「肋間神経痛」の痛みの特徴はご存知ですか？医師が解説！
脇腹や背中から胸にかけて、ビリッと電気が走るような痛みを「肋間神経痛」と言います。寒い時期になると起こりやすいのが特徴で、背骨に起こる病気の症状として起こる場合があります。痛みがあるときは、医療機関を受診することが大切です。
今回は、肋間神経痛とはどのような病気か、症状や原因、受診科目、治療法などを解説します。
肋間神経痛とは
肋間神経痛とはどのような病気ですか？
肋間神経痛は、肋骨に沿って走っている肋間神経が痛む状態です。神経痛の一種で、医学的な病名ではありません。脇腹や、背中から胸にかけて電気が走るような鋭い痛みが特徴です。
胸に起こる激しい痛みとして、狭心症や心筋梗塞、帯状疱疹ウイルスなどと混同されることがありますが、肋間神経痛は体をひねったり動かしたり、くしゃみをしたりすると痛むのが特徴です。
肋間神経の役割
肋間神経はどのような働きをしているのですか？
肋間神経は肋骨を引き上げたり、腹圧を加えたりするための指令を伝えるための神経です。肋間神経は背中から胸腹部にかけて分布する末梢神経です。胸髄のある背中から出ている12対の胸神経の前側を走行しています。
肋骨の上部7対は、肋骨に沿って胸骨に向うように走行しており、下部5対は前下方に走行しており腹部に分布します。そのため、胸や背中、脇腹などに痛みを感じるのです。
肋間神経痛の症状
肋間神経痛はどのような症状が現れますか？
肋間神経痛は原因によって痛み方が異なります。「急に電気が走ったような痛み」や「ジクジクと持続するような痛み」など患者さんによって感じ方はさまざまです。痛みの起こる場所は胸の前面や背中から脇腹、おへそ周辺、足の付け根など範囲が広いのが特徴です。くしゃみをすると突発的に痛んだり、息を数すうと痛んだり、しゃべると痛んだり何かの行動に起因します。
狭心症や心筋梗塞などの心臓や太い血管に起こる病気との違いは、痛みがある場所・範囲がはっきりしていること、肋骨に沿うように起こる比較的鋭い痛みがあることです。肋間神経痛では上半身の右側もしくは左側のみに起こり、左右両側には起こりません。
肋間神経痛の原因
肋間神経痛の原因を教えてください
肋間神経痛の原因はさまざまで、まだ解明されていないものもあります。明らかに原因があるものを「症候性神経痛」、明らかな原因がないものを「特発性肋間神経痛」と区別しています。症候性肋間神経痛にはどのようなものがありますか？
症候性肋間神経痛には、変形脊椎症、脊椎腫瘍、胸椎椎間板ヘルニアなどの脊椎に原因がある病気のほかに、肋骨の骨折や肋骨の腫瘍なども原因です。前後・左右に曲げ伸ばしたときに痛みが強く、息ができないと感じることもあります。帯状疱疹も症候性肋間神経痛です。胸や背中などに起こる痛みのほかに、皮膚の表面にピリピリ・じくじくとした持続的な痛みがあります。
肋間神経痛の代表的な病気
症候性肋間神経痛に分類される病気について詳しく教えてください
症候性肋間神経痛は主に、肋骨や脊椎に何らかの障害が起こることで発症します。例外もあり、帯状疱疹がその代表例です。それぞれを説明します。変形性脊椎症
変形性脊椎症とはどのような病気ですか？
変形性脊椎症は、脊椎の椎体と呼ばれる骨が加齢により変形してトゲを作ることで痛みが生じる病気です。このトゲが、背骨を走る神経を圧迫すると痛みを引き起こします。初期の段階では自覚症状はなく、変形が進むと慢性的な痛みや可動域が制限されるようになるのが特徴です。
胸椎椎間板ヘルニア
胸椎椎間板ヘルニアとはどのような病気ですか？
胸椎椎間板ヘルニアは、腰の部分にある椎骨と椎骨の間でクッションの役割をしている椎間板と呼ばれる軟骨が変性して、組織の一部が飛び出した状態です。神経を圧迫すると、腰や足に痛みやしびれが出たり、筋力が低下したりするようになり、進行すると、膀胱障害を招くことがあります。
