推薦入試で受かる子・受からない子の差は?(写真: Fast&Slow / PIXTA)

かつて推薦・AO入試とも言われていた「選抜入試」。有名大学が募集枠を増やし、これからの時代のスタンダードにもなるかもしれない、と言われています。いったいどんな対策をとればいいのでしょうか。『選抜入試の教科書』を上梓した、現役東大生の西岡壱誠さんが解説します。

みなさんは選抜入試というものをどれくらい知っているでしょうか?

一般入試は学力を測るものでしたが、選抜入試は学力以外の面を評価する入試形態です。以前は推薦入試・AO入試と呼ばれていましたが、今は「推薦入試→学校推薦型選抜入試」「AO入試→総合型選抜入試」と名称変更がされるようになりました。

急速に増加する「選抜入試」

この選抜入試、実はかなり急速に増加しています。このままのペースでいけば、あと5年したら一般入試で勉強して合格する人よりも選抜入試を突破して合格する人のほうが圧倒的に多くなるのではないかと言われています。

それくらい、今の時期の大学受験は変革期に突入していますし、選抜入試は急激に拡大しているのです。

例えば、早稲田大学は、推薦型入試の募集枠を通常では考えられないスピードで増やしています。2026年までに全体の6割まで引き上げる目標を掲げているのです。

現在は一般入試が6割ですので、その数字が逆転するということです。早稲田大学といえば、やはり一般入試で合格する人が多いイメージがありますよね。それが逆転するわけですから、そのインパクトは大きいです。

現在でも法政大学は30パーセント以上が選抜入試ですし、それ以外の有名大学・MARCHや関関同立でも枠が増えているのが現状です。東大にも100人程度の枠があります。

ということで、選抜入試はこれからの時代の入試のスタンダードになる可能性があるのです。

そんな選抜入試は、どのような対策が求められるのでしょうか?

選抜入試は、「相性の入試」と呼ばれることがあります。その大学・学部の求める人物像を理解して、その人物像に合っている学部を選び、時には自分を適合させる必要があるわけです。

ほぼ同じ条件の子でも明暗わかれる

例えば、こんな2人を想定しましょう。これは実際に「クラウドセンバツ」という塾に通っていた生徒の実例を参考にして作成したものです。

Aさん 評定は3.5程度、英検準1級、水泳部の大会でそこそこの結果を残しているが、全国レベルのものではない
Bさん 評定は3.5程度、英検準1級、水泳部の大会でそこそこの結果を残しているが、全国レベルのものではない

要するに、2人ともほとんど同じような条件だと思ってください。この2人ともが同志社大学に受験をしたのですが、片方は合格することができて、片方は不合格になってしまいました。

「同じ条件であるにもかかわらず、同じ大学を受験して、片方が受かって片方が落ちる」というのは、一般入試ではあまり考えられないことかもしれませんが、実は選抜入試ではザラにこういうことが発生します。

この2人の違いは、受験した学部です。

Aさんは、「スポーツ健康科学部」を受験しました。対して、Bさんは「心理学部心理学科」を受験しました。これによって合否が分かれたのです。

【2023年8月25日18時40分追記】初出時、Bさんの学部名について事実と異なる部分がありましたので、上記のように修正しました。

「え?そんなに学部によって違いなんて生まれるの?」と思った人もいるかもしれませんが、大きな違いがあります。まず惜しくも不合格になってしまったのは、「スポーツ健康科学部」を受験したAさんでした。

部活動をやっているのだから「スポーツ健康科学部」のほうがいいような気がしますが、実はアドミッション・ポリシーを読んでみると、「優れたスポーツ競技成績」かつ「英語によるコミュニケーション能力」が求められている、と書かれていることがわかります。

この場合の「優れたスポーツ競技成績」は、かなりいい結果でないといけません。全国大会での結果などですね。「英語によるコミュニケーション能力」のほうは英検準1級に合格しているのである程度クリアできているわけですが、水泳部の実績が足りず、不合格になってしまいました。

逆に合格した子は「心理学部心理学科」を受験していましたね。この「心理学部心理学科」のアドミッション・ポリシーを読むと、「顕著な受賞歴や成績をもたなくとも、心理学部への志望動機がこれまでの取り組みと結びついていることを条件とし、出願資格を満たすものとする」とあります。つまり先ほどとは違って、水泳部の実績が必要ないわけですね。

逆に、スポーツの経験を活かしつつ、心理学部心理学科で勉強したい、というプレゼンがしっかりとできれば、高校までの活動と志望動機がマッチしているので、大学側からの評価が高い可能性があります。

心理学部心理学科のほうがマッチしているから、同じ条件であるにもかかわらず、Bさんのほうが合格できたわけです。

大学や学部によって入試形態も多様化

そしてもう1つ大きな特徴が、その形態の多様さです。

一般入試のように、「いくつかの試験でいい点が取れれば合格する」というような明確な基準があるわけでも、「文系だと英語と国語と社会を問う」というような分類もあまりなく、「こうすれば受かる」というルートがほとんどありません。

大学や学部によって、本当に多種多様なのです。

小論文を提出させてそれが評価される形態の入試もあれば、グループディスカッションや面談を重視するものもあります。

発表があって、他の志望者の前でプレゼンをさせられるものもありますし、共通テストの結果が大きく加味されるような一般入試に近いものもあります。「選抜型」「対話型」「実技・体験型」などの分類があるにはあるのですが、正直それだけで語れるものではありません。

いちばん難しいポイントは、先ほどの話でもありましたが、同じ大学であっても、入試形態も求める学生像も本当にさまざまであるということです。例えば、おなじ早稲田大学の入試であっても、学部によって形態は大きく変わってきてしまいます。

文化構想学部には、JCulP(Global Studies in Japanese Cultures Program:国際日本文化論プログラム)という選抜入試形態があります。

これは、学生15人と留学生で構成されていて、「海外の留学生とかかわりたい、日本の文化を世界に発信したい」という人に向いていて、それに沿った選抜入試になっています。特別な入試形態であり、英語の志望理由書を書く必要があって、国際社会に興味があるかが問われます。

一方で、同じく早稲田大学の社会科学部では全国自己推薦という選抜入試が行われていますが、これは、地方ごとに枠が設定されています。

つまり、住んでいる場所が「田舎」であればあるほど有利になります。そして、面接よりも自分の住んでいる地域と絡めた小論文のほうが重視されている傾向があります。これは英語で書く必要はありません。

このように、同じ大学であるにもかかわらず、入試の形態は大きく変わってくるわけです。

一般入試よりもはるかに情報収集が重要であり、事前準備の仕方によって合否が大きく変わってきます。

大学・学部・方式の選び方で結果が決まる


さて、これらの特徴からわかっていただけるかもしれませんが、選抜入試は大学・学部・方式の選び方の時点で、結果が決まってしまうということです。

どれくらい自分にマッチした学部を選べるか、という「選び方」によって、合格不合格が大きく変わってしまうわけです。

行きたい大学・学部のことをしっかりと分析して、その上で自分の今までの経験をプレゼンするという入試形態だと考えると、ある種、就活に近いと言えるかもしれません。

今後も、この「就活のような入試」のことを理解し、情報を集めていくことが受験生には求められると言えるのではないでしょうか。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)