中身はとんだ“爆弾”だった――

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【前後編の後編/前編を読む】日経女性記者の事件に「オレのことかと」 アラフォー秘書と不倫し警察沙汰…49歳夫が語る“沼のはじまり”

 日経新聞の女性記者が交際していた既婚男性にストーカー行為をして逮捕された。この事件に、伊沢隆造さん(49歳・仮名=以下同)は「他人事ではない」との感想を漏らす。彼自身、妻の智佳子さんとの間に2人の男子をもうけながら、40代半ばにして取引先企業の秘書だった当時37歳の奈美絵さんと関係をもち、警察沙汰になったという。彼の泥沼不倫のてん末は......。

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 奈美絵さんに溺れているうちはよかった。ハッと目が覚めたのは半年ほどたったころ。気持ちが少し落ち着き、うまく奈美絵さんが彼の日常に組み込まれたと気づいたときに「これはまずい」と思ったそうだ。

中身はとんだ“爆弾”だった――

「不倫ですよね、世間で言われている不倫。会社や家庭に発覚したら、人生終わりってことでしょう? いやあ、何をやってるんだ、オレはと思いました」

 だが彼女のひとり暮らしの部屋に、足が勝手に向いてしまう。1年が経過し、それが1年半、2年と積み重なってくると、奈美絵さんに対しても恋心以上の愛情がわいてきた。「このままではヤバい」から、「どうやってバレずに関係を続けるか」に思考はシフトしていった。

「つきあって丸3年たったころ、奈美絵が話がある、と。なんと彼女、妊娠したというんです。もちろん避妊はしていましたよ。彼女は『私は妊娠できない体質かもしれない』と言っていたけど、そればかりはわからないから、僕は避妊していた。でも妊娠したという。一瞬、僕の子かなと疑問を持ちました。でもそんなことはさすがに言えない」

 奈美絵さんは満足そうに笑みを浮かべながら、「私、産むから。あなたに迷惑はかけない」と言った。それはまずいと言ったが、「大丈夫。あなたとはこれきりでいい。私、最後のチャンスなのよ。もうじき40歳になってしまうんだもの」とお腹をさすった。

本音では「産まれてこなければ…」

 会社に未婚で子どもを産むともう告げてある。通常の産休育休はもちろんとれるし、何の不利益もない。彼があたふたしていると、私が産みたいから産むのに、あなたの許可がいるのと彼女は少し開き直った。

「子どものことを考えよう。もともと父親がいなくていいのかと言うと、『かまわない。いつか本当のことを話すわ。私があなたのおとうさんを心から愛していたから、あなたは産まれたのよって』と奈美絵が言うんです。なんだかその言葉にホロッときちゃって。反対はできないけど、賛成もできない。産むなら元気な子を産んでほしい。見守るしかないけどと伝えました」

 家庭には10代の子どもたちがいる。いくら妻の智佳子さんとの関係が円満だからって、外に子どもができると聞いたら、ショックを受けるに決まっている。家庭を自ら壊すことはできない。

「本音では、彼女に子どもが産まれなければいいと思った。こんなこと言ったら人としてどうかと思われるのはわかっていますけど……。もちろん堕胎してほしいなんて思ってはいなかった。だけど何かの力が働いて産まれてこなければ……と」

 隆造さんの“願い”が届いたのか、奈美絵さんはその後、流産した。それを知ったとき、隆造さんは「自分のせいだ」と苦しくなった。自分がそんなことを願ったから、彼女は流産してしまったのだ、と。

「彼女は数日間、入院しました。見舞いに行ったら、彼女は『よかったと思ってるでしょ』って。思ってないよと言うと、『あのときのあなたの、困ったなあ、産むなよとは言えないしなあと思っている表情、私は一生忘れない』と」

精神的に不安定位になった奈美絵さん ある時“事件”が

 本音を読まれていた。そして彼女はそれを恨んでいた。こうなったのはあなたのせいだからと無言のうちに言われた気がした。

「でも退院した彼女は、落ち着きを取り戻しました。時間があったら来てと言われていたので部屋に行ってみたら、『今日は特別、腕によりをかけて料理を作ったの』と。寒い日でした。かぼちゃの煮物やローストビーフなど、和洋いろいろな料理があった。共通しているのは、僕の好きなものばかりだったこと。彼女の気持ちが伝わってきました」

 今まで通りやっていこう。隆造さんは彼女を抱き寄せた。だがそれ以降、彼女の言動は変わっていった。以前はすんなり帰宅させてくれたのだが、帰ると言うと泣くようになった。必死になだめて、また来るからと納得させて帰るのが、隆造さんにはだんだんつらくなっていく。

