キーワードは「パリ」「ラグジュアリー」「サヴォア・フェール」｜DS9はフランスの文化を具現化した渾身の1台だ
DSオートモビルと聞いて何を連想するだろうか。ひとつは、ブランドに脈々と受け継がれるヘリテージだろう。DS9はエレガンスとフォーマル感を備える伝統的な3ボックスサルーンのプロポーションを持ち、優美なボディイラインに散りばめられたディテールのひとつひとつにも、往年のフレンチラグジュアリーカーの文脈を現代的に再解釈したエッセンスが込められている。
フロントフード部分にあしらわれているクロームは、これまでもDSオートモビルの各モデルのインテリアに使われていた”Clous de Paris”（クル・ド・パリ）文様の装飾”セイバー”（サーベルの意）。パリのルーヴル・ピラミッドをモチーフとし、ひし形にレーザーカットされた彫刻的なリフレクターを持つテールランプを取り囲むように強調するのもまたセイバーの装飾だ。
インテリアにおいても、センターコンソール内の随所にみられるクル・ド・パリ文様のギョーシェ加工や、ウォッチ・ストラップ・デザインのレザーシート、パール・トップのステッチ、素材のあしらい方など、フランスならではの美意識や矜持が反映され、「フランスだけが為しえるラグジュアリーカーのありよう」を提示している。
これらのデザイン要素は、かつて1930年代に栄華を誇った、フランスのカロセリと呼ばれたいわゆるコーチビルダーに捧げるオマージュである。ファッションにおけるオートクチュールと同様の一点製作ものと考えるのがわかりやすい。実用性よりも純粋な美とクリエイティビティを追求したオートクチュールのファッション同様に、自動車の美を探求する文化である。言い換えれば、オートクチュールやジュエリーにみられるサヴォア・フェールという概念、パリが生み出した文化と伝統が自動車にも採り入れられているのだ。アール・デコに影響を受けた意匠が自動車のインテリアにも反映された美しき時代のヘリテージをDSオートモビルは受け継ぎ、復興を目指している。そのフラッグシップたるモデルがDS9なのである。
一方で、アヴァンギャルドの要素もDSオートモビルには欠かすことができない。電動化時代に対応したプラグインハイブリッドシステム”E-TENSE”はシステム最高出力250ps、最大トルク360Nmのハイパフォーマンスを発揮。これまでのステランティスのPHEVモデルよりもさらに余裕をもたせた15.6kWhのリチウムイオンバッテリーによりエレクトリックモードで61kmのゼロエミッション走行が可能となった。ステランティスにおける電動化戦略の先鋒という役割は、まさにアヴァンギャルドを旨とするDSオートモビルが担っているといえるだろう。
マルチパーパスカメラで前方20mまでの路面を常時画像解析し、路面状況に応じて4輪の電子制御ダンパーをフィードフォワード（先読み） 制御するDSアクティブスキャンサスペンション、赤外線カメラで夜間の視界をサポートするDSナイトビジョン、ドライバーの視線や顔の動きをモニターし注意を促すDSドライバーアテンションモニタリング、6つの配光モードを備え左右方向にも照射するDSアクティブLEDビジョン、駐車可能なスペースを検知し必要なステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジ操作のすべてをサポートするDSパークパイロットなど、DSオートモビルがこれまで採用してきたすべてのテクノロジーを標準装備していることは特筆すべき点である。
DS 9にはプラグインハイブリッド仕様のE-TENSEとガソリンエンジン仕様が用意されている。プラグインハイブリッドのパフォーマンスは前述の通りである。ガソリンエンジンは定評の1.6リッターPureTechターボエンジン。軽量コンパクト で、優れた燃費性能を持ちながら、最高出力165kW（225ps） /5,500rpm、最大トルク300Nm/1,900rpmというハイパワーと高トルクを発揮する高性能パワーユニットだ。
また、2895mmのロングホイールベースが広々とした室内空間をもたらした。リアシートのひざ下レッグスペース約277mmと非常に余裕のあるスペースが生み出され、フロントシートと同様かそれ以上の快適性を提供するDS LOUNGEと呼ばれるコンセプトで造り上げられている。
ブランドのヘリテージ、サヴォア・フェール、そしてアヴァンギャルドな最新テクノロジー、これらがすべて絶妙に組み合わされた DS 9は、DSオートモビルのフラッグシップに相応しいラグジュアリサルーンといえるだろう。
価格は630万円〜787万9000円、グレードは内装および装備によりOPELAとRIVOLIの2つが展開され、それぞれにPHEVモデルのE-TENSEとガソリンエンジンモデルを用意した4つの価格体系となっている（DS 9 RIVOLI E- TENSEは受注生産となる）
