BYDはEVや車載電池のほか、パワー半導体や新交通システムなどの開発も手がける。写真は広東省深圳市の本社地区(同社ウェブサイトより)

中国のEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)が、研究開発系人材の大量採用を続けている。財新記者の取材によれば、同社は2023年に3万人を超える新卒者を採用する計画で、その8割が技術職。また、採用者の6割を修士過程または博士課程の修了者とする方針だ。

BYDがウェブサイトで公開している求人情報によれば、研究開発系人材の募集分野は自動車、エレクトロニクス、半導体、新エネルギー、新交通システムなど多岐にわたっている。

(訳注:BYDは1995年に電池メーカーとして創業し、2003年に自動車事業に参入した。グループ傘下にはパワー半導体、太陽電池、モノレールなどを手がける子会社もある)

2021年から大量採用に着手

同社は2021年から研究開発系人材の採用を急拡大。同年に約4万人だった研究開発系の社員数は、2022年には約7万人と7割以上増加した。

と同時に、BYDは研究開発への投資額も急増させた。決算報告書によれば、2022年の研究開発費は202億2000万元(約3956億円)と、前年比9割も増加。それらは同社独自のハイブリッド駆動システムの「DM-i」、リチウムイオン電池のスペース効率を高める「ブレードバッテリー」、EVの車台に電池セルを直接組み込む「CTB(セル・トゥー・ボディ)」などの技術開発に投入された。


BYDは中国各地の大学で説明会を開き、優秀な人材をかき集めている(写真は同社ウェブサイトより)

2020年以前のBYDは、中国の自動車業界においてとくに目立つ存在ではなかった。しかしその後、価格性能比の高さで競合他社を圧倒するEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を続々と発売。中国の消費者の心をつかみ、販売台数と業績の急成長を実現した。

決算報告書によれば、2020年に1565億9000万元(約3兆636億円)だったBYDの売上高は、2022年には4240億6000万元(約8兆2966億円)と2年間で約2.7倍に増加。EVとPHVの販売台数は、2020年の合計18万9000台から2022年は同186万3000台に爆増した。

修士以上の高学歴社員1万人超

同じく決算報告書によれば、BYDの2020年のグループ従業員数は22万4000人だった。それが2022年には2.5倍以上の57万人に膨張し、そのうち修士以上の高学歴社員が1万1000人に上った。


本記事は「財新」の提供記事です

「わが社は今後の2〜3年は『人海戦術』を続ける。研究開発人材の大量動員を通じて、革新的技術の開発能力を維持したい」。BYDの創業トップで董事長(会長に相当)を務める王伝福氏は、2023年3月に開催された機関投資家向けの事業説明会でそう述べていた。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は7月29日

(財新 Biz&Tech)