脊椎腫瘍
脊椎腫瘍とはどのような病気ですか？
脊椎腫瘍は、脊椎骨に起こる腫瘍で、原発性と転移性の腫瘍があります。症状には、骨の痛みや神経症状があり、初期の段階では、体を動かしたときに、腰や背中が痛みます。腫瘍が大きくなり脊髄を圧迫すると、頚椎や胸椎、腰椎などでも、神経症状や脊髄麻痺が起こる病気です。
肋骨骨折・肋骨の腫瘍
肋骨骨折や肋骨の腫瘍も肋間神経痛を引き起こすのですか？
肋骨骨折は、ケガなどが原因で肋骨にひびが入ったり折れたりする外傷性の病気です。肋骨の腫瘍では、この部分に腫瘍ができると、肋間神経を圧迫して支障をきたすことがあります。帯状疱疹
帯状疱疹とはどのような病気ですか？
帯状疱疹とは、水痘や帯状疱疹ウイルスに感染することで起こる感染症です。最初に感染したものを「水疱瘡（みずぼうそう）」と言います。水疱瘡は多くの場合、子どもの頃に経験します。肋間神経痛の受診科目
肋間神経痛は何科を受診すればいいでしょうか？
肋間神経痛は、胸や背中、脇付近の痛みが突発的に起こり、また何度も繰り返す場合は整形外科を受診しましょう。帯状疱疹など皮膚症状があれば、皮膚科を受診してください。
肋間神経痛の検査
肋間神経痛ではどのような検査を行いますか？
まずは問診を行い、胸椎椎間板ヘルニアや変形性脊椎症脊椎症の疑いがあれば、MRI検査などの画像診断を行います。皮膚症状があり、帯状疱疹の疑いがあれば血液検査も実施します。肋間神経痛の性差・年齢差
肋間神経痛の性差・年齢差はありますか？
肋間神経痛は特に性差や年齢差はありません。原因によって、年齢性別関係なく起こります。ただし季節的な傾向や、ライフスタイルが関係することもあります。特に冬時期は肋間神経痛の症状を訴える人が増加しがちです。多くの場合、原因がはっきりしないため、特発性肋間神経痛とされることが多いですが、血液の循環が関係していると考えられています。寒さにより血管が収縮して筋肉が緊張しやすくなると、神経痛の痛みが増すためです。
肋間神経痛の治療方法
肋間神経痛の治療をする場合、どのような治療方法がありますか？
肋間神経痛は医学的な病名ではなく1つの症状となるため、原因ごとに治療方法は異なります。例えば、ケガなどで肋骨を痛めたことで起こる肋間神経痛は、痛み止めの内服で治療できます。胸椎椎間板ヘルニアや変形性脊椎症など脊椎の病気で肋間神経痛が起こっている場合は、画像診断の結果から手術で病気そのものを治療し改善するのが一般的です。
肋間神経痛の原因が分からない場合には、まずは痛みに対して非ステロイド性鎮痛薬をはじめとした内服治療を行います。内服薬でも改善しない場合は、痛みが起きている部分に神経ブロックを行います。
肋間神経痛がひどい場合には、ブロック注射が行われることがあります。これは、原因の肋間神経に麻酔薬・ステロイドを直接注入することによって、神経圧迫の痛みを軽減させる効果が期待できるものです。
編集部まとめ
肋間神経痛は、脇腹や背中から胸にかけて、ビリッと電気が走るような痛みが特徴の症状です。寒い時期になると起こりやすくなり、原因が分かっているものと、原因がはっきりしないものに分類されます。
軽症の場合は内服薬で痛みを抑えますが、病気が原因で起こっている場合は、病気そのものの治療を行い改善します。
混同されやすい病気に狭心症や心筋梗塞があるため、激しい痛みが数分続く場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
参考文献
済生会
再春館製薬所
東洋医学研究所
肋間神経痛
胸の痛みを知る
日本整形外科学会
胸椎椎間板ヘルニア
脊髄腫瘍
肋骨骨折
帯状疱疹
ドクターズファイル
