし炭谷捕手を中心に再び恐怖の下位打線を形成することができれば、ライオンズの得点力は再び好調時の水準に戻っていくだろう。

だが炭谷捕手に本当に求めたいのは、やはりディフェンス面の安定化だ。扇の要である炭谷捕手がしっかりと守備陣を締めていくことができれば、ライオンズはもっと安定した戦いを続けられるようになるだろう。炭谷捕手はこれから、まさに選手として絶頂期を迎えていく。この時期をライオンズの正捕手としてだけではなく、プロ野球の正捕手にまで成長することができれば、ライオンズにとってはこれほどの強みはない。平尾氏、炭谷捕手がテレビで口にしたように、ライオンズはやはり投手力のチームだ。そしてその投手陣を活かすも殺すも鍵を握っているのが正捕手炭谷銀仁朗なのだ。だからこそ筆者は交流戦をきっかけに巻き返していくためにも、炭谷捕手には今まで以上の活躍を期待したいと思っているのである。