朝専用の麺とスープを使用した、六厘舎の朝つけめん(筆者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第39回となる今回、訪れたのは「六厘舎」です。

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さまざまな外食チェーンで提供している朝限定メニュー。カフェやハンバーガーショップ、おそば屋さんなどはもちろんのこと、最近では焼肉店やお寿司屋さんなどでも独自のモーニングサービスを展開しています。

今回ご紹介するのは、つけ麺の名店「六厘舎(ろくりんしゃ)」の、「朝つけめん」です。

六厘舎の朝つけめんはつけ汁も麺も朝専用


朝メニューは、9時半がラストオーダー。9時45分でいったん店じまいして、10時から通常営業となります(筆者撮影)

「六厘舎」は東京で5店舗を展開する、つけ麺チェーンです。極太の麺と濃厚なスープが支持され、行列のできる人気店として、さまざまな媒体でも紹介されています。「朝つけめん」を販売しているのは、東京駅構内の東京ラーメンストリートにある店舗のみです。


店舗前のポスター。朝専用に開発されたあっさり食べられるメニュー(筆者撮影)

朝限定メニューの取り扱いがあるのは、オープンの午前7時30分から9時45分の2時間ちょっとだけ。9時半でいったんオーダーをストップして、10時から通常メニューでの営業を開始するというシステムになっていました。


朝専用のつけ麺メニューが4種類と、トッピングなどを販売しています(筆者撮影)

朝限定で販売しているメニューは4種類。

・朝つけめん 並盛 税込740円
・味玉朝つけめん 並盛 税込840円
・朝の生七味つけめん 並盛 税込840円
・特製朝つけめん 並盛 税込940円

いずれも、並盛から100円追加で大盛、200円追加で特盛にサイズアップが可能です。

朝の営業時間帯は、上記メニューのみの販売で、レギュラーメニューの取り扱いはありません。

朝から行列のできる人気店


六厘舎のとある店舗では、行列が問題になり閉店するという、人気店ならではの都市伝説のようなエピソードも(筆者撮影)

以前にも「六厘舎」の朝つけめんを食べたことがあり、その際に行列ができる人気店というのは知っていたため、朝の営業時間が終了する直前の9時20分頃に行ったのですが、それでも10人ほどの行列ができていました。

東京ラーメンストリート内には、朝からオープンしている店舗もチラホラあったのですが、行列ができていたのは「六厘舎」のみ。ちょうど入れ替わりのタイミングだったため、5分ちょっとで入店できました。

カウンター半分、テーブル半分の、20席ほどの小さな店内は満席です。客層は、夏休みを利用して東京に来たと思しき、家族連れやカップルが半分、仕事前のサラリーマンが半分という割合で、常連と思しき人もチラホラ。


東京駅一番街の一角にある東京ラーメンストリート。8店舗が軒を連ねる(筆者撮影)

カウンター席の男性客が、ものの数分で入れ替わっていくのに比べて、テーブル席は会話を楽しみながら食べ、スマホを見ながら食後の休憩をとっていました。

仕事に行く前に「六厘舎」でスタートを切る人と、旅先で朝食を取るための目的地として「六厘舎」がゴールとなる人という、両極端な客層が同じ料理を楽しむ、この対比が東京駅ならではなのかもしれません。

六厘舎の朝つけめん 並盛 740円


六厘舎の朝つけめん並盛740円。通常メニューよりも100円程度安めの価格設定になっています(筆者撮影)

「六厘舎」の「朝つけめん」は、朝限定のつけ汁と麺を使用しています。通常営業時に提供される看板メニューの「つけめん」は、しっかり煮込まれた超濃厚なスープと、極太麺が特徴で、「ガサツで荒々しく男らしいつけめん」と形容されるほど。

それと比べると「朝つけめん」は、重さを緩和して、朝でも食べやすい味に仕上がっていました。


行列の最後尾にはこちらの掲示が。店のルールがわからない、初めて利用する人でも不安なく並べます(筆者撮影)

食券を購入して着座してから5分ほどで、商品が提供されました。団体客と交代で入店したため、提供待ちが10人ほどいるオーダーが滞った状態だったのですが、行列のできる人気店だけあり、手慣れ感がすごい。

