公立小学校の内部。よく見ると、教室前方にアップライトピアノが置いてあります。ということで、ここは音楽室。

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クラス分けで騒然とした合同保護者会もようやくお開き。時刻はとうに夜9時をまわり、「ああ疲れた、帰りたい」顔の保護者たちは、足取りも重く、それぞれの教室にゾロゾロ移動し、引き続きクラス懇談会の始まりです。

我が子の教室に入り、一年生用の小さな椅子に腰掛けてしばらくしたところで周りを見回すと、教室の後方で立っている親が何人もいます。なぜかというと、夫婦揃って参加している家庭が複数あるため、クラスの生徒の人数分しかない座席数では椅子が足りず、立ち見組が出ているのです。そういえば、先ほどの全体保護者会でも、講堂の後方で立ち見する親が何人もいましたっけ。あとから聞いてみたところ、「重要な第一回保護者会だから、子どもは預けて、夫婦で参加しました」という親が何人もいることを知って、やや驚き。

さて、各クラスに分かれての懇談会では、新担任の自己紹介に始まり、時間割り発表、指導方針説明、校内で守るルールなどの説明があった後、クラス役員の選出へ。

担任が、「クラス役員の代表と副代表を各一名ずつ選出して下さい。担任は席をはずすことになっていますので、まずは、私の代わりに司会進行をして下さる方を決めねばなりません。どなたか進行役を……」あたりまで口にしたところで、「あ、はいはい。私やりますよ」と挙手したお父さんが一人。

こうして司会進行役となったお父さん、臆すことなくさっさと壇上に出てきて、黒板に「代表……さん、副代表……さん」と書き、「この……の部分に名前を入れなければ、みなさん今夜は帰れませんからね」と笑いを誘います。続いて、「どなたか、クラス役員の経験者がおいでですか? 体験談などお話頂きたく」と言うと、事前打ち合わせでもしておいたかのように、二名のお母さんが素早く名乗りをあげて、役員体験談を語り始めます。

「それでは、役員の仕事内容がわかったところで、我こそはという方は? 夏休みもクリスマスもイースターもカーニバルも学校は休み。役員の仕事なんて、大した量じゃありませんよ」と、司会役はまたまた笑わせます。すると、ある保護者が司会者に向かって言いました。「あなたはいかがですか?」
「いやいや、役員にならずに済むように、こうしてさっさと司会に立候補したんですよ。攻撃は最大の防御ですから」
そんな、本気とも冗談とも取れる会話が続く中、「副代表ならやってもいいですけど……」という男性の声があがりました。「副代表にさえなってしまえば、代表にならずに済みますし」。

「え〜と、実は、役員副代表になりたかったんですが、先を越されてしまったので、残った代表のポストに立候補します」という、別の男性の声が聞こえてきたのは、それから間もなくのこと。代表、副代表の候補者がそれぞれ簡単に自己紹介した後は、承認の拍手にて目出たく役員が決定。満場一致の拍手を聞きつけた担任が教室に戻ってきたところで、クラス毎の保護者会が終了です。

もっとも、クラス役員がここまであっさり決定したのは、延々続いた全体保護者会のせいで、誰もが一刻も早く帰宅したい一心だったせいかもしれませんが。
(柴山香)