povo2.0とほぼ同額のNEOプラン、カギになるのが専用帯域（石野純也）
ソニーネットワークコミュニケーションズが運営するMVNOのNUROモバイルは、11月1日から新たに「NEOプラン」を開始しました。4月に新料金プランの「バリュープラス」を導入したNUROモバイルですが、NEOプランはそれとは別建てで設計。ターゲットはahamoやpovo2.0、LINEMOなどを使う中容量のユーザーで、データ容量は20GB、価格は2699円に設定されています。
勘のいい方はすぐに気づくかもしれませんが、この価格は、2700円で20GBのトッピングをつけられるpovo2.0とほぼ同額です。povo2.0の20GBデータトッピングは、30日間で2700円。2728円のLINEMOや、5分の準音声通話定額付きで2970円のahamoよりも安く設定されています。音声通話定額はオプションになりますが、通常の通話料が30秒11円と他社の大手キャリアの半額なのもメリット。これは、NUROモバイルがいち早くオートプレフィックス機能に対応したためです。
いわゆるゼロレーティングのサービスがついているのも、NEOプランの特徴です。オンライン専用料金では、LINEMOがLINEの通信量をカウントしない「LINEギガフリー」に対応していますが、NEOプランはLINEに加え、TwitterやInstagramのデータ容量もカウントされません。ソニーネットワークコミュニケーションズによると、NEOプランで狙う20代、30代のユーザーが日常のコミュニケーション手段としているSNSを使い放題にしたといいます。
大手キャリアのオンライン専用プランとの違いとしては、データ容量の繰り越しも注目しておきたいポイント。月ごとに利用するデータ容量に波があっても、繰り越しである程度吸収でき、無駄なく使い切ることができます。繰り越しに関してはUQ mobileやワイモバイルといったサブブランドには実装されていますが、オンライン専用プランにはないため、価格が同程度のNEOプランならではの売りになります。
とはいえ、NUROモバイルはあくまでMVNO。大手キャリアが直接運営するahamoやpovo2.0、LINEMOと比べ、通信速度が十分でないのでは……と疑問に思われる向きもあるかもしれません。これに対し、NUROモバイルは「専用帯域」で対抗していきます。MVNOの通信品質に波があるのが、大手キャリアから借りる帯域が一定で、ピーク時にそれが不足してしまうからです。
ピーク時のみトラフィックが突出するため、そこに合わせて帯域を増強してしまうと、ほかの時間帯がスカスカになってしまい、結果としてコスト増にもつながってしまいます。MVNOの価格水準でサービスを提供しようとすると、ピーク時のトラフィックはある程度割り切るしかないというわけです。対するNEOプランは、NEOプランのみの帯域を用意することで、品質を維持するとしています。料金水準は大手キャリアのオンライン専用プラン並みですが、それに見合うだけの品質を確保するというのがNEOプラン最大の特徴と言えるでしょう。
NUROモバイルがNEOプランを投入した背景には、20GBプランのニーズの高まりがあるといいます。元々は主要国の中で価格が高止まりしていると言われていた中容量帯ですが、総務省の値下げ要請を受け、大手キャリアがオンライン専用の20GBプランを投入。その成果もあって、中容量で国際比較した際の価格は、主要6都市で下から数えて2番目にまで下落しました。鶴の一声だけでここまで極端に価格が落ちてしまうのは少々考えものですが、安くなって市場は拡大。20GBを求めるユーザーが一気に増えた格好です。
一方で、MVNOがこの中容量帯のニーズにきちんとこたえられていたかというと、必ずしもそうではありませんでした。例えば、IIJmioの「ギガプラン」は、20GBが2068円と、価格こそ割安ですが、通信品質は他のプランと同じ。専用帯域などの工夫はありませんでした。データ容量を選択できるならまだしも、例えばOCNモバイルONEに関しては、親会社になるドコモとの住み分けもあり、10GB超の料金プランが用意されていません。かくいうNUROモバイルも、バリュープラス導入時に中容量から大容量のプランはバッサリ落としていました。
実際、中容量プランはオンライン専用プランとの価格差がなくなったこともあり、MVNOの主力は10GB以下の低容量プランになっていました。こうした事情を踏まえ、NUROモバイルは品質をある程度近づけることで、大手キャリアの得意としていた領域に踏み込んでいく方針です。中容量プランはある程度獲得コストをかけることができるのも強み。NUROモバイルの場合は、ソニーグループの強みを生かし、「Xperia 10 III」に対して2万円のキャッシュバックをつけています。
ただ、本当に大手キャリアと同等の品質を保てるのかは未知数です。NUROモバイルではAIを活用し、帯域の自動割り当てを行っているものの、大手キャリアとの接続点というボトルネックがあることに変わりはありません。ユーザー数と総帯域のバランスが崩れてしまうと、一時的に品質が落ちる可能性もゼロではありません。また、通信品質は目に見えにくいもので、契約していないとなかなか実態が分かりません。こうした情報の開示も、積極的に行っていく必要がありそうです。
