島田麻央、世界ジュニアで優勝も涙のわけ。憧れの浅田真央超えの快挙に「びっくりしてます」
14歳の島田麻央(木下アカデミー)はジュニアデビューシーズンながらも、昨年12月のジュニアグランプリ(GP)ファイナルを制覇し、初めての世界ジュニア選手権に臨んだ。
優勝候補筆頭の重圧もあったはずだが、大舞台で本物の強さを見せた。
「初めてなのでプレッシャーというより、憧れていた舞台なので楽しみたいという気持ちでいられました」
世界ジュニア選手権を制した島田麻央
3回転ループとダブルアクセル、そして演技後半に入れた3回転ルッツ+3回転トーループをすべてきれいに決める滑り出し。
フライングキャメルスピンはレベル3となったが、基礎点が1.1倍になる後半に3回転ルッツからの連続ジャンプを入れて強みを活かし、技術点は全体でトップの40.67点を獲得した。
演技構成点はジュニアGPファイナル2位のシン・ジア(韓国)に0.09点だけおよばなかったが、島田の得点はジュニアGPシリーズ初戦のチェコ大会で出した自己最高得点を0.29点更新する71.78点を獲得。首位でスタートを切った。
「練習ではトリプルアクセルと4回転トーループはあまり跳べていない状態で、3回転ルッツ+3回転トーループについても跳べてはいるけど、思っているようには跳べてない感じでした。
でも、練習で調子がよくても試合で跳べなかったり、調子が悪くても跳べるということもあったので、最後まで諦めないで滑ろうと思っていました」
ジュニアGPシリーズやジュニアGPファイナルなどの国際舞台が続くなか、緊張する試合が多かった。そうして経験を経て、「今大会は楽しめた」と言った島田は、僅差の首位発進ながら落ち着いた表情を見せていた。【課題の大技で見せた成長】
とはいえ、2日後の3月3日のフリーは、トリプルアクセルや4回転トーループが入る難しい構成で、今季は挑戦を続けながらもまだ2本をそろえられていなかった。大会前にその2本のジャンプに手応えを得られなかっただけに、プレッシャーもあるはずだった。
だが、島田の滑りは堂々としていた。
キレのある動きで跳んだ最初のトリプルアクセルは2.51点のGOE(出来ばえ点)加点をもらう安定したジャンプとする。
次の4回転トーループは残念ながら4分の1の回転不足と判定されて0.54点の減点となったが、きれいな軸で回転速度もあり、しっかりと降りた。全日本選手権などこれまでとはまったく違う出来のジャンプだった。
さらに3本目の3回転ルッツ+3回転トーループも勢いのあるジャンプにして、1.52点の加点。
その後の連続ジャンプや後半の3連続ジャンプに3回転ループ、3回転ルッツもクリーンに決め、スピンは3本ともレベル4とほぼノーミスの演技をした。
演技後、笑顔でリンクから上がってきた島田だが、得点発表を待つ「キス&クライ」では涙を流し、濱田美栄コーチに労らわれていた。
その涙の理由について島田は「今までの試合ではトリプルアクセルと4回転トーループの両方を決められることがなくて片方だけだったりしていて。練習でも思うように跳べなくてつらかった時もあったけど、この大舞台で跳べたので、うれしさの涙でした」と照れたように話す。
その得点を見れば、大技が2本ある利点を存分に発揮し技術点は2位のシンに14.51点差をつける84.78点。
演技構成点についても全選手中でひとりだけ、3項目すべてを8点台にのせ、しかも8.43〜57点という高い評価を獲得。2番手のクォン・ミンソル(韓国)に5.89点差をつける67.98点。
フリーでもこれまでの自己最高を3.89点更新する152.76点を出して、合計を224.54点として圧勝した。
その優勝は2005年に14歳5カ月で優勝した、浅田真央の日本女子最年少優勝記録を14歳4カ月に塗り替える快挙。島田は笑顔を見せた。
「(浅田)真央さんは私の名前の由来にもなっている、すごい憧れの選手なので。その選手と同じ位置に立てたのはすごくうれしいし、びっくりしてます。この金メダルは、自分にとってはいろんなことが詰まったメダルになったと思います」
もうひとつの快挙は、シニアも含めた今季最高得点の更新だ。島田が9月末のジュニアGPシリーズのポーランド大会で出した217.68点が、GPシリーズのスケートアメリカで坂本花織が出した217.61点をわずかに上回っていたが、それをさらに上回った。その得点は世界歴代14位で、ジュニア歴代では2位の高得点だった。
ジュニアの場合、女子SPではトリプルアクセルは跳べず、男女とも単発の3回転ジャンプは指定されていて、今季はルッツやフリップより基礎点が低いループになっている。
また、フリーも今季からステップシークエンスがなくなり、全要素数はシニアよりひとつ少ない11になっている。そんななかでのシニア超えのシーズン最高得点は、島田の能力の高さを示すものだ。
シニア移行の年齢も今年から段階的に引き上げられ、2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪シーズンまで島田はジュニアにとどまらなくてはいけない。
そんな事態だが、逆に島田がこれまで男女とも2連覇までしかなかった世界ジュニア連覇記録を、どこまで伸ばせるかという楽しみも生み出している。