コロナ禍において、みなさんの家計にはどんな影響が生じているでしょうか?
「収入が減ってしまった」「いままでかからなかった費用が発生した」「将来への不安が増した」など、経済的なダメージだけでなく、メンタル的な変化を感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで、家計再生コンサルタントとして多くの家庭の家計を再生してきた横山光昭さんに、コロナ禍で影響を受けた家計再生をお願いしました。家計管理の考え方、具体的なメソッドをレクチャーしていただく短期集中連載です。

長く続いたコロナ禍で、ストレスや不安を募らせてきた人も多いのではないでしょうか? たとえば、在宅ワークによって通勤の苦痛からは解放されましたが、コミュニケーション機会の低下で、気がつかいないうちにストレスを溜め込んでしまっている恐れがあります。コロナが収まっても、かつての日常がすぐに戻ってくるわけではありません。これまで当たり前にできていたことができないストレスは、大人も子供も同じように感じているでしょう。

コロナ禍で家計にも大きな影響が出ています。きちんと家計を管理して節約に取り組んでいた家庭でも、経験したことのない事態に見舞われて、家計が乱れてしまっているところもあるのではないでしょうか?

メンタルの乱れが家計に影響する

「節約」というのは、実はメンタルが大きく影響するものなのです。大きなストレスを感じていると、思わず衝動買いをしてしまったり、無駄遣いの割合が大きくなってしまったりします。コロナ禍では旅行やレジャーなどが制限され、人と会うことも控えていたことで息抜きができていない可能性が高いと思われます。

連載の第4回では、「変動費を消浪投(しょうろうとう)に分ける」と説明しました。生活に必要な消費、楽しみのために使う浪費、将来に備える投資の3つに分けることで、食費などの「変動費」を何にどのくらい使うかを管理しようということです。

節約というと、何でもかんでもガマンするというイメージが強いですが、そのスタイルでは長く続けることはできません。ダイエットと同じように、リバウンドしてしまう危険性があります。適度に息抜きをしながら、長く続けることが、節約にもダイエットにも共通した成功の秘訣です。消浪投の割合をコントロールできれば、ムリなく節約に取り組んでいけるでしょう。

節約を継続させるために気をつけるべき5つのこと

食料品や服などの買い物で「節約をしよう!」と心に決めていても、その決心が揺らいでしまう瞬間が必ず訪れます。そこで、気を付けておくべきポイントを5つ紹介します。

(1)「不安買い」に気をつける

新型コロナウイルス感染症が拡大し始めたころのことを思い出してみてください。トイレットペーパーが品薄になるとか、マスクが手に入りにくくなるといった情報に翻弄されて、買いだめに走ってしまった人もいたのではないでしょうか? また、近年増えつつある台風や地震などの自然災害に備えて、備蓄をしておきたいと思っている人も多いと思います。もちろんいざというときに備えることは必要ですが、必要以上に買いだめするのはムダにつながります。こうした心理で買い物をすることを「不安買い」といいます。

「不安買い」に走ることを防ぐ方法はあるのでしょうか?

食料品などには消費期限もあるので注意が必要ですが、そんな場合は「ローリングストック」を取り入れてみましょう。「ローリングストック」とは震災など災害に備えた備蓄のやり方の1つで、普段から少し多めに食材を買っておき、古いものから使っていって使った分だけ新しく買い足していきます。こうやって食材を使いながら保存していけば、常に一定量の食料を備蓄しておきながら、消費期限切れを防ぐことができます。食材は、ある程度保存期間の長いレトルトや加工食品がいいでしょう。普段食べている食材なら、災害時にも日常生活に近い食生活を送ることができるというのもメリットの1つです。

(2)「ついで買い」を避ける

スーパーや商店街など、買い物に出かけると多くの誘惑があります。買うもののリストを作り、それ以外のものを買わないようにするというのも節約術の1つですが、ショッピングは気晴らしのひとつになっている人もいますので、なかなかやりきるのは難しいかもしれません。さらに、売る側もプロフェッショナルですから、商品を買いたくなるような工夫を凝らしているわけです。「ついで買い」をしてしまうのは私たちの意志が弱いのではなく、買いたくなってしまうのは当たり前のことなのです。
そこで、買い物の回数を減らして「ついで買い」をしてしまう回数を少なくして、無駄遣いを抑えていくようにしましょう。人気の激安スーパーや倉庫型スーパーなども上手に活用して、まとめ買いをするのもいいかもしれません。

(3)「NMD(No Money Day)」を作る

最近SNSなどで「NMD」というワードを見かけるようになりました。「No Money Day」の略で、お金を1円も使わない日のことを指します。現金はもちろん、クレジットカードや電子マネーなども使わないようにするのが決まりです。これは、まったくお金を使わなくても意外と1日過ごせてしまうことを、身をもって体感するための日を作ることが目的です。もちろん家賃や水道・光熱費、通信費、通勤費などはお金の使用に含みません。

お弁当を用意する、マイボトルを持ち歩く、コンビニには寄らないなど、ちょっとした工夫でお金を使わずに過ごすことができるのです。

NMDは、お金を使わないことで節約につなげるという目的もありますが、同時に自分がどのようにお金を使っていたのかを意識するために行うものでもあります。いきなり週に何日もNMDを作るのではなく、ムリのない頻度で実践することがポイントです。慣れてきたら回数を増やすことで、節約効果がでてくるでしょう。

(4)SNSはほどほどに

リアルに人と会うことができないコロナ禍では、SNSでのつながりはとても重要な意味合いを持っていたことと思います。しかし、こと節約に関しては、SNSにハマることは要注意です。

それは、人と比べることが節約には大敵だからです。「節約」は自分の計画をどれだけ忠実に実行できるかが大切です。SNSで他の人が楽しそうに旅行をしていたり、豪勢な食事に舌鼓を打っていたりするのを見ると、切り詰めた生活をしている自分がみじめに思えてしまうことがあります。そうした人たちも、いつもいつも贅沢をしているわけではなく、たまのイベントごとをアップしただけに過ぎないかもしれません。しかし、人は他人と比べることで心がざわついて、思わず余計な出費につなげてしまう恐れもあります。SNSに依存しすぎると、節約にとってはデメリットのほうが大きくなりかねません。

(5)「納得感」が重要

節約で特に大事なのは、「納得感」です。
まずは「なぜ節約するのか」という目的をハッキリさせることが大事です。

子供の教育費を貯める、老後の備えをする、海外旅行をしたい、将来お店を開きたいなど、目的が明確であることが、節約を続ける上で極めて重要です。長く続く節約生活では、くじけてしまいそうになることもあるでしょう。それでも、目的がハッキリしていれば、立ち直ることができるはずです。

目的は人それぞれでかまいません。たとえば、1年に1度の海外旅行のために節約する、と決めていれば、毎月1度の外食をガマンすることができるでしょう。一方で、月に1度の外食のために節約するのであれば、毎日のコンビニスイーツをがまんできるでしょう。

ポイントは、節約することを自分自身が納得できるかどうかです。家族で協力して節約する場合には、みんなできちんと節約する目的や目標の金額などを話し合っておきましょう。

まとめ

節約はガマンするもの、というネガティブな発想はやめましょう。節約した先に待っているものを楽しみに、ポジティブに取り組むものです。成功の秘訣は、メンタルを整えることです。特に変動費については、メンタルの乱れがそのまま家計に乱れにつながります。適度な息抜きや浪費は悪いことではなく、メンタルを整えるための必要経費と考えてもかまいません。長く続けることが節約の近道なので、上手にメンタルコントロールを行って、目標に近づいていきましょう。