代理人弁護士の大渕愛子氏。未成年者誘拐罪をめぐる判例を説明した

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元五輪銀メダリスト・福原愛さん(34)の元夫・江宏傑(ジャン・ホンジェ)さん(34)が2023年7月27日に開いた記者会見では、仮に福原さん側が長男を引き渡さなかった場合の対応として、日本側代理人の大渕愛子弁護士が刑事告訴の可能性に言及した。具体的には「未成年者誘拐罪」での告訴だ。

記者会見では、この発言以外にも「未成年者誘拐罪」という罪名が登場している。福原さん側が、今回の事案は刑事事件ではないと主張していることに対する見解を問われて、大渕氏は21年8月に福岡地裁で出た判決を紹介。今回の事案への対応でも参考にしているとみられる。

「ご本人さんと話し合っていないので今発表できることは何もないが...」

大渕氏が刑事告訴の可能性に触れたのは会見終盤。福原さんが長男を引き渡さなかった時の対応として、次のように述べた。

「引き渡しが実現できなかった場合にどういうアクションをとるのかは、まだ(江さん)ご本人さんと話し合っていないので今発表できることは何もないが、選択肢としては未成年者誘拐罪での告訴、そういったことが考えられると思う」

未成年者誘拐罪は刑法224条で規定されており、刑事罰は「3月以上7年以下の懲役」。保護法益には監護者の監護権も含まれるため、未成年者が同意していたとしても、監護者である保護者の同意がなければ、未成年者誘拐罪が成立しうる。親告罪で、被害者などの告訴がなければ処罰できない。

会見では中盤にも「未成年者誘拐罪」の単語が登場。福原さん側が、今回の事案が刑事事件ではないと主張していることについて、大渕氏が裁判例について説明した。

「昨年(編注:一昨年の言い間違いだとみられる)8月に出た福岡地裁の判決で、離婚係争中の夫婦が、旦那さんの方が面会交流のために息子さんと会って面会交流時間約束の時間が過ぎたのに返さずに自宅に1か月間泊めた、という事案があった。その事案に関して、未成年者誘拐罪で有罪の判決が出ている」

懲役1年の求刑に対して懲役1年、執行猶予3年の判決

当時の報道によると、福岡県内の会社員男性被告が、離婚係争中で別居している妻と暮らす長男(当時4歳)を約1か月にわたって自宅に連れ去ったとして、未成年者誘拐罪に問われた事案だ。被告は20年8月、県内の商業施設で長男と面会した際、面会の終了時刻を過ぎても長男を引き渡さず、同9月まで自宅に寝泊まりさせたとされる。判決では、懲役1年の求刑に対して懲役1年、執行猶予3年を言い渡した。

大渕氏は

「このケースと(福原さんの事案とで)どこが違うのか、あとは実際、理由がどうなのかなどについては、もちろん争いがあると思うし、明確に犯罪であるという認定を受けたわけではないので、私の方からこれは違法な連れ去りだということを断定することはしない」

などと述べた上で、江氏の引き渡し要求に福原さん側が反応していないことを説明した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)