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他人のゴミ袋を勝手に開けることは犯罪なのではないか--。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の男性は、自宅前の収集場所にゴミ袋を捨てています。ところが、隣人が興味本位からゴミ袋を勝手に開け、中身をチェックしているというのです。

男性がやめてほしいと言ったところ、「何様のつもりだ!」と怒鳴られ、とても不愉快だったといいます。男性は隣人のゴミ袋チェックに精神的な苦痛を感じ、有料の民間業者に頼んでゴミを回収してもらうようにしたそうです。

他人が捨てたゴミ袋を勝手に開けて中をチェックする行為は、法的に問題ないのでしょうか。ゴミ問題にくわしい梶山正三弁護士に聞きました。

●隣人の行為は「プライバシーの侵害」

--捨てるつもりのゴミが入っているだけとはいえ、勝手に開けて覗くことは問題ないのでしょうか。

結論から言うと、隣人の行為は個人のプライバシーを侵害するものであるため違法です。もちろん、やめさせることができます。

収集場所に捨てた時点でゴミに関する一切の権限がなくなる、と考える人もいるかもしれませんが、それは誤解です。

--どういうことでしょうか。

たとえゴミとして出して所有権を放棄しても、ゴミに対する管理責任や管理権限が無くなるわけではありません。

ゴミが世の中に迷惑をかけず適切に消えていくまでは、元の所有者に管理責任があります。責任を果たすためには権限が必要ですので、元の所有者にはゴミを管理する権限があるということです。

--「責任と権限」はゴミのようにポイッとは捨てられないということですね。

所有権を放棄しても、それを公園などに捨てれば「不法投棄」という犯罪行為になります。

たとえば、農薬入りの毒団子を路上にまき散らした人がいたとします。その人が、毒団子の所有権はないと主張しても、それを食べて犬が死んでしまった場合、責任を免れることは難しいでしょう。

●継続的なプライバシー侵害は慰謝料請求の理由になりうる

--今回のようなケースに出くわした際、どのように対応すればよいのでしょうか。

収集場所に出したゴミについては、それが社会的に適切な方法で処理されるまでは、元の所有者に管理責任・管理権限があります。

隣人に対しては、まずゴミ袋を自分に返すように要求し、他人のゴミ袋を勝手にチェックする行為がプライバシーの侵害であることを説明しましょう。

隣人の行為が日常的に続いているのであれば、民事上の訴えが必要だと思います。隣人が常習犯であれば、警察官を呼んでも一時しのぎにしかならないでしょう。

「何様のつもりだ」と怒鳴られたことだけを理由に慰謝料を請求することは難しいですが、継続的にプライバシー侵害がおこなわれていることを証明できれば、十分、慰謝料請求の理由になります。

(弁護士ドットコムライフ)

【取材協力弁護士】
梶山 正三(かじやま・しょうぞう)弁護士
東京都公害研究所職員から転身。関弁連公害環境委員会の委員長を6年。宇都宮大、滋賀大、東大、埼玉大等の非常勤講師。2000年〜現在、ゴミ弁連(闘う住民と共にゴミ問題の解決を目指す弁護士連絡会)会長。
http://gomibenren.jp/
事務所名:駒ヶ岳法律事務所