もちもちの食感を楽しめる、極太ストレート麺


朝つけめんの麺は、極太もちもちのストレート麺を使用(筆者撮影)

つけめんは、麺が太いためゆで時間が長く、ゆであがった麺をいったん冷水で締める必要があるため、配膳されるまで時間がかかることが多いのですが、「六厘舎」は、なんとも早い。厨房にいる、金髪で黒ブチメガネの青年スタッフが、つぎつぎとつけめんを配膳カウンターに並べ、中年女性ホールスタッフが1人でそれを運ぶ。見事な連携プレーです。

そして、商品を運んでいる合間にも、退店する利用客の「ごちそうさま」という声かけに「すいません狭いところ」とか「いつもありがとうございます」とか、その人に合わせた返事をしているのです。この混雑のなか、店内をしっかり把握されているのは実にすごい。


お箸でもちあげました。麺の太さがわかりやすい1枚(筆者撮影)

「朝つけめん」の麺は、ベージュ色のツヤツヤの麺が行儀よく折り畳まれて天の川のような美しさ。一般的には極太ストレート麺にあたるのですが、通常メニューのつけめんよりは若干細めのようです。つるっと食べるにはコシも強くて太すぎるため、噛み締めてもっちもちの食感を楽しみました。


具だくさんのつけ汁。旨味がしっかり染み込んだ、味わい深い仕上がりです(筆者撮影)

甘みと旨味が溶け込んだ、香り高いつけ汁

つけ汁の具材は、ねぎ、なると、メンマ、のり。具だくさんのスープの底には、極厚のチャーシューが2枚沈んでいました。朝に食べやすいように、スープのテクスチャーはトロトロではなくサラっとしています。しょうゆベースで、魚介だしが強めの味付けです。甘みと旨味が溶け込んだ、香り高い仕上がりでした。


とろとろのチャーシューは、厚切りで食べごたえがあります(筆者撮影)

脂身はとろけるチャーシューや、味がしみしみのメンマなど、ひとつひとつの具材もおいしく、行列ができるのも納得の味わいです。まさに「絶品」という言葉が似合う完成度で、朝から「これは……すごい」と驚かされてしまいます。

店内BGMは、津軽三味線のインストゥルメンタルが流れ、情熱的な速弾きに急かされながら、勢いよくかっ込みました。


卓上調味料。柑橘酢、コショウ、魚粉などが並ぶ(筆者撮影)

卓上調味料の七味をプラスして、風味をアップさせたり、柑橘酢を加えてフルーティーさを楽しんだり、最後はつけ汁をスープ割りにしてぐびり。大満足の一杯でした。

福島県や静岡県が発祥といわれる、朝からラーメンを食べる「朝ラー」という風習が全国に拡大し(諸説あり)、東京でも、早朝営業をしているラーメン店、つけめん店は多いのですが、朝限定のメニューがあるお店は案外少ないのが現状です。

「朝だけしか食べられない」特別感を楽しんで


朝だけしか食べられないという特別感が、最高の調味料(筆者撮影)

コロナ禍により、営業時間の短縮を余儀なくされた際に、「幸楽苑」や「一風堂」など、朝食メニューをはじめたラーメンチェーンもあったのですが、いつの間にか終了してしまいました。

「わざわざモーニングメニューをやらなくても、来る人は来る」ということなのかもしれませんが、「六厘舎」の系列店であるラーメン店「孫鈴舎(まごりんしゃ)」も、「朝らーめん」を提供しており、立地ややり方次第では、朝限定メニューにニーズはあるのではないかと感じています。


朝専用で開発されたスープは、旨味はたっぷりながら、重すぎず食べやすい(筆者撮影)

毎日食べるには重いのですが、たまに食べる「朝ラー」「朝つけめん」は、朝からジャンクな食事を食べるという背徳感がスパイスとなり、このうえないおいしさです。「朝用にわざわざメニュー開発した」という特別感のあるメニューだと、さらに幸福度と満足度がアップします。

「朝ラー」の人気拡大と、さらなる朝限定メニューの登場を、モーニングファンとしては切に願ってやみません。

編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)