『やっぱりパンが好き!』山本あり/イースト・プレス
表紙ではありさん(右下)と、アコさん(左上)がうれしそうにパンを選んでいます。この二人がパンについて語りまくります。

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みなさんはパンが好きですか?

その昔、「ニッポン人なら米を食え」なんてCMがありましたが、パンだって大人気なことには代わりありません。先日にはとうとう家計の支出でパンが米を上回るというニュースも流れました。

かく言う私もパンが好きでして。今は好きが高じてパン作り教室にも通っていたりします。あえて機械で粉をこねるのではなくて手でこねるやり方を習っているのですがこれがなかなか難しく、機械でこねた生地に勝てなかったりするのが悩みだったりします。

そんな中、パン好きによるパン好きのためのパンが好きなコミックエッセイが出ました。山本ありさんの「やっぱりパンが好き!」です。作者の山本ありさんは晩ご飯のおかずを次から次へとつなげていく、つまり前日の残りものをごちそうにかえてリレーしていく「晩ごはんおかずリレー」の作者だったりします。

前書きで「パンが大好きで毎日食べても飽きない」と書いていたり、そもそも前作の「晩ごはんおかずリレー」の肩書きでも「パン愛好家」と書かれているだけあって、とにかくこの本で取り上げている量がすごい!

食パン、ベーグル、クロワッサンといった定番のパンから、パンベルデュ、シィスといったパンはもちろん、カレーパンやあんぱんなどの日本生まれのパンだってカバーされているし、コンビニで買えるパンだって載っています。その数71種+α。プラスアルファの部分は「世界のパン」として紹介されている部分だったりします。これが全てフルカラーで描かれているのですよ!

また、それぞれのパンについているキャッチコピーも秀逸です。

「海と畑が合わさったぁ!」 → パン・オ・ザルク
「春のお味が詰まってます」 → オリーブと春野菜のケークサレ
「マリー・アントワネットもびっくり」 → ブリオッシュカネル
「ワインバーならではの夜向きパン」 → 胡椒とフルーツのフランス

などなど、それぞれのパンの特徴をとらえたコピーがついています。

基本的には1つの見開きで1つのパンが取り扱われています。これを、作者の山本ありさんと友人のアコさんの2人が解説しまくるのです。解説といってもそのパンの歴史とかどういう場で食べられてきたとか、そういう細かいものじゃなく、二人がそのパンを食べてどう感じたかをこれでもかと語っているのですね。これがまあ二人とも美味しそうに食べて喋ること喋ること!

例えばAmazonにもイメージがあがっている、デンマークの伝統ペストリー「スモーケーア」のページでは……

「カスタードがたっぷり入って重量感バツグン!」
「!! 外生地はサックサク&ホロッホロ!」
「中はしっとり〜」
「外はデニッシュ生地なのに中はまるでパンプディングみたい〜〜!!」

と、それはもう二人ともパンが大好きだということが伝わってくるぐらい喋りまくるのです。個人的にパンの味わいにとってかなり重要だと思っている、食感についてもほとんどのパンで語られているところも食欲をそそります。

そう、読むとパンが食べたくなるのですよ! ここに出てきたパンは実在のものばかりなので、実際に買うことができます。というわけで、早速買ってきました(写真の2枚目)。

一番お手軽にどこでも買えるであろう、セブンイレブンで売られているバタースコッチです(購入したのはスイートバタースコッチという商品名でした)。お手軽に買えるのもそうなのですが、本文にあった「発酵バター使用。乳酸菌を加え発酵させて作るバターです」「味が濃くて香りがとってもよいの」という発言に、発酵物好きの血が騒いだのでした。

バターの甘い香り、ふわっふわしっとり生地……まさに二人が言う通りです。本文にもある通り、トーストもしてあっという間にいただいてしまいました。

ちなみに描かれているパンにはたいてい大きさ(←→9〜10cmみたいな)も載っています。そのパンが買えるお店情報は、下の欄外に店名と大まかな場所だけが記載されています。検索すればお店がわかると思います。関東のお店が中心ですが、時々神戸、広島、京都などが出てきたりも。あと、先ほどのバタースコッチの「コンビニパンも負けてない!」のページではセブンイレブンが載っていました。専門店だけじゃなく、コンビニで買えるパンが書かれているのはありがたく、そしてすぐに買いに行けちゃうのでちょっと危険ですね。

コミックエッセイ好きだけではなく、パン好きはもちろんのこと、美味しいパンを求めている人にもオススメです。さて、次はどこのパン屋さんに行こうかな……
(杉村 啓)