AKB48の魂と名前を襲名！ 選抜メンバー登場「AKB0048」放送開始イベントレポ
先頃放映の始まったテレビアニメ「AKB0048」もまた、実在するアイドルグループであるAKB48をモデルに、ストーリーはSF仕立てながら「芸能って何のためにあるの？」という本質的な問いを突きつける作品だ。ときは「星暦0048年」（いまから50年ほどあとの時代を想定しているとか）、銀河系では一部の地域を除き芸能が禁止された時代。そのなかにあってAKB48は「AKB0048」として復活、かつてのメンバーたちの魂と名前を継承（すなわち襲名）しゲリラ的にコンサートを行ないながら、芸能活動の弾圧に対し闘い続けていた。物語は、そんな彼女たちにあこがれ、同じステージに立つことをめざす少女たちを追う形で進んでゆく。
「AKB0048」の放映開始を記念して４月29日深夜、東京の新宿バルト９でイベントが開催され、その模様は全国各地の劇場にも中継された（ぼくは名古屋の劇場で観た）。そこでは、第１話のディレクターズカット版（オンエア版より５分超）と第２話が上映されたほか、第１話の上映前には原作・総監督の河森正治と声優の神田朱未、能登麻美子、白石涼子が、さらに第２話の上映前には、AKB48グループのなかから声優オーディションで出演が決まった選抜メンバー９人のうち渡辺麻友（園智恵理役）、仲谷明香（藍田織音役）、石田晴香（東雲彼方役）がそれぞれ登壇してトークを行なった（AKB48からは当初、佐藤亜美菜も出演予定だったが体調不良のため欠席）。
イベントではまず河森監督があいさつ。河森監督といえば「超時空要塞マクロス」が出世作だが、思えばマクロスも今回の「AKB0048」も“アイドルと宇宙戦争”を組み合わせたという共通点がある。監督自身、それを踏まえつつさらに新しい表現を目指したという。
「襲名」という形で、現実のAKB48と未来のアイドルグループを結びつけたのも目からウロコだ。前出の声優でいえば、神田は「９代目大島優子」、能登は「８代目小嶋陽菜」、白石は「５代目高橋みなみ」をそれぞれ演じている。襲名メンバーは実在するAKB48のメンバーのパーソナリティーを一部で模倣してはいるものの、だからといって完全に一致するわけではない。襲名メンバーの役に本人たちではなくプロの声優を抜擢したのも、そのズレみたいなものを楽しんでほしいという意図もあるようだ。これに対して襲名メンバーをめざす少女たち＝研究生メンバーの役には、似たような経験をいままさにしているということから、AKB48およびその姉妹グループであるSKE48、NMB48の現役メンバーが選ばれている。
現役アイドルが声優なんて……と不安に思う向きもあるかもしれない。だがぼくが観たかぎり、彼女たちの演技にはほとんど違和感がなかった。おそらく収録までにかなりのレッスンを積んだのだろう。パッと声を聞いただけではメンバーの誰がどのキャラを演じているのか気づかなかったのも、それだけ役づくりしているという証しだと思う。とくに佐藤亜美菜は、すでに何作かのアニメで声優経験がある（現在放映中の「坂道のアポロン」にも出演している）だけに抜群の安定感だ。
その佐藤演じる一条友歌ほか、園智恵理、藍田織音、本宮凪沙（演じるのはAKB48の岩田華怜）たちは幼い頃、芸能が完全に禁止されるなか監視の目をくぐってAKB0048のゲリラライブを観に行き、アイドルにあこがれるようになる。このアニメのキャッチフレーズである「“会いに行けるアイドル”から“会いに行くアイドル”へ」とは、まさにそんなAKB0048の活動を指したものだ。しかしこの場面やフレーズからは、現実のAKB48が昨年の震災以来続けている被災地訪問を思い出さずにいられない。訪問の様子は映画「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on〜少女たちは傷つきながら夢を見る〜」でもとりあげられていたが、それもあって、ドキュメンタリーとこのアニメには重なるところがあると思った、というイベントでの能登麻美子の発言にはうなづけた（ちなみに能登は「「DOCUMENTARY of AKB48〜」でナレーションを担当している）。
そんなふうに「AKB0048」はSFではあるものの現実とリンクしているところもたくさんあって、AKBファンにも十分楽しめる。リンクといえば、本作ではさまざまな場面で既存のAKB48の楽曲が使われている。イベントで神田朱未が語っていたように、どの曲が使われているか、それがストーリーとどうリンクしているのかというのも本作の見どころのひとつだ。そういえば、第１話では終盤、本宮凪沙（演じるのはAKB48の岩田華怜）が、親友の一条友歌と藍田織音を自転車で追いかけるシーンが出てきたが、それを観ていたらAKB48の「言い訳Maybe」のPVに登場する自転車レースを思い出した（この曲にかぎらずAKB48のPVには自転車がよく出てくる）。このように微に入り細に入りファンのツボを押さえた演出が心憎い。
さて、イベントでは、渡辺麻友・仲谷明香・石田晴香がそれぞれの役のコスプレで登場、眉毛までウィッグの色に合わせる力の入れようだった。とくに眉を濃いブラウンでくっきりと染めた石田は、りりしく見えると渡辺と仲谷から高評価を受けていた。
トーク終了後にはメディア向けに３人の写真撮影も行なわれた。このとき、それまで檀上で真ん中に立っていた仲谷が、撮影では渡辺に気を遣ってかそのポジションを譲ろうとしたところ、ほかの２人から「なかやん（仲谷）がセンターに立ちなよ」とうながされ、そのままカメラに収まることに。声優になりたくてAKB48に入った仲谷を思っての心配りだろう。「AKB0048」は女の子たちの友情物語でもあるけれど、こういう子たちが演じてるんだから、そこに絶対ウソはない！ と確信した瞬間だった。（近藤正高）
【関連】
※tvkやテレ玉などではすでにイベント当日の４月29日より放映が始まっている。そのほか放映情報は公式サイトでチェック！
・「AKB0048」公式サイト
※アニメ放映と並行して現在、スピンオフ作品が講談社の各誌で連載中。いずれも企画は秋元康、原作は河森正治・サテライトで、アニメ本編とは世界観を共有しつつ異なる時代を舞台にしている。講談社のサイトにも「AKB0048」の関連ページが設けられ、各作品を試し読みすることができる。
・『AKB0048外伝 とびだせ！AKBぜろぜろ女学園』――構成：三島ヒデユキ、マンガ：須賀達郎（「マガジンSPECIAL」連載）
・『AKB0048 EPISODE0』――マンガ：美麻りん（「なかよし」連載。単行本第１巻が発売中）
・『AKB0048 〜ハート型オペレーション〜』――マンガ：サブロウタ、シナリオ構成：天之ひるめ（「別冊フレンド」連載。単行本第１巻は５月11日発売予定）
・『AKB0048 宇宙で一番ガチなヤツ！』――マンガ：石坂ケンタ（「別冊少年マガジン」連載）
