Nianticが作成した3Dマップや「ポケモンGO」「Ingress」などで収集・構築した世界中のホットスポットの中に、開発者が独自のAR体験を盛り込むことができるシステム「Lightship VPS(Visual Positioning System)」が開発者向けに公開されました。すでに集英社のXR(Cross Reality)事業部・集英社XRなどとデモパートナーシップが結ばれており、東京のスポットにコンテンツが配置されています。

Niantic がLightship VPSとNiantic AR MapをLightship Summitで発表 - Niantic

https://nianticlabs.com/blog/lightshipsummit/

Lightship VPSは公共の場所に配置されたコンテンツをユーザーに体験してもらうことができるシステムです。Lightship VPSに対応したロケーションは複数のスキャンデータで構築されており、直径10mほどのエリアが形成されています。このエリアにユーザーが立つとアプリケーションがユーザーの現在の位置と向きを判断してARコンテンツをセンチメートル単位の制度で固定。ユーザーがカメラをどこに向けていても、1枚の画像からでも迅速かつ正確に位置を把握し、リアルな没入感を提供するとのこと。



Lightship VPSは東京、サンフランシスコ、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、シアトルの3万以上のスポットで利用可能です。今回Nianticがすべての開発者にLightship VPSを公開したことにより、開発者がこれらのスポットを活用したり、これら以外のスポットを自分の手でARマップに追加したりすることが可能になりました。

Nianticによるとマップの作成がARの中でも非常に大きな課題だったとのことですが、開発者や測量士、ポケモンGOとIngressのプレイヤーの力を借りて現実世界にある場所のスキャンデータの収集に取り組んできたとのこと。Nianticはマップのさらなる拡大を目指し、2022年5月24日よりパブリックベータ版のNiantic Wayfarerに開発者を招待し、AR体験に最適な場所を追加するよう呼びかけています。これにより開発者はマップ改善に協力できると同時に、自分にとって最適な場所でAR体験を構築することができるようになります。



Lightship VPSを使用してビルドを開始するには、開発者用アカウントを登録してLightship ARDKをダウンロードする必要があります。このキットはiOS、AndroidmUnityに対応しており、操作に慣れるためのVPS専用テンプレートも用意されているとのこと。

すでにLightship VPSのデモパートナーとしてアニメーションスタジオのJR Reality(Superblue)、ゲーム・AR開発のAREALM(FoundrySix)、音楽ゲームのスタートアップであるPixelynx、集英社XR、アート・広告・都市開発のRhizomatiks、XR開発のLiquid City、没入型瞑想サービスのTRIPPが加わっており、各地のスポットにARコンテンツが配置されています。以下のムービーの53秒辺りから、「集英社」と書かれた看板の前で漫画のキャラクターがARとして出現している様子を確認できます。

Build Immersive AR with Lightship VPS - YouTube

このほか、マップを起点として人やイベント、コミュニティとであったり、メッセージのやりとりができたりするソーシャルネットワーク「Campfire」も発表されました。Campfireは現実世界でのメタバースの「ホームページ」の役割を果たすとされており、プレイヤーはこの空間で同じ地域のプレイヤーに出会い、互いにメッセージを送ってコンテンツを共有したり、独自のイベントや交流会を開催したりして、現実世界でのソーシャルなつながりを育むことができるとのことです。CampfireはIngress内で公開され、今後すべてのNiantic製ゲームで利用できるようになります。



Nianticは今回の発表に際し「1つのコミュニティとして空間コンピューティングの未来を共に築くための重要な一歩になったと考えています」と記しました。