「体も疲れやすく、気持ちも常にイライラして、パートナーや子どもに八つ当たりのような言動をしてしまうこともよくあります。よい子育てをしたいと思って頑張っているはずなのに、これでは本末転倒ですよね」

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 パパ・ママの両方が幸せになるための子育てのアドバイスとは? 小児科医の成田奈緒子さんと、公認心理士の上岡勇二さんによる新刊『パパもママも知っておきたい 子どもが幸せになる「8つの極意」』(産業編集センター)より一部抜粋してお届けします。(全2回の1回目/後編を読む)


写真はイメージ ©getty

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無理をしても誰も幸せにならない

 ひと昔前は専業主婦のいる家庭も多くありましたが、今は共働きの家庭が増えてきています。働きながら家事も子育てもするわけですから、親御さんは本当に大忙しで大変ですよね。

 それにもかかわらず、すべてを完璧にきっちりやりたいと思ってしまう人(特にお母さん)が多いのは、真面目な日本人らしいといえばそうかもしれませんが、少々無理があるように思います。

 仕事から帰ってきて買い物をして食事を手作りし、子どもの習い事の送迎をし、宿題にも付き合って、子どもが寝てからはたまった家事と、持ち帰った仕事の続きをこなすような生活をしていれば、睡眠やリラックスの時間は必然的に少なくなります。

 仮に夫婦どちらかが専業主婦(夫)をしていたとしても、特に子どもが小さいうちはどうしたって手がかかりますから、忙しく気が休まらないのは変わりありません。夫婦がうまく分担して子育てと家事をこなせればよいのですが、残念ながら、どちらかに偏っていることも多いです。そうなると、負担の大きいほうは心も体もボロボロになっていきます。

 怖いのは、無理をしている自覚が親御さんにないことです。「子どものためにこれくらいやるのは当たり前」「ちゃんとやらないとダメ」と思い込み、自分の体調の悪化に気がつかないのです。

 しかし、心と体は確実にむしばまれていきますので、体も疲れやすく、気持ちも常にイライラして、パートナーや子どもに八つ当たりのような言動をしてしまうこともよくあります。よい子育てをしたいと思って頑張っているはずなのに、これでは本末転倒ですよね。

 また、なかには、「子どもを寝かせた後、気がついたらソファーで寝落ちしちゃっているんですよね〜」と、さながら武勇伝のように語る親御さんもいます。しかし、それは自慢できることでも笑いごとでもありません。そのような状態がずっと続くのは、心にも体にも決していいことではありません。

 どちらかというと女性に多い傾向がありますが、日本人は、子どものことに必死になりすぎてしまうように感じます。子どものことばかり考えていて、自分を置き去りにしてしまうのです。それが当たり前と思い込んでいるからかもしれませんが、知らず知らずのうちにストレスをため込んでいくのです。

 少しきつい言い方かもしれませんが、そのような子育てでは誰も幸せになりません。

きっちりしすぎないほうがいい

 子育てで無理をしすぎないためにも、子育ての軸を持つことが大変効果的です。必死になるべきポイントを3つだけ(寝る時刻と起きる時刻を厳守/死なない、死なせない/ご家庭独自のルール)にすると、判断に悩んだり迷ったりすることが激減するでしょう。

 なお、軸に関することは、基本、徹底してほしいのですが、「100%死守しろ」とまでは言いません。年末にNHK紅白歌合戦を見るために夜更かしをするとか、レジャーランドで夜のパレードを見るなど、軸1を守れないことが年に数回あったとしても、それは許容範囲です。

 ただし、寝る時刻や起きる時刻のずれは1時間程度にとどめておくようにしましょう。そして、「昨日は少し夜更かししたから、今日は絶対に早く寝ようね」と、翌日からはいつものリズムに戻すことを徹底してください。そこさえ守れるなら、神経質になりすぎる必要はありません。

 子育ては長期戦です。頑張りすぎて心と体に余裕をなくし、イライラ、ピリピリすると子どももパートナーもつらい思いをします。もちろん、一番つらいのは本人です。

 きっちりしすぎなくて大丈夫です。子育てはゆるーくやりましょう。

「子育ての価値観は昔の日本のまま」なのに“共働きが前提”…子育て中のお母さんばかりが「ハードモード」な納得理由【解決策も紹介】〉へ続く

(成田 奈緒子,上岡 勇二/Webオリジナル(外部転載))