「精神的に不安定だったんでしょうね。あるときなど、帰らないでって叫びながら外まで追ってきたことがあるんです。道行く人がみんな見ていて。さすがに彼女を抱き寄せてもう一度、部屋まで戻りました」

 そんなことが重なり、あるとき玄関で追いすがってきた奈美絵さんにカッとなり、「いいかげんにしてくれよ」と、彼は彼女の肩を足で突き飛ばしてしまった。大声を上げて泣く彼女をそのままに、彼は帰宅した。

「それからは電話攻撃が続きました。彼女は彼女で、いてもたってもいられなかったらしいんですが、激情をぶつけてくる彼女に対処できなかった。電話に出ないと、今度はLINEなどのメッセージが1日何十件も入っている。ただ、僕にも非はあるという思いから、完全に無視はできないんですよね。10回に1回くらいは返信してしまう。それがよけい彼女に期待を持たせたようです」

自宅の玄関前にダンボール

 最近、疲れているんじゃないの、大丈夫? 妻からそんな言葉をかけられたとき、いっそすべて打ち明けようかと彼は迷った。だが非のない妻に心配させたくはなかった。

「会社の前で待ち伏せされたとき、さすがにもう耐えられなくなって警察に相談に行きました。同時に上司にも打ち明けた。事件が起こって会社の名前が出てもまずいですから。警察は彼女に警告を出してくれることになった。その代わり、僕は一切彼女には連絡をとらないことを約束しました」

 彼女も社会生活を断たれたら困るだろう、だからこれ以上は追ってこないだろうと隆造さんは踏んでいた。確かに彼女は追うのをやめたようだったが、ある日、自宅の玄関前にダンボールが置かれていた。

「妻が見つけたんです。宛名がないから、配送業者が持ってきたものではない。気持ちが悪かったから、思わず警察を呼んで開けた。そこにあったのは、僕が彼女の家に残していたTシャツなどの部屋着とか、彼女にプレゼントした下着やアクセサリーやバッグなどでした。明らかに妻に暴露するためですよね。手紙ひとつ入っていなかったので、最初、妻は何がなんだかわからなかったようです。しかし、すぐに僕の女性関係だと察した。警察には、何でもないですと取り繕ったそうですが、恥ずかしさと怒りでどうにかなりそうだった、と」

あれから2年、妻は…

 それが彼女なりの決別の方法だったのだろう。もちろん、隆造さんの家庭はあっけなく崩壊しそうになった。

「妻にすべて白状させられました。でも奈美絵が妊娠したこと、僕が彼女を足蹴にしたことだけは言えなかった。あれは自分の中に、生まれ始めて芽生えた暴力性だったと言っても過言ではありません。僕、人に暴力をふるったことなんてないんですから」

 奈美絵さんのほうも妊娠したことは妻には伝えていない。それが彼女の最後のプライドだったのだろうか。隆造さんは、せめて子どもたちが大学を出るまでは、このままでお願いしますと妻に土下座した。妻は「わかった」と言ったが、それきり隆造さんとは必要最低限しか口をきかなくなった。

「あれから2年近くがたちます。妻は、話しかければ返事はするけど、心の内を見せなくなった。もう2度と許してもらえないのかなと尋ねたら、妻は『わからない』と一言。いっそもっと感情的になって怒鳴ったり泣きわめいたりしてくれればいいのに、本音が見えない。感情的にならないところが妻のいいところだと思っていたけど、有事の際にはそこがむしろネックでした」

 一方、勤務先が奈美絵さんの勤める会社と縁が切れていたため、彼女がどうしているのか、彼には知る術がなかった。

「でも去年だったかな、風の噂で結婚したとか。なんだか肩透かしを食らったような気がしました。結婚したことを、素直に祝福できない自分がいます」

 個人の心としては彼女のほうが傷ついただろうが、社会的家庭的には彼のほうが傷ついたと、彼自身は思っているようだ。もちろん、家庭があるのだからそんなことは最初からわかっていたはず。不倫をしたのは自分なのだ。夫を信じてきた智佳子さんの気持ちはどうなるのだろう。

「そうなんですよね……。わかっているけど、針のむしろみたいな家庭にいるのもつらいですよ」

 これからどうやって生きていけばいいのだろう。そして息子たちが大学を卒業したら、わが家はどうなるんだろう。隆造さんはそう言って、大きなため息をついた。

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【前編】では、奈美絵さんとの関係のはじまりについて紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部