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高出力、高回転化を実現

2023年、英国のスウィンドン・パワートレイン社は、ポルシェ『911』の964型および993型のM64エンジンに対応する4バルブのシリンダーヘッドキットを発表した。そして同社は最近、100台目のキットを出荷するという節目を迎えた。

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このキットは専門のエンジンビルダーによる使用を想定しており、高出力と高回転に耐えられるよう、エンジンの他の部分も改造する必要がある。


スウィンドン・パワートレイン社のシリンダーヘッド    スウィンドン・パワートレイン

オリジナルのM64エンジンは1気筒あたり2バルブだが、新しいヘッドは吸排気効率を高め、993型のレッドラインを6900rpmから最大1万2000rpmまで引き上げることができる。

英国グロスターを拠点とする改造・レストア専門のソーンリー・ケルハム社は、このキットを限定生産モデル『911ヨーロピアンRS』に採用している。同モデルはわずか15台のみが生産され、2種類のエンジンから選択可能だ。1つ目は標準の3.6Lエンジンで、最高出力385ps以上、最大トルク40kg-mを発生し、最高回転数は1万rpmに達する。もう1つは4.0Lで、430psと45kg-mを発生し、最高回転数は9000rpmとやや低めに設定されている。

意外にも歴史ある4バルブ

1気筒あたり4バルブのエンジンの歴史は20世紀初頭に遡り、1910年のベンツ21/80hpがその初期の例の1つである。第二次世界大戦中のロールス・ロイス・マーリン航空機用エンジンにも採用され、1970年にはフォードがラリーホモロゲーションモデルであるエスコートRS 1600の16バルブBDAエンジンで話題を呼んだ。

1973年に登場したトライアンフ・ドロマイト・スプリントの2.0L 4バルブユニットは、最初期の量産4気筒マルチバルブエンジンの1つとして認められている。


ポルシェ911(993型)

したがって、4バルブヘッド自体は新しい技術ではないものの、ポルシェは空冷エンジンにはこれを採用しなかった(1970年代の空冷レーシングカー『935』や1980年代の『959』に搭載された、水冷式の4バルブヘッドを除く)。

マルチバルブヘッドは、シリンダー内に取り入れる空気の両を増やし、それに比例してより多くの燃料を燃焼させ、ひいてはより多くのエネルギーを生み出すという仕組みである。2バルブの4ストロークエンジンでは、1気筒ごとに吸気バルブが1個と、それよりも小さい排気バルブが1個ずつある。

混合気の流量は40%増

非常に大雑把に言えば、バルブは棒の先に板が付いたような形状をしている。カムシャフトによってバルブが開くと、シリンダーヘッド内のシートから持ち上がり、吸気ポートを開放させる。その際、バルブの周囲には「カーテンエリア」と呼ばれる筒状の領域が形成され、この大きさは「バルブ開口面積」として、シリンダー内に取り込める空気と燃料の量に大きく影響する。

吸気バルブが2個あれば、そのカーテンエリアの合計は、基本的にはバルブ1個の場合よりも大きくなる。これにより、エンジン内により多くの燃料と空気の混合気が取り込まれる。その結果、993型のシリンダーへのピーク流量は、オリジナルの2バルブ仕様に比べて40%増加する。


ポルシェ911(993型)

また、小型かつ軽量なバルブとスプリングを採用することで、高回転域での慣性モーメントを低減できる。スウィンドン・パワートレイン社のキットは、超軽量のチタン製バルブを使用することでこのメリットをさらに高め、安全に高回転を達成している。