※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年7月号からの転載です。

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 今回の舞台となる佐賀県は、過去には魅力度ランキングで47位になるなど、決して派手な土地ではない。しかしながら、400年以上の歴史を誇る有田焼・伊万里焼が世界に知られていたり、日本の近代化に貢献をした「佐賀の七賢人」を輩出したりするように、陰の実力者的な県でもある。そんな佐賀で暮らす人々の本棚を、少しだけ覗いてみよう。

■佐賀県立宇宙科学館《ゆめぎんが》スタッフの皆さん



『天動説の絵本』


地球が宇宙の中心である――天動説が信じられていた頃の人々を描いた絵本。そんな時代に、人々はどのように「地動説」へと辿り着くのか。「生誕100周年を迎えた安野光雅の科学絵本。天動説の時代を美しく緻密な絵で、物語のように描き出します」

『夏の星座博物館《新装版》』


実は星空観望旅行にぴったりな季節である、夏。この季節に楽しめるさまざまな星座の歴史、伝説、見つけ方のコツなどを総合的に紹介する。「話し言葉によるプラネタリウム解説の先駆者である作者が、夏の星座めぐりのコツを魅力的なイラストを添えて紹介する一冊です」

『2階から卵を割らずに落とす方法 科学の歴史を実験で振り返る本』


長きにわたる人類の歴史の中で、いくつもの大発見を成し遂げてきた科学者たち。そんな科学の歴史を振り返りながら、科学のロマンが感じられる一冊。「科学の歴史的なエピソードと、それを追体験する実験がセットで紹介されていて、身近に科学が感じられます」

[佐賀県立宇宙科学館《ゆめぎんが》]

〒843-0021 武雄市武雄町永島16351(武雄温泉保養村内) ☎ 0954-20-1666 

HP:https://www.yumeginga.jp

緑豊かな湖のそばに立つ、九州最大規模の総合科学博物館。宇宙船のような建物の中では、月・火星・冥王星の重力のジャンプ体験や実際の観測データに基づいた月面のVR体験など、最新の体験ができる。

■佐賀之書店の皆さん



『棕櫚の木の下で』(1・2巻)


同じクラスのかりんと出会ったことで、自分たちを取り巻く世界の可能性を知った、小学生のソテツ。ささやかな日常の美しさがここに。「小学生時代の4年半を佐賀で過ごした作者が描く、平成初期の佐賀の風景。何気ない毎日のきらめきにあふれたコミックス」

『わたしの旅ブックス 新・佐賀漫遊記』


『孤独のグルメ』原作者として知られる著者がどっぷりハマった、佐賀県。足掛け6年、県内を漫遊してきた記録をまとめた、一冊丸ごと佐賀の旅エッセイ。「佐賀のグルメ・観光地はもちろん、“佐賀んもん”との一期一会がいきいきと描かれた、佐賀愛特盛本」

『午前0時のラジオ局 満月のSAGA』


亡き恋人との思い出を引きずる佐賀大生・昇太が出合ったのは、「霊界ファックス」が届く不思議なラジオ局。演者として参加することになった昇太の運命は?「佐賀駅前のラジオ局(実在します)を舞台に描かれる、心温まる優しい物語。昨年、当店で一番売れた本です!」

[佐賀之書店]

〒840-0801 佐賀市駅前中央1-11-20えきマチ1丁目佐賀東館 ☎ 0952-97-4883

X:@Sagano_Book Instagram:sagano_book

2023年12月に佐賀駅構内に開店した書店。佐賀駅には2020年4月から書店がなく、約4年ぶりに駅構内での出店となった。直木賞作家の今村翔吾さんがオーナー、本誌「ブックウォッチャー」のひとりでもある本間悠さんが店長を務めている。

■ペンギンブックストア 店主 立石美伸さん



『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』

ファン・ボルム:著 牧野美加:訳

集英社 2640円(税込)

会社を辞めたヨンジュはソウル市内の住宅街に「ヒュナム洞書店」を立ち上げる。と、悩みを抱えた客たちが集まり……。韓国でベストセラーを記録した小説。「ちょうど本屋を開こうとしていたタイミングでこの本に出会い、小さな灯りに導かれているような気がしました」

『用心棒日月抄』


訳あって用心棒稼業に手を染める青江又八郎。日々の稼業に精を出す中、次第に浅野・吉良両家の争いに巻き込まれていき――。「正義感あふれる主人公、魅力的な脇役たち、サスペンスとユーモア。小説のすべてが詰まっています。激しい斬り合いの文章にも品があります」

『再生 西鉄バスジャック事件からの編み直しの物語』


2000年5月、17歳の少年によって起こされたバスジャック事件。そこで重症を負った著者が、子どもたちの支援活動を始めるまでを綴る。「事件後も、自分を傷つけた加害者としっかり向き合い、言葉を伝えようとする著者の、人間の大きさと温かさに圧倒されます」

[ペンギンブックストア]

〒841-0084 鳥栖市山浦町2621-43 ☎080-4448-6727

HP:https://www.penguinbookstore.website

2024年8月1日オープンの、新刊と古本の両方を扱う書店。カフェスペースを併設しており、イベントも実施している。本のマルシェ「旅する本屋」を各地で開催予定。

■あの町と本にまつわるアレコレ

 佐賀県は誰もが知る大物作家を輩出してきた土地だ。たとえば、国民的マンガ『サザエさん』。その生みの親である長谷川町子は佐賀県多久市の出身であり、県民が誇る存在になっている。また、大ヒットマンガ『キングダム』の作者である原泰久も、佐賀県に生まれたマンガ家のひとり。2026年1月には佐賀県と『キングダム』による大々的なコラボレーションも実施された。佐賀空港は期間限定で「佐賀キングダム空港」と呼ばれ、館内では「佐賀キングダム空港特別展」を開催。さらには、コミックス78巻までの全ページが掲出された全長300m超の「キングダム読破堤」、古湯温泉での周遊企画、市街地を走るラッピングバスなど、魅力的なコラボが次々と実現されていった。実写映画のヒットも相まって、もはや世界中で愛されるコンテンツとなった『キングダム』だが、なによりも地元の人たちに愛されていることがわかるだろう。

 小説家でいうと、まずは『水滸伝』『チンギス紀』などの北方謙三が有名だ。それから、『ビオレタ』でデビューした寺地はるな原作による映画『架空の犬と嘘をつく猫』は、全編が県内で撮影されたことで話題を集めた。

 佐賀県出身の作家は、生まれた土地に還元するような活動をしていることが目立つ。きっと、そこで育った時代が豊かな思い出としてそれぞれの胸に残っているのだろう。

『サザエさん』(全68巻)


『架空の犬と嘘をつく猫』


構成・文:イガラシダイ イラスト:千野エー