「四輪バイクへ最も近い仕様」 トライアンフTR8(2) ポンド高で開発は強制終了 弱点補う豪快な排気音
「四輪バイクへ最も近い仕様」
トライアンフのオーナーズクラブが主催した、1980年のサーキット・イベントへ、NWK 988Wのナンバーで登録されたトライアンフTR8は先行的に登場。工場で試作された量産仕様の1台も、別のスタッフによって持ち込まれた。
【画像】イングリッシュ・コルベットの異名 V8エンジンのTR8 スポーティなトライアンフたち 全146枚
同社で英国仕様のTR8の開発を率いたギャリー・オーウェン氏は、こう述べている。「四輪のバイクへ、最も近い仕様でした。驚くべき動力性能を誇り、コーナリングはオンザレール。240km/h以上でも余裕があり、運転を非常に楽しめましたね」

グリーンのトライアンフTR8 英国仕様プロトタイプと、シルバーの北米仕様
ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
開発は終盤にあり、高速走行で性能を確かめ、ファンへお披露目するのは望ましい挑戦といえた。実際、参加車両を大きく引き離すほど、圧倒的な速さを見せつけている。
ところが、ポンド高が急速に進行し、TR8の北米価格は高騰。親会社のブリティッシュ・レイランド(BL)は、トライアンフ・ブランドを立て直すべく、右ハンドル仕様のTR8の開発中止を決定してしまう。
資金を求めてオークションに出品された試作車
それまでに、NWK 988Wを含む22台の英国仕様の試作車と、先行的な量産版が3台作られていた。その多くは1981年8月以降、経営資金を獲得するべく、オークションに出品されているが、トライアンフがどれほど苦しい状況にあったのかを物語る。
対してシルバーに塗られ、LOC 238Xのナンバーを下げたTR8 ドロップヘッドクーペは、1981年に製造された北米仕様。電子制御インジェクションを搭載した、最終仕様でもある。スタイリングと同様にインテリアも、概ねTR7とイメージを共有する。

BLモータースポーツ・トライアンフTR8(1980年/英国仕様プロトタイプ) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
ただし、初代オーナーは西ドイツの駐留米軍に所属した、シェリル・ラムゼイ氏。北米仕様では必須だった、触媒は備わらない。ECUは、有鉛ガソリンに調整されていた。
NWK 988WのTR8とともに、現オーナーはリチャード・コニュー氏。彼は2000年に購入し、丁寧なレストアは2年後に仕上がったそうだが、アップグレードも加えられた。
多くの弱点を補う豪快なV8の排気音
3.5Lエンジンは、北米仕様は本来150psながら、ECUのチューニングで168psへ上昇。サスペンションは、英国仕様に合わせて強化されている。フロントの4ポッドキャリパーとベンチレーテッドディスクも、同様な改良といえる。
北米仕様のTR8が、どれほど柔らかいサスペンションだったのかは想像するしかないが、シルバーのドロップヘッドクーペは明らかにスポーティ。トルクの山は、2500rpmから4500rpmの間。排気音のマッシブな響きが、多くの弱点を補ってくれる。

トライアンフTR8(1979〜1981年/北米仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
ローバー由来のV8エンジンを積んだモデルの中でも、音響体験は特に魅力的。メカニカルな感触が好ましいシフトレバーで、5速MTを積極的に操りたくなる。シートは座り心地が良く、運転姿勢は理想的。メーターパネルには、6枚のメーターが見やすく並ぶ。
荒れたアスファルトで僅かにボディを震わせるが、サスペンションは想像よりしなやか。操縦性は引き上げられ、グランドツアラーとしての能力は低くない。4気筒エンジンのTR7とは異なるレシオの、パワーステアリングも効果的に印象を高める。
強い好感を抱ける積極的なトライアンフ
ポセイドン・グリーンに塗られた、NWK 988Wへ乗り換える。サスペンションはよりタイトで、路面の凹凸が明確に伝わってくる。素晴らしいサウンドに変わりはないが、走りは一段シリアス。5000rpmを超えても、パワー上昇が衰える素振りはない。
BLのモータースポーツ部門による、エンジンとシャシーのチューニングは、より高い速度域で真価を表す。ギア比はロングで、北米仕様のTR8より加速はやや穏やかだが、速度上昇とともに排気音は唸りを強め、ロケットのような猛進を楽しめる。

シルバーのトライアンフTR8 北米仕様と、グリーンの英国仕様プロトタイプ ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
より積極的に運転するほど、操縦性は精緻さを増す。制動力は同等に鋭い反面、ノーズダイブはより小さい。ボディロールも抑え込まれ、コーナリングでの扱いやすさも一枚上手。路面が滑らかなら、リアタイヤは頼もしくグリップし続ける。
もし筆者が開発担当なら、試作された英国仕様と北米仕様の、中間のようなTR8へ仕立てたかもしれない。より低い速度域で運転を楽しめる、バランスを求めただろう。しかし、積極的なトライアンフにも強い好感を抱ける。NWK 988Wのように。
協力:リチャード・コンニュー社、マーティン・マレー氏
北米仕様と英国仕様試作車 トライアンフTR8のスペックトライアンフTR8(1979〜1981年/北米仕様)
北米価格:1万3920ドル(新車時)/4万ドル(約680万円)以下(現在)
生産数:約2400台
全長:4178mm
全幅:1681mm
全高:1257mm
最高速度:217km/h
0-97km/h加速:7.7秒
燃費:6.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1207kg
パワートレイン:V型8気筒3528cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/5000rpm
最大トルク:22.7kg-m/3200rpm
ギアボックス:5速マニュアル/後輪駆動
BLモータースポーツ・トライアンフTR8(1980年/英国仕様プロトタイプ)
英国価格:−ポンド(新車時)/5万ポンド(約1050万円)以下(現在)
生産数:22台
全長:4178mm
全幅:1681mm
全高:1257mm
最高速度:241km/h
0-97km/h加速:5.6秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1207kg
パワートレイン:V型8気筒3528cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:273ps/5600rpm
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:5速マニュアル/後輪駆動

BLモータースポーツ・トライアンフTR8(1980年/英国仕様プロトタイプ) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
