将棋のプロ棋士とコンピューターソフトが戦う「電王戦」が2013年3月30日に行われ、佐藤慎一四段(30)が将棋ソフト「ponanza(ポナンザ)」に敗れた。

現役の男性プロ棋士が公式戦でコンピューターに敗戦するのは初めてで、関係者や将棋ファンの間に衝撃が走った。あまりのショックのためか、佐藤四段のブログが荒らされる事態に発展してしまっている。

前日には「ロクな形勢判断できないコンピューター叩き潰す」

「電王戦」は13年3月23日から始まった5人のプロ棋士と5種の将棋ソフトが対局する5番勝負で、30日の対局は第2局だった。

中盤までは佐藤四段が優勢だったが、12年の世界コンピューター将棋選手権4位という実力のponanzaに終盤一気に攻め込まれ、対局開始から約10時間経過した20時過ぎ、141手でponanzaが勝利した。

佐藤四段は対局後「強いと思った」「最後も大きなミスをしてしまって…途中はやれるかなと思った局面もありましたが、負けたのは自分の実力なので仕方がないです」とかなり悔しそうに語っていた。

対局前日、ブログで「1週間ってほんと早かった。そして色々考えるにはたくさんの時間だった。ともすれば、否が応にも真っ暗な闇に包まれそうになったりした」と不安な心境をのぞかせていた。

最後には「プレッシャーがなんだとか、そんな逃げ道は俺は作らない。明日やることは決まってる。ロクな形勢判断もできないコンピューターを叩き潰せ、だ。応援してくれる人の為、自分の為に、絶対勝つ」と決意の文章で締めくくっていた。コメント欄には応援の声が数多く寄せられたが、中には「ロクな形勢判断もできない〜」の部分について「まるで喧嘩のようで、冷静さを欠いた発言」「明らかに非礼」などという批判のコメントもあった。

「期待に応えることができなかった 震えが止められない」

結局佐藤四段が負けてしまった事で、「ロクな形勢判断もできないコンピューターに叩き潰されたわけです。自分がこう言われたら嫌でしょう?まずは自身の発言を反省してください」とのコメントが同じブログ記事に寄せられた。

その後も、応援と激励のコメントに混ざって「バーカ 惨めな敗戦さらしてんなよ まじプロって雑魚なんだなw30年間無駄な人生お疲れ様でした(笑)」「最悪です もう二度とプロを名乗らないで下さい 将棋ファンの願いです」「ただの売名目的でノコノコ出てくんじゃねーよ 将棋の長い歴史に泥を塗ったゴミ棋士」「26年もプロ棋士に拘った結果がこれ?早めに奨励会退会した方がマシな人生だったかもよ」などの中傷が大量に寄せられる事態となった。

佐藤四段は対局翌日の3月31日にブログを更新し、対局前日のブログに寄せられたコメントについて

「全て読ませて頂いたけれど 批判のコメント、当たり前だと思ってる。負けたときには覚悟してたし、自分が将棋ファンなら同じ気持ちかもしれない。これから頑張れ!って送ってくれた人もいて、感動した!って言ってくれる人もいて そんな風に思うなんておかしいよって 盤上には、臆病で弱気な自分が映ってたと思うのに そんな声をかけてくれる人たちの、期待に応えることができなかったから いつまでも震えが止められない」

と書き、弱気な内面をのぞかせた。

4月1日には自身の敗戦を分析するブログを更新。「時間を使わないで優勢の局面に到達できる力がなかった」「『勝つ為だけの準備』をしていた筈なのに、それを出すことができなかった」などと明かし、冷静な中にも悔しさをにじませた。

電王戦第3局は13年4月6日に行われる。対局するのは船江恒平五段と、12年の世界コンピューター将棋選手権で3位となった「ツツカナ」だ。