記事のポイント 家電のシャークニンジャは750回以上の消費者テストで製品を改良し続けている。ハワード・ナック氏が新責任者として5つ星評価を追求する戦略を推進している。 美容分野やサステナビリティを成長軸に、カテゴリー拡大を加速している。
ハワード・ナック氏は、ビーツ・バイ・ドレ(Beats by Dre)、サムスン(Samsung)、スクエア(Square)といった企業で25年以上にわたりプロダクトデザインと開発に携わってきた人物だ。この夏、掃除機やキッチン家電で知られるシャークニンジャ(Shark Ninja)の先進開発・デザイン担当最高責任者に就任したナック氏は、同社ほど顧客テストや製品の再調整に力を注ぐ企業はほかにないと語る。製品は家庭で約750件のテストが行われ、さらに社内テストキッチンで専門家による検証や、オンラインでのフィードバック調査も実施されている。そのプロセスのなかで、デザイナーは頻繁に製品改良を重ねている。「あらゆる段階で、これほど多くの消費者テストを行っていることには驚かされる」とナック氏は話す。「もしテストで4.5つ星の評価が出て、『この変更をすれば5つ星にできる。そのために金型を変える必要がある』となれば、会社は実行する。私が在籍したどの企業も、そこまでやることはなかった」。ナック氏の就任は、シャークニンジャが製品ラインの拡大と顧客基盤の拡張を進めるタイミングと重なった。2025年8月に発表された第2四半期決算では、純売上高が前年同期比15.7%増の14億4000万ドル(約2260億円)超を記録。通期予測も従来の11〜13%増から13〜15%増へと上方修正した。同社の成長戦略には、新カテゴリーへの進出や、2024年大ヒットした「ニンジャ スラッシィ(Ninja Slushi)」のようなバイラル製品の創出が含まれる。また、キッチン、アウトドア、掃除用品、美容といった既存カテゴリーでのシェア拡大に加え、海外市場での成長加速もめざしている。Modern Retailとの対談でナック氏は、新たな役割や製品デザインの方向性について語った。とりわけ、製品を改良するために過去の投資をあえて捨てる姿勢の重要性を強調している。「最大の利点は、誰もが愛する5つ星の製品を世に出せることだ。そして、その製品が売れれば投資分はすぐに回収できる。問題は何もない」とナック氏は語った。本記事の内容は、長さと明瞭さのために編集されている。

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--このCスイート(上級管理職)の役職は新設されたものだ。先進開発・デザイン担当責任者とは、具体的にどのような仕事で、どのように会社に溶け込んでいくのだろうか?

私のチームでは、それぞれのリーダーを異なるカテゴリーを担当するスタートアップの創業者のようにみなしている。たとえば、スラッシィやお菓子、扇風機、掃除機、ブレンダー、調理器具など、本当に数多くのカテゴリーがある。私がこの会社で働くことに強い魅力を感じている理由のひとつが、このカテゴリーの多さだ。デザイナーにとっては夢のような環境で、幅広い分野に挑戦できる。スタートアップの創業者としてのリーダーたちは、単にハッキング(素早く解決策を見出すこと)やデザインを行うだけではない。彼らの役割は顧客体験の全体像を描き、「なぜその製品が存在すべきなのか」という根本的な理由を生み出すことだ。つまり、顧客や体験、デザイン、プロトタイプについて深く考えるだけでなく、「いくらで販売できるか? 市場規模はどのくらいか? 利益率はどうか?」といったビジネス的な観点まで踏まえたうえで、インダストリアルデザインや製造に落とし込む。さらに、最初の段階からどれだけ改善できたかを理解するために、一連の流れをまるごとやり直すこともある。非常にユニークな種類のチームであり、これをさらに強化できることに大きな期待を寄せている。

--シャークニンジャでは、デザインプロセスや製品テストはどのように行われているのだろうか?

