よしもとばななさん、台北ブックフェアで新作を朗読

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(台北 31日 中央社)「キッチン」(1987年、台湾版は1999年)で海燕新人文学賞を受賞した“癒し系作家”として広く知られ、ここ10年余りで台湾でも読者が増えている、よしもとばななさん(48)が31日、台北国際ブックフェアの座談会に姿を現し、自分の作品によって読者の皆さんの心の中に溜まっている物を吐き出すことができるならうれしいと語った。

よしもとさんの作品に登場する若い男女は誰もがみなセンシティブでメランコリック。ストーリーはそんな若い世代の一人称の視点でつづられる。男女にとって一番大切なのは恋。つらいことがあるとまず想うのは恋人。しかし、恋の始まりはいつも外見や興味頼み。悲しいことがあった時こそが真の交わりの始まり。――作品に登場するヒロインの視線からはこんな男女の恋模様が描かれる。

20歳代でよしもとさんが創作を始めた頃は、書くことで内心の鬱々としたものを晴らし、癒そうとした。それがいつのまにか逆に読者を癒していた。作品が読者に痛みを与え読者を励まし、心のうちに溜まった汚い物を吐き出させ、大空や時の流れのような大自然の要素によって心の中が癒され“復元”していくのだという。

よしもとさんは座談会の後で、東日本大震災を「経験した人、生きている人死んだ人、全てに向けて」書き下ろしたという新作、「スウィート・ヒアアフター」(2011年、台湾・中国語版は2013年)を自ら朗読、「命の輝きが、残酷で平等な世界の中で光を増していく」ことを心より望むと語った。