常に「どこに課題があるか」「どうすれば解決できるか」という視点で取り組んでいる。すべては解決策を素早く見つけ出す「ハッキング」の発想だ。ただ座って理論をこねるのではなく、「実際に試してみよう」という姿勢で進めている。3Dプリントやスケッチを用いて迅速にプロトタイプを作り、社内の仲間やリーダー層、あるいは専門家(SME)を招いてテストを行う。また、専属の消費者テスターもいて、ひたすら試作と改良を繰り返すのだ。これは従来のインダストリアルデザインとも、製造エンジニアリングとも異なるアプローチである。インダストリアルデザインは製品の機能やユーザー体験、消費者からのフィードバックを重視する。一方、製造は「適切なコストで安定した品質を確保しながら生産できるか」という根幹の部分を担う。我々のチームは、その両者の中間に位置しているのだ。

--初期のコンセプトが機能しているか、あるいは機能していないかをどのように判断し、デザインプロセスにおいてもっとも重視している指標は何か?

アイデアを育むことが非常に重要である。誤った形で提示すれば、そこで頓挫してしまう可能性がある。たとえば、色の選択を誤るだけで失敗に終わることもある。そのため、我々は消費者検証を行い、場合によっては専門家を招いて徹底的なプレッシャーテストを実施する。彼らはそのカテゴリーを我々以上に深く理解している場合もあり、そうした知見がアイデアの磨き上げに役立つのだ。アイデアを検討する際には「これは素晴らしい製品になる」と感じることもある。しかし、そのあとで「製造コストが1台1000ドル(約14万5000円)かかり、しかも購入者は20人程度しかいないだろう」と判明することもある。逆に「200ドル(2万9000円)で製造でき、200万人に使ってもらえる」可能性があるなら、その価値は大きい。こうしたビジネス的な視点を持つことは極めて重要だ。ビジネスとして成立するのか、我々にそのカテゴリーに参入する権利があるのか、そして成功し勝ち抜けるのかを見極める必要がある。我々は無謀な挑戦をするつもりはない。常に既存カテゴリーの上に積み重ね、その強みをさらに伸ばしながら、活動領域を広げていくのだ。

--今後、シャークニンジャにとって新たなカテゴリーの機会はどこにあると考えているのだろうか?

我々が特に強気でいるカテゴリーのひとつが美容である。これはもっとも成長率の高い分野のひとつでもある。「ライオグロー(Cryoglow)」という製品はバイラルヒットとなった。この製品にはむくみを取る冷却技術とLEDが搭載され、さらに医療機器としての認証も取得している。そして、これをわずか21カ月で実現した。これは業界的にも前代未聞のスピードである。私のキャリアのなかでも医療機器の開発に携わった経験がある。通常、この分野では設計や認証のプロセスに5年から10年かかることが一般的だ。それを21カ月で実現できたのは、シャークニンジャが持つ俊敏な開発エンジンの力を如実に示すものだと考えている。

--製品開発戦略において、サステナビリティや環境配慮はどのような位置づけなのだろうか?

私は、ただ製品を大量に作るだけの会社には決して入社しない。それは、私が最初にマーク・バロカスCEOと話したときに確認した質問のひとつでもある。この会社の焦点は、製品をより長く使えるようにすることにある。そして、この20年間でその点を非常にうまく実現してきた。振り返れば、現在我々が作っている製品は、以前に比べて確実に品質が向上している。「長く使えること」こそもっとも大切である。壊れてすぐに捨てられるような製品は、ゴミとして埋め立て地行きになる。また、塗装プラスチックや接着剤で組み立てられた製品も、分解できないために結局は同じ運命をたどる。だからこそ我々は、製品がリサイクル可能であること、そして壊れた際に修理できることに注力している。修理可能であることは、我々にとって非常に重要だ。新しい製品を開発する際には、人々が1年で手放さず、長期的な価値を感じ続けられるように設計している。こうした考え方は、我々のすべてのデザインリサーチに織り込まれている。[原文:‘It has to be five stars’: Howard Nuk looks to supercharge SharkNinja’s design engine]Melissa Daniels(翻訳、編集:藏西隆介)